第三十一話 終結

 俺を外に出すと、海鳥はすぐに結界を張り直した。

「……っ!」

 その瞬間に風が吹き荒れる。

 暴風と呼んでいい強さの風に身体が浮きそうになるが、なんとか踏ん張り、風が弱くなるタイミングを待つ。

 それから走った。

「…………」

 レイラがいるのは前方約二〇メートル。クリーチャーズの数は残り七。内訳はケルベロスが一。ライオンが三。猪が一。大鷲が一。大蛇が一。

 この数なら――あと二分も掛からないだろう。

「■■■■■」

 レイラはまだ俺に気付いていない。

 いや、今の状態だったら俺を見たところで、すぐに俺と認識しないだろう。

「……おっと」

 地面をうねる蛇の尻尾を避けて走る。

 今度は真上からレイラを丸吞みしようとしていた大蛇は、頭部を焼き払われて死んだ。

 レイラとの距離はあと一〇メートル。

「■■■■■■■!」

 左右からライオンが二頭、上から大鷲がレイラに突っ込む。レイラは右手で雷、左手で氷、口から暴風を放って三頭を殺した。

「レイラ」

 レイラとの距離はあと五メートル。

「■■■■■‼」

 レイラの身体から出る靄が濃くなる――と同時に地面が揺れ始めた。

 地鳴り。

 いきなり激しく揺れ始めた地面はひび割れて、裂けて、一度こけたが俺はレイラのところまでたどり着いた。そして――

「レイラ!」

 俺はレイラの肩を掴む。

 と同時に――レイラは俺に雷撃を放った。

 直撃した俺の上半身は焼け焦げる。

「あ」

「『あ』じゃねえよ!」

 俺は反射的に攻撃してきたレイラの頭にチョップをかました。

 それでレイラは正気に戻った。

「~~~~っ! 何するんじゃかなめ!」

「何するんだはこっちの台詞だ」

 俺を見た瞬間正気に戻ったレイラに、俺は突っ込んだ。

 頭頂部を押さえて痛そうにしているレイラに、俺は言う。

「で、レイラ」

「む?」

「周りを見ろ」

 俺に言われてレイラは周囲を見た。

 度重なる自分の攻撃によって草木は消え失せ、荒れ果てて更地になった周囲を。

「…………」

「落ち着いたか?」

 自分が変えた周囲の状況を見て、レイラは冷静になったようだった。

 反省したのか少ししょんぼりした表情で、レイラは言った。

「……ごめんなさい」

「別に怒ってない」

 レイラが本気で戦ったら周囲が滅茶苦茶になるのはわかっていたし、わかっていて指示したのは俺だ。だから怒る気はない。

「さて」

 残るクリーチャーズは三頭。ケルベロスとライオンと猪の姿をした一頭ずつ。これだけ数が減ったら、レイラに頼らなくて倒せるだろう。

 残る三頭が俺達に突っ込んで来た。

 ライオンの姿をしたクリーチャーズはレイラが真正面から焼き殺した。

 残るケルベロスと猪は俺が相手をしようと思ったが、ケルベロスは業火に包まれた十字架が直撃して灰になり、猪は極細の糸で動きを止められたあと、地面に浮かんだ魔法陣が爆発して、跡形もなく消し炭になった。

 誰がやったかは明白。

 振り返ると、二人の殲鬼師がこちらを見ていた。

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