第109話

連絡艇でステーションにやって来た人に綺麗な女性が混じっていた。

「ドリトル。お久しぶりですね」

「社長・・・。なんで貴方が?」

「甥に会うためにね。貴方が俊君ね。私は、フランチェスカ・マーキュリー。貴方のお父さんの妹よ」

「はじめまして」

「それで、あの馬鹿はどこにいるのかしら?」

「馬鹿とは酷いじゃないか」

そう言ってどこからともなく父であるカールが現れた。

「息子の支援をするのはいいわ。でも、マーキュリー領のことをほったらかすなんて何考えてるのよ」

「いやいや。私がいなくてもまわるようにしておいたはずだけど?」

「欲深い馬鹿な連中が色々手を出してきて大変だったんだからね」

「あはは。そういう馬鹿な連中は見せしめにしたんだろう?」

「その通りだけど・・・。処理する私の身にもなってよね」

「それは悪かったね。けど、近々帰る予定ではあったんだよ。こちらも安定してきたからね」

忘れていたが、父であるカールはマーキュリー領の領主なのだ。

領主不在では色々不都合があってもおかしくない。

「父さん。ごめんね」

「気にしなくていいよ。爆弾も押し付けるわけだからね」

「爆弾って・・・。技術者達のこと?」

「うん。あの状況なら無理に連れ戻そうとしても帰らないだろうからね。俊に任せるよ」

新技術を好き勝手開発できる状況である今はある意味、夢のような環境だろう。

その環境を維持できるなら彼等は比較的おとなしくしていてくれるはずだ。

「はぁ・・・。出来るだけ引き受けるけど無理だと思ったら送り返すからね」

「できれば、それは回避したいわね」

フランチェスカ叔母さんはそう言って言葉を挟んでくる。

「彼等ってそんなに嫌われてるんですか?」

「使う予定の資材を無断で散々使ってくれてね。その穴埋めにどれだけ苦労したことか・・・」

俊としてもその気持ちはよくわかる。

彼等が消費した資材があればどれだけ戦力を整えられたことか。

「それと。ドリトル。貴方に渡したい物があるわ」

「あらん・・・。何かしらん?」

フランチェスカ叔母さんの後ろから女の子が出てくる。

「私を置いていくなんて酷いわね」

「ビィービル。貴方・・・」

どうやらドリトルさんの知り合いのようである。

ドリトルさんはえらく驚いている。

「嘘よ。貴方は大破したはずじゃない」

フランチェスカ叔母さんは笑っている。

「うふふ。マーキュリー家の総力を結集して修復したの。全てとは言わないけれどできる限り修復させてもらったわ」

どうやらビィービルと呼ばれた女の子には秘密がありそうだった。

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