【実話】家に住み着いた小人
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
第1話 新居は快適……いや、怪的?
「念願の一人暮らし~‼」
何もないまっさらな部屋で、私は一人叫んだ。
この春、専門学生になった私は、苦手だった実家を出て一人暮らしをすることになた。
築はまぁ古いは古い。
駅からもやや遠く、交通の便も悪い。
それでも2LDKで家賃6万円はかなりの破格だった。
「このお風呂の小窓がいいのよね」
例えベランダからは隣のビルしか見えなくても。
エレベーターがなくても。
カビの生えないこの小窓が、この物件を契約する決め手になった。
「あああああ、もうサイコー。家具何にしようかなぁ~」
何もかもが順調で幸せだった。
そう、あの瞬間までは――
◇ ◇ ◇
家具を全部入れ終わり、完全に引っ越しが終わると私は寝室にした部屋のベッドで眠りについた。
何時間経過したのだろうか。
誰もいない部屋はどこまでも静かだった。
しかし寝返りを打った次の瞬間、バタンというどこかのドアが閉まる音が耳につく。
「んー……、なに?」
初めは寝ぼけて夢の中で聞いたのかと思ったが、気になり出すともう寝ていることなど出来なかった。
「他の家の音かな?」
ベッドから這い出た私は部屋を出た。
そしてキッチンに隣の部屋と、順番に電気を付けて部屋を回る。
「何もない……ねぇ」
物が落ちたり、窓が開いていたという形跡もない。
やはり上か隣の部屋の人のドアの音だったのかと諦めて部屋に戻ろうとした時、ふと視界にお風呂場に続くドアが目に入った。
「そういえば……」
お風呂を出た時に、換気のために風呂場のドアは開けておいたっけ。
でもまさか、あんな小窓から何か入ってくるわけないし。
あーでも、猫とか鳥なら入っちゃうかな。
それなら困るかも。
そんな軽い気持ちで私は、お風呂場へ向かった。
「あれ?」
お風呂場には何もいなかった。
しかしいなかった代わりに、確かに開けておいたはずのドアはぴったりと閉まっていた。
「んんん? 開けたよね、私……」
カビが生えるのが何よりも嫌だった私は、確かに換気のためにドアを開けていた。
だけど気づけば、小窓も風呂場のドアもぴったりと閉まっている。
小窓は内倒しになっていて、半分だけが開くような形式。
もちろん外からこの窓を閉めることなど出来ない。
だとすれば、中から……つまり私が閉めたってことになるけど……。
「いやいやいやいや」
確かに閉めた覚えはない。
むしろわざと開けたのに。
「おかしいでしょう」
うん。おかしい。閉めたワケない。
わけないけど。
「気にしないでおこう。もしかして、ボケて閉めたのかもしれないし。うん。気にしない。気にしない」
半泣きになりそうになりながらも私はもう一度小窓とお風呂場のドアを開け、部屋に戻った。
「寝よう。明日早いし……」
無理やり布団に潜りこみ、私は眠りについた。
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