番外編

貴族学院での生活が始まります

~まえがき~

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

有難い事に、読者様からリクエストを頂きましたので、ヴィクトリアとディーノが貴族学院に入学した時のお話しを少し書いてみました。

番外編として投稿いたします。

興味がある方は、ぜひ読んでみてください!



以降、本編です。


****

「いいですか、お嬢様。あなた様は王太子殿下の婚約者である事はもちろん、今一番注目されている令嬢でございます。どうか学院では、大人しくお過ごしください。分かっていますね、あなた様の行動一つで、シーディス公爵家はもちろん、王家にも多大なご迷惑をおかけするのですよ」


朝からクロハが、同じことを何度も何度も呟いている。


「クロハ、安心して頂戴。これでも私は、公爵令嬢なのよ」


「ええ、分かっております。しかし、旦那様が非常に心配していらっしゃるのです。我が国の貴族学院には、他国の王族たちも何人か留学して来ていらっしゃいます。万が一、他国の王族の方に失礼を働いたら…」


フラフラとクロハが倒れこんだ。この子、いつからこんなに演技派になったのかしら?


「クロハ、大丈夫?ごめんなさい、私のせいで、クロハにも多大な心労を掛けていたのね。分かったわ、私、貴族学院には入学しないわ。私が貴族学院にさえ入学しなければ、クロハもお父様も、無駄な心配をしなくてもいいでしょう?早速ディーノ様にお話しをしないと!そうだわ、この機会に、領地に帰りましょう」


名案だ!と言わんばかりに、手をポンと叩いた。


「ヴィクトリア、またクロハを困らせているのかい?困った子だね。大丈夫だよ、クロハ。僕がしっかりヴィクトリアをサポートするから。さあ、ヴィクトリア、行こうか?」


いつの間に私の部屋に入り込んできたディーノ様に、腰を掴まれた。


「ちょっと、ディーノ様。私は学院にはいきませんわ!」


そう叫んで抵抗したのだが、相変わらずひょろっこい体のくせに、力が強く身動きが取れないのだ。チラリとクロハを見ると、なぜか笑顔で手を振っている。朝からどいつもこいつも。


結局ディーノ様に、強制的に馬車に乗せられたのだった。


「ヴィクトリア、いいかい?学院にはたくさんの殿方がいる。他国の王族も何人か留学してきている。だから…」


「私が万が一粗相を犯して、他国の王族たちに無礼を働いては大変ですもの。やっぱり私は、学院への入学は辞退いたしますわ。早速引き返しましょう」


にっこり微笑み、ディーノ様にそう伝えてやった。


「僕だってそうしたいけれど、生憎君は僕の婚約者で公爵令嬢だからね。でも大丈夫だよ、僕がずっとずっと傍にいるから。だから安心して!」


私を自分の方に引き寄せると、頬に口づけをしたのだ。この男、いくら婚約したからと言って、ちょっと馴れ馴れしすぎるのよ。


ディーノ様をすかさず引き離すと


「私は学院内でも自由に生きますので、傍にいていただかなくても結構ですわ」


そう伝え、プイっとあちらの方向を向いてやった。


「ヴィクトリア、お願いだから大人しくしていてね。君はただでさえ人気が高いのだから。やっぱり僕は心配だ」


何を訳の分からない事を、ブツブツ言っているのかしら?面倒な事この上ないわね。


ディーノ様と無駄なやり取りをしているうちに、貴族学院に着いてしまった。仕方ない、行くか。


馬車を降りると…


「ヴィクトリア様、おはようございます」


「おはようございます、ヴィクトリア様」


朝から私の元にやって来たのは、カルティア様とアマリリス様だ。


「おはようございます、カルティア様、アマリリス様。今日からよろしくお願いしますね」


にっこり微笑み、そう伝えた。


「ヴィクトリア、さっさと1人で馬車から降りるだなんて…君たち、ヴィクトリアを待っていたのかい?」


なぜかディーノ様が嫌そうな顔をして、2人を見つめている。


「ええ、もちろんですわ。さあ、ヴィクトリア様、会場はあちらです。一緒に行きましょう」


それぞれが私の腕を掴み、歩き出したのだ。


「勝手にヴィクトリアを連れて行くな!」


後ろでディーノ様が叫んでいる。朝から元気ね。


「ヴィクトリア様、見て下さい。皆様こちらを見ていらっしゃいますわ。今や我が国で絶大な人気を誇る、ヴィクトリア様が学院にいらしたのですもの。注目するなと言う方が無理ですわよね」


「そんなヴィクトリア様と一緒に、こうやって歩けるだなんて、本当に光栄ですわ」


この子達の言う通り、なぜか皆こちらを見ている。中には私と目が合っただけで、キャーキャー叫んでいる子もいるわ。私は見世物ではないのだが…なんだか増々面倒になって来た…


あら?あの人だかりは何かしら?令嬢たちが何かに群がっている。新作のお菓子でも発表しているのかしら?これは私も確認しないと!


そう思い、急いで令嬢たちの輪の中に突っ込んでいったのだが…


そこにいたのは、ただの人間だった。なんだ、人間じゃない。どうして人間に群がっているのかしら?来て損したわ。


「ヴィクトリア様も、ディカルド殿下に興味があるのですか?ディカルド殿下、美しいですものね」


「本当に、生きた芸術品とまで言われておりますのよ。ただ、あまり表情を出さないうえ、いつも鋭い眼差しで令嬢たちを睨みつけているから、氷の王子なんて呼ばれているそうですわ。殿下は私達と同じ年ですのよ。これから毎日、あの美しい顔を拝めると思うと、幸せですわ」


隣でカルティア様とアマリリス様が、何やら訳の分からない事を言っている。


ディカルド殿下…確かボーレス王国の王太子で、我が国に留学する事になったと、ディーノ様が言っていたわ。


それにしても、人間に群がるだなんて物好きね。アホらしい…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る