第43話

俊達はスペースウォーの決勝戦まで勝ち進んでいた。

「やっぱり、このチームが残ったのねん」

「ドリトルさんは、相手のチームのことを知ってるんですか?」

「前回の優勝チームよん」

「それは手強そうですね」

「そうねぇん。基本に忠実なのが、一番手強いわねん」

喋りつつも戦況は進んでいた。

味方の駆逐艦と敵の駆逐艦がそれぞれミサイルの射程まで進出する。

お互いにミサイルを発射して、迎撃する。

相手のミサイルは狙いが的確で、味方の駆逐艦に被害が出る。

このまま、撃ちあっていては負けそうだ。

「このままだと、ジリ貧ですね」

「そうねぇん。でも、下手に動けば被害がもっとでるわよん」

「僕に考えがあります」

「そうねぇん。いいわん。乗ってあげる」

俊は残存する駆逐艦と軽巡洋艦を引き連れ、敵陣に突っ込んでいく。

味方の駆逐艦と軽巡洋艦は次々に撃沈される。

俊の重巡洋艦も被弾するが、何とか、目的のポイントに到達した。

俊は、ここであるスイッチを押した。

そのスイッチとは自爆ボタンであった。

重巡洋艦は次遂に積んでいた燃料と爆薬に引火して大爆発を起こした。

その爆発は周囲にいた敵艦を巻き込み、密集していた敵艦の多くを巻き込んだ。

「あらん・・・。自爆するなんて・・・。貴方の覚悟は受け取ったわん」

そこからは、ドリトルさんの無双だった。

残った敵艦をものすごい勢いで倒していき、相手の戦艦との一騎打ちになる。

わずかな差でドリトルさんの戦艦の主砲が相手の戦艦を貫く。

これで、俊達の優勝が確定した。




場所を食堂に移して、チーム対抗戦に出ていたメンバー全員で打ち上げをしていた。

「俊さんって、思いきったことをしますね」

そう言ったのはハルカだ。

「私も、自爆なんてすると思わなかったわん」

「俊、はじめからあの手を考えてたでしょ?」

楓が鋭く突っ込んでくる。

「あれ?ばれた・・・?」

「だって、あの爆発は仕込んでなきゃ無理でしょ」

俊は自分の重巡洋艦に予め、大量の燃料と爆薬を乗せていた。

「リアルではやらないでくださいね」

ハルカにもそう釘を刺される。

「あれはゲームだからであって・・・」

「まぁまぁ、いいじゃないの。大勢の度肝を抜いたんだからぁ」

俊の自爆攻撃は動画サイトで大いに話題になっている。

勇者、英雄と語る人々もいれば、不正だとか無効だと批判している人もいる。

それに対して、敵チームからも、援護の声があがっていた。

あれは侵入されるまでに迎撃できなかった、自分達のミスだと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る