第22話これまでとこれから……
こうして恋人未満ほぼ恋人の関係を続けながら、俺と亜依は高校生活を過ごしていった。
その中で、亜依に対して自分が抱いていたものが恋心であった事、亜依の初恋が俺であった様に……俺の初恋も亜依だった事に気づかされた。
思えば、高校時代……恋人らしい事なんてほとんど出来なかった。
いっぱい喧嘩もしたから順風満帆とは言えない。だけど別に仲が悪かったとかではなく、むしろ月日の経過と共にお互いへの愛は深まっていった。
それならばなぜ恋人らしいことが出来なかったのか?
それは亜依がどこに行くにも美織を連れて行くと言ってきかなかったからだ。
俺や周りの人も、2人で過ごせる様に手を回したし、努力もした。だけど一度として亜依はそれに乗っかる事はなかった。
高校時代に出来た恋人らしい行為と言えば、美織が寝ている時だけ許されたキスぐらいだ。
そのくせ、母さんの事ばかり気にして『私は可愛くないから……』なんて勝手に落ち込むのだから、この上なく面倒くさくて最高に可愛いかった。
そんな風に過ごした効果かどうか知らないが、亜依と美織はその絆を年々深めていった。
最初は姉の様な立ち位置だったはずが、気づけば母親のポジションに収まっていた。
美織にはまだ真実を話していない。伝えるべきか……墓まで持っていくか……未だその答えは出ていない。
ようやく迎える事ができた結婚式と亜依の妊娠。高校卒業後に籍を入れてからだいぶ時間が掛かってしまった。
美織の中学校卒業までは集中して親らしい事をしたいと言う申し出に、俺と亜依のご両親は説得を試みるも失敗。
亜依の美織に対する愛情はもはや誰にも止められない。
ここまで文句の一つも言わずに娘の晴れ舞台を待ってくれたご両親には申し訳ないし、感謝しかない。本当に生きていてくれて良かった。
亜依のやつ、一度決めたら絶対に曲げないからな。
この頑固さ……誰に似たかと言えば、間違いなく晴子さんだろう。
最初は穏やかな人だと思ったけど、譲れない時だけは絶対に意見を曲げない。
相手が折れるまで絶対に……結局周りが折れる事になるのが志岐家の日常だった。
それにしても、本当の父親でもある俺は相変わらず
亜依が晴子さんの事をママと言っているのに感化されたと皆言っているが、辰夫さんの存在があるのだから、俺の事も
亜依の事は、
ほんと誰に似たんだよ……って考えるまでもなく亜依か。
主に被害にあっている大介から最近よく相談がくるのだが、俺に言っても申し訳ないが何も助けてやれないからな?
それと辰夫さんがパパと呼んでもらえない事を励ましてくれるが、亜依にパパと呼ばれている人に言われても、全く心に響いてきませんからね?
控室で待っている時間が暇すぎて、つい出会った頃の事を振り返ってしまった。
薄情な美那さんと美織は揃って亜依の方に行ってるし……どっちの関係者なんだ?と思いもするが、それだけ周りから好かれている亜依を誇らしく思う。
そんな事を考えていると、扉がノックされた。時間を確認するがまだ少し余裕がある。
中からどうぞと入室を促すと珍しい組み合わせだった。
「優にぃ、来たよ〜。美織から連絡きて相手してやってくれって」
「優希君、俺も美那から頼まれた」
「お疲れ様です純さん、大介。とりあえずそっちに飲み物あるんで好きに飲んでください」
尋ねてきてくれたのは、大介と純さんだった。純さんは美那さんが俺達の後見人になると決めた時に別れた人だった。
紆余曲折あって美那さんとヨリを戻して結婚した。この件に関してもウチの嫁が噛んでいるらしい。
ウチの嫁有能すぎませんかね?
「ここに1人って結構寂しいよね……」
「そもそも身内だけの結婚式なんだから、お前と聖音が来てるのがイレギュラーなんだよ」
「ひどっ。美織の事はお前に任せたって言ってたのに……あれ嘘だったの!?」
「あれは、美織にサプライズプレゼントする為に内緒で亜依と買い物行った時の話だろうがっ!!」
美織に恋愛はまだ早い。俺の目の黒いうちは絶対に許可する気はないけどな。
時間が来たので、一足先に式場へ向かう。
辰夫さんと並んで亜依が入場してくる。ウェディングドレスに身を包んだ彼女は目に涙を浮かべていた。フラワーガールを務めるのは美那さんの娘、ベールガールは美織。
俺はこの光景をしっかりと目に焼き付けた。
辰夫さんから亜依を託され、誓いの言葉と指輪を交換する。最後にベールを持ち上げ、誓いのキスをする。
まだ俺達家族には抱えている問題がある。それさえも彼女となら解決していけると…俺はそう願うのだった……。
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