メイデンの夢物語

コウキング

第1話「幕開け」

 メイデンは夢を見た。


  散乱した地下室の整理をしていると、数年前、突如として行方不明になった父が書いていた1冊のノートを発見した。ノートにしては珍しく取っ手付きだ。

メイデンはそれを読もうと手に取る。

そこには、「夢」と書かれたノートだった。



地下室の扉開ければ、そこには大きなトンネル在り。

ハシゴ下ればそこは夢詰まる場。



 メイデンは、不思議に思いながら、ふと周りを見渡す。

しかし、扉はどこにも無かった。続きを読もうとページをめくるが、後は全て白紙だった。

メイデンは、父の妄想日記かと少しガッカリしながら、その本をゴミ袋に捨てる。しばらくの間片付けると、一際目立つ古びたタンスがあった。

メイデンはそれを持ち上げようとしたが、手に取った瞬間タンスは跡形もなく崩れた。


「嘘だろ。」


タンスが崩れた先には、一つの扉があった。あの日記に書かれていた通りだった。

メイデンは、その扉を開けた。扉の奥は、薄暗く不気味なトンネルへと繋がっていた。

メイデンは、自室に戻り、支度を済ませ懐中電灯を片手に再びハシゴを降りた。

ひたすら薄暗くて長いトンネルを歩き続けた。ひたすら日記に書いてあるハシゴを見つけたのだった。


「これが、夢詰まる場へ行くはしご。」


 メイデンは、奥底まで続く長いハシゴを降りきると、中央に大きな時計が浮かんでいた。

それを中心とし、散らばっている無数の部屋と、あちらこちらにはしごが、設置してあった。まるで、円状の迷宮の様だ。


「メイ君!?」


 どこか懐かしい声が聞こえた。メイデンは声が聞こえた方角を向く。

自分より1階上に、幼なじみでメイデンの恋焦がれているアイナが居た。メイデンは嬉しさと驚きで、声が裏返る。


「アイナか!」


 メイデンは、アイナの待つ方へ向かう。

この世界は、あみだくじの様に複雑で、アイナの待つ扉まで行くまでかなり苦労した。

やっとの思いでアイナの元に辿り着くと、2人の現在に至るまでを話し始めた。


「なるほど。俺と同じ、夢の本を見つけたわけか。そして、その近くにあの扉があり、この場所に来た。しかし、よく来れたな。結構距離あったぞ。」

「?そんな長くは無かったけど。むしろ短かったような。」


 アイナは昔から運動神経が良く、男子よりも体力があった。メイデンは、いつもの事だとさらっと聞き流した。

そんな事より、気になる事がある。それは、父の日記がアイナの家にも有った事だ。

父があげたのなら納得がいく。コピーを渡したのか、再び書いたのかの二択だ。

 メイデンは、その本が自分のと同じなのか気になり、アイナと共に、アイナの部屋に行った。確かに父の書いた本だ。その本を見た時、あることに気づく。


「この取っ手、本の右下にあるぞ。」


 メイデンは、ある事に気づき一旦家へ帰った。地下室にあったあの本をゴミ箱から取り出し、再びアイナの部屋に行く。そして、2つの本をくっ付ける。すると、取っ手の部分が繋がり、まるで、半月の様になっていた。


「アイナ。ひょっとしたらこの本。もう何冊かあるんじゃないのか?」


地下室内をひたすら探したが、何も出てこなかった。


「ところで、そっちの本には何か書かれているのか?」

「書いてあったんだけど、意味が分からないの。」


メイデンは、本を開き内容を確認した。



1~12向かい合いし時、十字架の元、姿現さん。


「ねえ、メイデン。止めとこっか。何だか危なさそうだし。」

「いや、俺は行こうと思う。あの部屋と言い、地下道と言い、この謎も気になる。それに、親父が書いたこの本。何で書いたのか突き止めたいんだ。」

「分かった。私も行くよ。ずっと。」


こうして、メイデンとアイナの冒険が始まるのだった。


        終

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