第28話
密命を受けた、工作員は地球に住む1人の少女を攫った。
それは俊の幼馴染である楓という名の少女だった。
だが、これは重大な条約違反だ。
宇宙に自力で進出できない星の住民を宇宙に連れ出してはいけない。
敵対する勢力もそれは知っていたが、それでも、拉致を実行したのである。
「ここは・・・?」
楓が起きると見たことのない風景が広がっていた。
ベッド以外、何もない、狭い部屋だ。
壁はどうやら金属のようである。
何がどうなっているのかわからない。
最近、幼馴染の俊が失踪した。
もしかしたら、自分と同じように拉致されたのかもしれない。
だが、一般家庭である自分を拉致して、誘拐犯に何のメリットがあるというのか・・・。
目的が何かわからないが、ただただ、恐怖することしかできなかった。
プシュ~と音がして、壁だと思っていた部分が開く。
開いた所から1人の男が入ってくる。
「おやおや。お姫様のお目覚めか」
「貴方は・・・」
「未開人のわりに、整った顔をしているじゃないか」
「未開人?」
「君は知らなくていいことさ。せいぜい、大人しくしてることだね」
それだけ、言って、男は部屋を出ていった。
それと同時に開いていた部分は閉じてしまった。
楓は男の出ていった部分を調べるが、どうすることもできなかった。
ドリトルとアズマはステーションの居酒屋で酒を飲み交わしていた。
「男、臭い店ねぇ。もっと、お洒落なところはなかったのかしら?」
「そう言ってくれるなよ。あんたと違ってこっちの懐具合は火の車なんだ」
「よくいうわぁ~。駆逐艦を20艦も買った癖に」
「必要経費って奴だ」
「それで、状況はぁ~?」
「どうもきな臭い動きをしてる奴が何人かいるな」
「やっぱりねぇ。こっちでも、暗躍してる連中がいるわん」
「何も起きなければいいがな」
「それは無理ってもんでしょ~」
「俊の奴が、あんまりステーションにこないのがせめてもの救いか」
「そうねぇ~。でも、いつでもフォローできる体制は重要よん」
「わかってる・・・。俊に何かあったら、カールさんに顔向けできねぇ」
「貴方も律儀よねぇん」
「それはお前もだろ」
「あらぁん。私はビジネスだものん。貴方と一緒にしないでほしいわん」
「へいへい。まぁ、伝説のビィービルが味方でよかったぜ」
「古い話よん。今は、ただの金貸しの中間管理職よん」
ドリトルの気配が一瞬変わる。
あまりこの話を引っ張るとよくないようだ。
「そうだったな・・・。そういうことにしておこう」
アズマはそう言って納得するのだった。
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