第116話

「そう言えば、最近、技術者達が大人しいですね」

「あれ?そう言えば、最近呼び出されないね」

執務を邪魔されないという面ではいいことなのだが、あれだけ問題を起こしていた人達が大人しいとか逆に怖い。

「ちょっと、様子を見てきますね」

そう言ってマーチェが技術者達の様子を見に行った。

しばらくして、マーチェから連絡が入る。

「俊様。俊様。大変です!」

「どうしたの?落ち着いて・・・」

「技術者達がまともに仕事をしています。これは絶対に何かありますよ」

まともに仕事をしていて恐れられる存在というのも他にいないだろう。

「わかった。とにかく、僕もそっちに向かうね」

「はい。お待ちしています」

ドックに向かい、状況に驚く。

ほとんど完成していなかった戦艦がほぼ完成している。

「おや?領主様じゃないですか」

「何か悪い物でも食べたんですか?」

思わずそう言ってしまった。

「いやいや。食事なんていつ食べたか・・・」

食事をまともに食べていないらしい。

それはそれで問題ではあるが・・・。

「はぁ・・・。何を企んでいるんですか?」

「何をって・・・。やだなぁ。仕事を真面目にやっているだけじゃないですか」

「ところで、マーチェが来ているはずなんですが・・・」

「嬢ちゃん?あぁ・・・。それならこっちだ」

奥の方で椅子でぐるぐる巻きになっているマーチェを発見した。

「俊様。逃げて。逃げてください」

「えっ?」

後ろでは何やらスパークしている器具を持っている技術者がいる。

俊はなんとかそれを避ける。

「ちょっと。いきなり何するんですか?」

「秘密を知られたからには捕まえるしかないだろう?」

「秘密って・・・」

「こいつら、真っ当に働いてるふりして貴重な資源を怪しげな研究に使い込んでいたんです」

「ふふふ・・・。怪しげとは失礼な。それにロストシップのヴィービルが来ているのに隠している領主様が悪いのです」

「そうだそうだ。我々に古の技術を隠すなんて酷いお方だ」

いつの間にやら技術者達に囲まれていた。

「隠していたのは悪いと思いますけど、あんたら絶対、何かやらかすだろ!」

「そ、そ、そ、そんなことはない」

動揺したのか噛んでいるじゃないか。

「我々には技術を探求し追及する責務があるのだ」

言っていることは間違っていないが、信用なんてできない。

「それで、反乱ですか?」

「反乱?何のことだかわからないなぁ。ただ、我々の研究が進むまで大人しくしていてもらうだけですよ」

このままでは技術者達に捕まってしまいそうだ。

まぁ、時間稼ぎが目的だったのだが・・・。

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