第七話 会話

 ハンバーガー。

 野菜や肉をバンズパンに挟んだ料理。

 俺とゆーき達はそれを扱っているファストフード店に移っていた。

「俺ダブルチーズバーガーのセット。ドリンクコーラで!」

「私フィッシュバーガーとサラダのセット。ドリンクオレンジジュースで!」

「あたしテリヤキの単品。あとドリンクでお茶」

「かなめは?」

「……ホットコーヒー一つ」

 各自注文の品を持ってテーブルに着く。

 俺の隣にはゆーき、手前には海鳥、斜め前に少女が座った。

 少女は座ると同時に言った。

「で――さつき」

「ん? 何リアちゃん?」

 海鳥は早速ハンバーガーを頬張りながら訊く。

「確か神崎かなめと話するのよね?」

「うん、そだよ?」

「そだよって」

 海鳥の発言に少女は戸惑った表情をして、ゆーきに目を向ける。

 と――ゆーきは少女の言いたいことに気付いたのか言った。

「ああ。大丈夫大丈夫――俺がただの人間だから、吸血鬼関係の話がしにくいって思ってんだろ?」

「な」

「確かに俺はただの人間だけどさ、ここ最近かなめの周りで起こったことは知ってるから、別に気ぃ使わずしゃべってくれていいぞ? ……かなめが吸血鬼になったこととか、海鳥がかなめとレイラちゃんを監視しに来た殲鬼師だってこととか、俺知ってるし」

 ゆーきの発言に少女はあんぐりと口を開ける。

 それから海鳥の方を――クラスメイト兼、監視役の殲鬼師の方を見た。

「あんた一般人巻き込んでんの?」

「いやいや、私が巻き込んだわけじゃないよ?」

 少女の発言に海鳥は苦笑いする。

「ゆーくんがかめくんと私のこと知ってるのは……えーなんていうか……事故みたいなものでして」

「ゴールデンウイーク終わりに二人でうちに来たんだよ」

 海鳥に説明させたら時間が掛かりそうだったので、俺は簡潔に言った。

「で、その時にレイラに会ってバレただけだ」

 ゴールデンウイークが終わって初の登校日。俺は学校を休んだ。レイラのことで決まっていないことが多かったため、仮病を使って休んだのだが――それで俺の様子を見にわざわざ家まで来たのが、ゆーきと海鳥だった。

 その時にレイラの存在が二人にばれて……色々あって俺がレイラの眷属であることがばれて、そして海鳥が俺とレイラを監視しに来た殲鬼師ということが発覚した。

 まあ、何があったかは面倒だからここでは語らないが……ゆーきが俺の事情を知ったのはその時だ。

「…………」

 俺の発言に対して、少女は黙ったままだった。

 それで少しして口を開いた。

「あんたには訊いてないんだけど?」

「…………」

 棘しかない発言が飛んできた。

 それに対して、ゆーきはけらけら笑う。

「はっはっは――かなめめっちゃ嫌われてんじゃん。一体何したんだよ?」

「別に。大したことしてないけど」

 ただ、人の家の敷地で騒いでたから大人しくさせただけ。

 はったり使ってそれらしいことを言ってビビらせたけど、実際は殺していないし、傷一つ付けていない。……まあ事情を説明しないで海鳥が迎えに来るまで組み伏せていたから、嫌われる理由はわかるけど。

「あ、そう言えばさ、リアちゃんって本名なんて言うの? 俺達もそう呼んでいいならそう呼ぶけどさ」

「ん? あたしの名前? 佐々木よ佐々木――佐々木莉愛りあ。それがあたしの本名」

「佐々木莉愛――へえいい名前じゃん。俺なんて呼ぼうか?」

「ありがとう――普通に佐々木でいいわよ?」

「じゃ、佐々木って呼ぶわ。俺は神崎勇騎。かなめとは幼馴染で小学校の時から知ってるから、こいつについて訊きたいことがあったら気軽に俺に訊いてくれ。なんでも答えるから!」

「ほんと? じゃあそうさせてもらうわ」

 俺の時と違ってゆーきに対してにこやかな笑顔を浮かべる少女――佐々木莉愛。

 高身長で顔の整っているゆーきと喋ると、ほとんどの女は乙女のような笑顔になるが――それとは異なる自然な笑顔だった。

「おい……佐々木」

「……何?」

 俺が話し掛けるとあからさまに睨むんだな。

 ゆーきと話している時と全然態度が違う――と思いながらも、話が進まないため俺は本題を切り出した。

「確か俺に話したいことがあるんだろ? だらだら話していても時間が過ぎるだけなんだから、さっさと本題に入ろうぜ」

「ん……そういえばそうだったわね――じゃあ、本題に入るわよ」

 佐々木は一拍置いて言った。

 お茶を一口だけ飲んで。

「この街で、吸血鬼が犯人の事件が起こっている」

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