幼馴染みと隣席と僕と

ゆうき±

第1話 幼馴染と僕

「待たせたな!」


 僕こと、成田なりた 正輝まさきは昨日見ていたアニメに感化されているであろう幼馴染にして最上位のオタクの仁王立ちしている黒い短髪のひいらぎ紅羽をみる。


「パンツ見えてんぞ」

「え、嘘!?」


 やるならまず考えろよ。

 彼女は恥ずかしそうに、スッとスカートを抑えながら降りてくる。

 

「……エッチ」

「これに関しては僕は悪くない」


 こいつが勝手にやって自滅しただけの話だ。

 むしろ教えてやってる僕に感謝してほしいくらいだ。


「それに紅羽、遅刻してきてなんだその態度は」


 僕は腕を伸ばし彼女の頬を引っ張ると餅のようにムニ~っと伸びている。

 紅羽は伸ばしている両手を掴み、僕の手首を力一杯握り抵抗している。


「いふぁいってふぁ~!」

「全く、いつも僕が迎えに行ってるじゃないか……普通ラブコメじゃ、逆だろ?」


 そう言って彼女の頬から手を離すと、頬を左手で抑えながら右手の一指し指を振る。


「ちっちっちっ、私が主人公で貴方がヒロイン……勘違いしてもらっては困りますよ? わわ、引っ張ろうとしないで~!」


 次は掴まれてやるもんかといった感じで、素早く距離を取る。


「どんな理屈だよ」

「これって苛めだからね! 乙女の頬をつねるのは重罪だから!」

「乙女ね~」


 こいつのどこに乙女要素があるのだろう。

 見た目は確かに美人で可愛い女子だが、言動は完全に痛々しいおっさんだ。


「見た目だけだな」

「おい」


 おっと、つい本音が口に出てしまった。

 僕の言葉に、彼女は右頬を膨らませてこちらを見ていた。


「なんだい? 自称乙女の紅羽様?」


 彼女はムッとした表情から不敵な笑みを浮かべた。

 わかる、わかるぞ……こういう時の彼女の表情は良からぬことを考えている時の顔だ。

 彼女はスマホをポチポチと打つと、画面を見せてくる。


「これ、な~んだ?」

「ん? これって……」


 その写真には自室のベッドの下に隠してあった秘蔵の本が机の上に並べられていた。


「お前、なんでそれの隠し場所を知ってる?」

「幼馴染だよ? 知らないわけないじゃない」


 いや、幼馴染関係ないし……それと、誰であっても人の部屋を漁っては駄目だからね?


「人の家のベッド勝手に漁るなよ」

「漁られて困るような物を置いてる君も悪いよ?」


 そう言われると、グゥの根も出ない。

 汚職した人たちの心情はもしかしたらこんな感じのものなのかもしれない。

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