第2話 小さな怒りは自分の選択か神の意志か
遡ること十年。受験生だった僕は、まあまあ真面目に受験勉強に取り組んでいた。という記憶はある。
あれは作業用BGM。使い方はその程度だった。
どうせ親の店を継ぐことが決まっている僕が受験する大学は、自宅に近い私立の経済学部。偏差値は、まあ、授業の大半を居眠りしていても、問題集の一冊でもこなせば合格出来るくらい。
その問題集の一冊を解きながら流していたインターネットの生配信番組。
全く目を向けていなかった。終わるまで、全く。終わったと気付いたのも、本編配信が終わって、その後に流れる広告動画もふたつ終わって「次のオススメ」が無音状態で流れて三分は経った頃。
「僕の集中力ってたまにヤバいんじゃね?」
なんて呟いて背伸びする。腰や背骨の伸びる音がする。
この時点でまだミシンの糸は摘まれていない。
伸びをしたついでに僕はトイレに立った。
時刻は深夜一時。僕以外の家族、と言っても父と母しかいないが、二人とも眠っている。
「
いや、母は起きていたようだ。それとも僕の足音で起こしてしまったのか。
「うん、真面目っしょ?」
「それは知らんけど、もう寝たら? 学校の授業を居眠りしてたら意味ない気がするけど?」
「知らんけど」だって? 笑えない。そしてグゥの音も出ない。正論過ぎる。大人ってそういう所がある。正論で子供を追い込むのだ。十年前は民法的にも僕はまだ子供だった。
「グゥっ!」
子供だった僕があまりの悔しさにそう叫んだ時、運命の糸を摘んだのかもしれない。
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