この漆黒の世界の中で。

如月 愁

漆黒で歪な世界

…………





…………………





……(ここはどこ…?)







………思い出してきた…


そうね……この空間を言葉に例えるなら虚無の空間……とでも言うのかしら。


なにもないただ真っ暗な空間。


どうして私はここに閉じ込められているのだろう…?


え?何故閉じ込められていることがわかるのかって?


そりゃ扉のようなものと空が黒い幕に覆われているからよ。


何故こうなったのか……そもそも私ってなんで存在しているのだろ…?


……そう言えば"私"って何…?


……………"私"……?






……………………(この世界は"私"っていう存在の心の中ってことね…)


え?外の世界の私がみたい?


………良いわよ。見せてあげる。


こっちに来なさい。






―――――――――――――――――――――――――――――――――





「……おい、那美。那美!聞いてるのか?」


「……聞いてます。」


「だったら早く消えろ。」


「…………はい。」


「お前なんかこの世界にいらねぇんだよ」


「………この世界に出てきてしまってすみません。」


「謝罪はいらねぇよ。お前をこの世界に出したお前の親が悪いだけだからな」


「…………はい。」


「あ、そうそう」


「……なんでしょうか?」


「消えるんだったら俺たちに迷惑のかからない消え方をしてくれ」


「…………迷惑の…かけない消え方………………………」


「そうだ。俺たちは何も悪くない。お前が悪いからこうやってしているわけだ」


「…………はい。ありがとうございます。」


「ふん。こうやって言ってもらえてるだけありがたいと思え」


「……………」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――




……………………





………………………………





"私"っていらない存在………なの?


そんなことはないわ。


"私"ってこの世界に出てはいけない人間だったんでしょ?


違うわ。生まれるべくして生まれてきた人間よ。


そんなこと言って本当は………


……私の存在に気づいているのならわかるでしょ。


……………………”私”の中にいる本当の私……でしょ?


そのとおりよ。わかってるじゃない。


……でも……認めない……”私”という存在は2つもいらない……


……本当にそうかしら?


……そうよ。だからどちらかは消えないといけないのよ!!!!


……それで本当の私をこの漆黒の世界に閉じ込めたってわけかしら。


そうよ。それで何が悪いのよ。


……誰も悪いとは言ってないわ。ただ…


……なによ


ただ、本当の私を消してどうしたいのよ。それが今私が”私”に聞きたいこと。


……そりゃ、偽物の私なんていらないからよ。


…偽物?


あんたなんか偽物以外の何物でもないわよ。


私からしたらあなたのほうがよっぽど偽物よ。偽りの”私”を作り出して何がしたいのよ。


………っ


………まぁあんたのお陰で私には傷は行ってないわ。


……憎たらしい…”私”は……”私”はっ……


…………


そりゃ私だって「疲れた」って言いたいよ!

「この世界で生きることに疲れた」って言いたいよ!

でもあんたがいるから”私”が消えられないのよ!

生きていることが”誇り”?

生きていることが”幸せ”?

ふざけんじゃないわよ。

それだったら何故”私”はこんなに苦しんでるのよ。

幸せなら苦しむことなんてないじゃない。

「生きる」っていうことから開放されたいよ…!

でも、なんで人はそれを止める?

悲しいから?

自分の地位がなくなるから?

そんなの自分勝手じゃん!

自殺を減らす?

そもそも”私”がいじめられてるのを見ているのになにも対応しないのも原因じゃないの?

いじめはいけないこと。それは小学校でも教えてもらってるじゃない。

でもなんでいじめがあるの?

いじめっ子の心理は「暇つぶし」「単なるじゃれ合い」「遊び道具」「何も考えていない」「子供だから大丈夫」とかそういう自分勝手で無責任な考え方じゃないのかしら?

その無責任な考えが人を殺しているとも知らずに毎日を過ごしているんでしょ?

”私”はこんなに苦しんでいるのに?

じゃあ、さっさとこの苦しみから開放されたいよ

”苦しい”っていう考えから開放されたいからこの世界から消えることを選んでるじゃない!

なのに―――


……あなたの気持ちはよく分かるわ

”私”と私は元は同じ存在。

それでその思考に至るっていうのがわからないって思っているのかしら?


思ってないわよ!


あら、意外。

でも私があれこれ言える立場じゃないわね。

体の主導権を握られているもの。


………そうね

”私”が主導権を握っているわね。

あれ?だったらいつでも消えることができるじゃない。


……


じゃあ、消えましょうか?

この世界から。


……まって


…なにかしら?


………私っていう存在をこの世界から消してもいいけど…後悔だけはしないでね


……後悔なんてないわ。

この苦しみから開放されるっていうことが一番の幸せっていうことに気づいたからよ。


……そう。

なら良かったわ。

……消しても…同じ苦しみをあz―――


……しつこいわ。

いつまで未練を残すつもりなのよ。

これで私もこの世界のしがらみから開放される――







(そう思った瞬間この漆黒の世界の空が白に染まり――――)

















”私”という存在の肉体は無くなった。

魂っていう存在で死後の世界に送られた。

……その魂は漆黒に染まっていた。


――――この魂の運命の呪いは


永遠に苦しみから開放されない呪い―――



魂が存在する限りこの呪いはどの世界に行っても残り続ける…




―――それでは、新しい世界地獄へ――――――――

















―――――――――――――――――――――――――――――――――――

読んでいただきありがとうございました。

この物語の解説を近況ノートにて公開しています。(気が向けばこの続きに投稿されるかもしれません)

作者の他作品も読みに来てください。

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