第2話 ガイア
町外れの森の中の小さな洞窟。
その中で眠るのは真っ白な鱗と紺碧の瞳を持つ
ドラゴンのガイアである。
差し込む光に唸りながら重い瞼を開けた。
ガイアは太陽の光がとても嫌いである。
「もう少し寝かせやがれ…。」
ガイアは眠ることが好きだ。
眠っている間は何も考えなくていいし、何も感じることがないから。
重い体を起こし、外を眺める。
森の静けさは彼にとって心地の良いものだ。
「ガイア、お前また眠っていたのか?」
彼はグリフォンのエール。
真っ黒な大きな翼をはためかせてガイアのいる洞窟の前へ降り立った。
「エールか、あぁそうだ。俺は眠ることが
何よりも好きだからな。」
「眠ってばかりじゃあその自慢の翼も腐っちまうぞ、ガイア。」
「ふん、相変わらず腹の立つことばかり言うなお前は。」
そう言うガイアだが、エールとは古くからの友人である。人間族と争っていた時代から共に生きてきた深い関係である為、彼のことは心から信頼しているのだ。
「ガイア、たまには森の外へ出てみないか。
悪いことばかりじゃないと思うぞ。」
「町へなんか行くものか。あそこは息苦しくて
音が喧しくて仕方ない。何より人間がウジャウジャいて耐えられん。」
「お前は本当に人間が嫌いなんだな。」
人間
欲望に塗れた汚れた種族。
ガイアの中でそれは変わることの無い考えとなってしまったのだ。
「なぁガイア、時代は変わっていく。
俺達が深く争い合ってきたあの時の人間達はもう殆どこの世界にはいない。今生きている人間達は俺達と共に生きようと道を歩み始めている。お前はずっとそのままなのか?」
あの時から秒針は一刻も進むことはない。
争い合い、何度も傷つけられた。
騙されて、打ちのめされた。
森の草花が芽吹き、散っていくのを何度も何度も見送ってきた。どれだけの時が流れようとも
ガイアの時はずっと止まったまま。
「うるせぇな、さっさと町へ戻れ。
今のお前は人間クサいんだよ。」
「…お前は変わらないのか?
それとも変われないのか?
俺はお前が心配だよ、ガイア。」
「一丁前に心配なんかすんなよエール。
俺はずっと俺のままだ。」
エールはそれ以上は語らなかった。
真っ黒な翼を開き、町の方へ飛び立った。
エールは変わった。
彼も元々は人間が嫌いだったはずだった。
昔の彼は自ら町へ行くような性分では決してなかったのだ。
ならば、どうしてエールは変わってしまったのか。
「簡単に絆されてんじゃねぇよ、馬鹿野郎。」
零れた言葉は風の中へ消えていった。
森の中の草花の芽が芽吹きだしている。
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