2章 特別演習編

第15話 進展?

「ふぁーあ」


 いつも通りの教室の中俺は大きなあくびをする。

 アリアに憑いていた悪魔レクイエムとの戦いから早1ヶ月ほどが経っていた。


 アリアはというと、すぐにクラスメイトたちと打ち解けたくさんの友達に囲まれた生活をしている。

 偉そうなこと言った癖に、俺の方が友達が少ないのは内緒だ。


 ここ数日は特に面白いこともなく、いつも通り授業を受けてはいつも通りお風呂に入り、ご飯を食べて寝るという生活。

 とは言っても明日からは特別演習が始まるらしい。

 3泊4日の予定だそうで、最初の1日はクラス全員で過ごし、残り2日は6人1組のチームで過ごすというものだ。

 場所はオースティン魔法学校から100キロほど離れた、ラースの森で行われる。


 それで明日からは、森で生き抜くための基礎を磨くための特別訓練が始まるというわけだ。


 教室のドアが開き、シェリー先生が入ってくる。


「はーい皆んなー!来週に行われる特別演習の班を決めるわよー!」


 周りの生徒たちは待ってましたと言わんばかりの返事で答える。

 そう。何を隠そう1週間ほど前から 誰と同じ班になるー という話題が尽きなかったのだ。


「よし! それではまずリーダーの発表をしていくわよー!」


 6人1組とは言っても、力バランスが傾きすぎては良くないため、魔法力 リーダーシップ などの観点から先生の方でリーダーを決める。

 シェリー先生は10人の名前を呼び上げ、1人呼ばれるごとに歓声が上がる。その中でも一際大きい歓声を上げさせたのがアリアだった。


「はい!この10人が今回の演習のリーダーです!それじゃあリーダーの方からサブリーダーを決めてもらいます!」


 サブリーダーは指名制なのか。まあ俺が呼ばれることはな……


「イブ・レッドパールで」


 周りの生徒が一斉にこちらを見る。


「へあ?」


 情けない声と共に声の主の方へ視線をやると、アリアがなんか文句ある?と言わんばかりの顔でこちらを見ていた。


 ありまくりだよ……


「はい!じゃあアリアの班のサブリーダーはイブくんでーす!皆拍手ー」


 周りの生徒たちも戸惑っているのか、拍手はまちまちだった。

 そりゃそうだ。5つ星の天才さんが選んだのが、パッとしない編入生なのだ。


「まじかよ……」


 サブリーダーは指名されると前へといき、リーダーの横で立っていなければならない。

 俺はアリアの横に着くと小声で


「どういうつもりなのかな?」

「別に誰を指名しようが私の勝手でしょ」


 ツーンとした態度で答え、アリアは前を向き続ける


 最後までサブリーダーの指名が終わるとシェリー先生は

「残りのメンバーは代表2名で話し合って決めてねー!」

 と言い、俺たちに後を任せ端の方の席へと座る。

 周りのリーダー達は直ぐに声をかけ始めるが、俺とアリアは動かない。


「あの?アリアさん?声かけに行かないの?」

「ええ。私と貴方が揃っているんだから、優秀な生徒は他のところへ行かせてあげないと不平等でしょ?」

「なんでそこまでわかってて俺を指名したんですかねえ」

「別に、ただの気まぐれよ!」


 すると俺たちの方にミハとシャーロットあとはアリアの友達のアリスとミーシャが話しかけてくる。


「イブ君、アリアさんよかったら同じ班にならない?」


 ミハとミーシャは2つ星シャーロットとアリスは3つ星だ。


 俺はアリアに目で どうする? と訴えると、アリアは、

「ええ。是非お願いするわ」

 と言った。


 まあ5つ星があるとは言っても内訳とはしては及第点だろう。

 特別演習とは言ってもオースティンが始まって以来2年生の特別演習では死人は1人も出ていない。先生や軍からの魔法兵の貸し出しなどからそこまで危険な演習ではないからだ。


 他の班もメンバーが決まったらしく、シェリー先生が音頭を取る。


「よし!それじゃあこのメンバーが来週からの特別演習の仲間だからね!明日からの訓練も基本的にこのメンバーでやるわよー!」


 わっと歓声が上がり、授業は終了となった。


 休み時間なり、俺はすぐさまアリアの方へ向かって彼女の手を引いて廊下の端へと向かう。

 ちょっと!と聞こえるが今は無視!


 廊下の端へとつき、アリアの方は向き直り彼女の考えを問いただす。っとえ?


「アリアなんでそんなに顔真っ赤なんだよ」


 普段の色白の肌が耳まで真っ赤に染まっていた。

 アリアは俺の目を塞ぎ


「き、急だったからびっくりしただけよ!!!」

「急だったって、俺が編入した日の君とやってること変わんないだろ」

「うるさい! ちょっとまって!」


 アリアは俺の目を塞いだまま深呼吸を繰り返す。


 俺の目が解放され、アリアは何事もなかったかのように

「話って何よ」

 と言った。


「サブリーダーの件に決まってるだろ!ただでさえちょっと前噂されてたのにこんな注目の集まる展開にしてどうすんだよ」

「別に人の噂なんて気にすることないでしょ?」


 前に俺がアリアに言ったニュアンスで返したきた。


「そうなんだけどさ……」


 言葉が詰まる俺にアリアは


「私と噂されるのが嫌だからって話?」


 と不安そうに聞いてきた。

 そういう話ではないのだが……

 俺はただ注目されたくないだけで……

 まあでも彼女からしたら嫌なのかもって思うよな。悪いことをした。


「ごめん。俺が悪かった。アリアと噂されるのが嫌とかじゃないんだ。あんまり目立ちたくなくてさ。ほら、わかるだろ?」

「そっ、まあ私もなんの相談もなしに指名しちゃって悪かったわね」

「まあとにかく決まったものは決まったんだし、頑張ろうぜ」


 と手を差し出すが、アリアは自分のポンチョで慌てて手を擦り、俺の手の先っちょを掴んだ。


「ええ。よろしく」


 なんか避けられてる?


 アリアは振り返り教室へと戻った。


 まあなるようにしかならないし、頑張るか!


 決意を改め俺も教室へと歩く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る