第32話

午前中はこの宇宙で生活する為の知識を学び、午後からは自由時間だ。

俊は楓を連れて、1度だけきたことのある、ビビット金融を訪れた。

「あらぁん。何か御用かしらん?」

「ドリトルさん・・・。昨日は助けてくれて、ありがとうございました」

「いいのよん。貴方に何かあれば、問題だものん」

「ドリトルさんは何者なんですか?」

「ビビット金融の持ち主は、マーキュリー家よん。貴方のお父さんを支持する人が、オーナーなのよん」

「では、その人の指示で?」

「それは関係ないわん。私が、個人的に貴方のことを、気に入っているだけよん」

「そんなに会ったこともないのにどうして?」

「ハルカちゃんを引き取ったからよん。あの子はすっごくいい子でしょん?そんな子が好いている。それだけじゃ、ダメかしらん?」

「それじゃ、ハルカに感謝しないと。でも、何かお礼をさせてください」

「ふふ。お礼ねぇん・・・。なら、私と一緒にこれに出てくれるかしらん?」

そう言って見せられたのは1枚のチラシだ。

チラシにはこう書かれている。

『スペースウォー。チーム対抗戦。参加者募集』

「大会ですか?」

「そうそう。私ってこんなでしょん?中々、組んでくれる人がいないのよねん」

「僕なんかでいいんですか?」

ドリトルさんはすごいプレイヤーだ。

自分がチームを組んでも足を引っ張りかねない。

「成績なんていいのよん。楽しめればねん」

「ねぇねぇ。これってゲーム?」

「うん。ゲームだね」

「私もやってみたい」

楓がゲームをしている姿は想像しずらいが、興味を持ったならやってみるのもいいだろう。

「あらあら。新しいプレイヤーの誕生ねん。私が、手取り足取り教えてあげるわん」

ドリトルさんはそう言うと、俊と楓の手を取り、ゲームセンターに向かった。

「ドリトルさん。お仕事は?」

「それは大丈夫よん。AIがやってくれるからん」

結局、この日は門限ぎりぎりまでスペースウォーをして過ごした。

楓は最初は苦戦していたものの、ドリトルさんのアドバイスを吸収してどんどん上手くなっていた。




「はぁ・・・。楽しかったなぁ」

楓はそう呟く。

「楽しんでくれたならよかったよ」

「俊もすごかったね」

「う~ん。改造のおかげかな。最初は全然ダメだったんだよ」

「うふふ。また、遊びに行こうね」

「うん」

「さて、今日のメニューは何かな?」

そう言って食堂に入る。

今日は白米にハンバーグとオニオンスープだった。

「へへ。ハンバーグだ」

楓は昔からハンバーグが好物だった。

それは今も変わらないようだ。

嬉しそうな楓を見て、これからも平和が続くといいなと思うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る