第58話

楓とハルカは、俊のいないこのタイミングで全員を集めた。

それはとある提案をする為である。

「私が俊から告白されたことは伝えたわね?」

「はい。聞きました」

「独占したい気持ちももちろんあるわ。でも、皆のことは嫌いじゃない。そこで提案よ」

最近では、焦りを感じているのか、露骨な誘いが増えていた。

楓はこのメンバーの中では一番、俊のことをわかっている。

俊が露骨なアピールに困惑しているのが見て取れた。

「俊の嫌がることはしないこと」

全員が頷いている。

「過度なスキンシップは禁止ね。全員、節度を保って接するように」

何人かは視線を泳がせている。

心当たりがあるのだろう。

ハルカが警告するように言い放つ。

「守れない子はそれなりの罰があるからね」

罰という言葉が聞いたのか、全員が守ると誓った。

俊がステーションから戻ると今まで困っていたのが嘘のように過度な接触をしてくる子はいなかった。

何かあったのだろうか?

さり気なく、探りを入れてみたものの全員、答えてくれなかった。




周辺宙域に宇宙海賊がぽつぽつと現れている。

宇宙海賊はどれだけ退治しても、どこかから湧いてくる。

宇宙海賊はまさしく宇宙の害虫だ。

何故、宇宙海賊は真面目に働けないのだろうか。

これなら、まだ、お金になる宇宙生物の方がマシである。

俊達は、冒険者組合の応援要請に応えて、戦力を派遣していた。

逃げられる場合もあるが、多くの宇宙海賊を倒すことに成功している。

宇宙海賊の艦は回収してステーションで売り払う。

額としてはたいした額にはならないが、それでも意味があった。

売り払われた艦は、修理され、お金のない冒険者がその艦を買う。

その冒険者は少しでもお金を稼ごうと一生懸命に働く。

その結果、ステーションは益々発展していく。

資源回収の効率化を図って、第2ステーションを造る計画もあるようだ。

それに合わせて、ステーションの防衛艦隊から艦を売ってほしいという話も入っている。

ハルカ達がいない間も、売る用の艦のストックを造っていてくれたのでとりあえずは、それを売っておいた。

明石の改修は後、2週間ほどで完了する予定だ。

その後は、順次、今持っている艦の装備を更新する。

今回の改修で色々な装備が使えるようになる。

実際に使ってみなければ評価はできないが、大幅な戦力アップになるはずだ。

簡単なテストを行い、問題がなければ宇宙生物相手に性能をテストする予定だ。

実戦テストの為に、宇宙生物の巣も調査済みである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る