第29話

俊は自室にて休んでいた。

苦手というわけではないのが、艦内は女の子の比率が高いので、必要のない場合は自室にいることが増えていた。

「マスター。マーキュリー家の機密回線からデータが送られてきました。再生しますか?」

「何だろう?再生して」

「再生します」

どうやら何かの映像のようだ。

映像を確認すれば見慣れた女の子が映っていた。

「楓・・・」

聞いたことのない男の声が聞こえてくる。

「この子は預かった。かえしてほしければ指定されたポイントまで1人でこい」

そう告げると映像は終了した。

ポイントを確認する。

どうやら最近、ステーションに追加された区画のようだ。

「マスター。どうしますか?」

「行くしかないよね・・・。見捨てるわけにはいかないし」

「罠の可能性が高く。認められません」

「大事な、幼馴染なんだ・・・」

「検討中。検討中。マスターの身を守る為に、装備を提供いたします」

「装備?」

「個人携帯用のシールド発生装置と小型ドローンです」

「ありがとう」




俊は大型輸送艦に乗り、ステーションまでやってきた。

「手続きはお願いね」

「はい。お任せください」

俊は、一緒にやってきた、ハルカに採掘ギルドでの取引を任せ、指定されたポイントを目指す。

指定された場所は何やら倉庫のような場所だった。

「よく来たな。こっちだ」

男が1人現れ、倉庫に誘導される。

俊はその指示に従い、倉庫の中に入った。

倉庫の中には目隠しをされ、後ろ手に手錠をされた、楓がいた。

「楓・・・」

「俊・・・?」

「おっと。感動の再開はまだだぜ?

男が2人の間に立ちふさがる。

「何が目的だ?」

「何、ちょっと書類にサインしてくれればいいのさ」

そう言って、端末を渡してくる。

俊は内容を読む。

要約すれば、マーキュリー家の相続を辞退するというものだった。

「こんなの物の為に、楓を巻き込んだのか?」

俊が巻き込まれたのは仕方ない。

家庭の問題だ。

だが、楓まで巻き込んだことは許せなかった。

「こんなことか・・・。お前さんにとってはそうかもな。だが、雇用主にとっては重大なことなんだぜ」

男はそう言って笑っている。

俊の頭の中には、さっさと済ませて、楓を解放する。

それしかなかった。

「ちょ~っとまったぁん」

どこかで聞いた声がする。

物凄い、勢いで入って来たのはドリトルさんだった。

「なんだ?お前は・・・」

「貴方の知る必要のないことよぉん」

ドリトルさんはそう言うと無造作に銃を構えた。

「さて、どうするのかしらぁん?」

「畜生、そっちがその気なら・・・」

男は何かのスイッチを押したのだった。

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