第12話どう思ったか?特に何も…
美那さんは二日連続の残業とならず、普段の様に定時で帰宅した。
「美織、まだ不貞腐れてるようね」
「うん、見ての通り。そう長くは続かないと思うけど正直頭が痛い」
「私はあの子
唐突であるが誰の事を言っているかを分からない程、鈍くはない。だけど、それはもう終わった話のはずだ。
「なんと言われようとあの人と関わる気はないよ」
「頑固ね、ほんと誰に似たのかしら……」
顎に手を当てている美那さんにジト目を向ける。俺の目の前にいるあなただと声を大にして言いたいところだ。
美織が騒ぎ出す前にその話は止めようと切り出す。
「優希を好きになった亜依ちゃんが気の毒だわ」
話を変える気がないらしく、恨みがましく見てもどこ吹く風である。
「あいちゃんっ!!」
ほら、美織が反応した。ほんとどうしてこんなに懐いてるんだよ……。
とりあえず、無言で立ち上がるとキッチンに向かう。冷蔵庫から秘密兵器を取り出し、そっと美織の前に置く。
「ぷりんだっ!!」
「今日は特別だぞ。ご飯食べ終わったらな」
「あいっ!!」
この話題から美織には退場してもらう。あとは美那さんをどう黙らせるかと思った矢先、学校で2人が話していた事を思い出した。
「今日、志岐さんは鈴木さんに誘われて男子とカラオケに行くって話してたから問題ないよ」
「そ、そうなの!?それを聞いて優希はどう思ったの!?」
なんでそんなに食い気味に聞いてくるのだろうか?
何か良からぬ事を考えてそうだけど、こちらとしても話を引き延ばすのは得策ではない。聞かれたことにさっさと答えてしまおう。
「はぁ〜、特に何も。一目惚れじゃないとか言ってたけど、所詮そんなもんだったんだなぐらい。まぁ、その方がこっちも余計な罪悪感とかなくていいけど」
これ見よがしに溜息を吐きながら感想を述べた。
「そ、それだけ!?」
「逆に聞くけど、他に何があるんだ?」
「いや、ほら、その……。俺の事を好きだと言っておきながら他の男と遊びに行くのかとか、こうなんだろ……胸が締め付けられるみたいな感覚とか……」
「…いや、特には」
一瞬間が空いてしまったが不自然に思われなかっただろうか?
「そ、そんな……」
愕然とした
その様子を見て心配になったが、横から声をかけられ、意識をそちらに向ける。
「にぃに、たべた。ぷりんいい?」
「残してないな、えらいえらい。蓋開けてあげるからプリン貸して」
「あいっ!!」
幸せそうにプリンを食べる姿を見て美那さんの事はどうでも良くなった。
美織が食べ終わったタイミングを見計らって美那さんに声をかけた。
「美那さん、美織と風呂に入ってくる。食べ終わった食器はキッチンまで運んでくれてたら後やるから」
「あ、うん。
まぁ、そんなに早くは出て来れないかな……。そう思ったけど特に何も言わずに浴室に向かった。
風呂から出てリビングに戻ると、そこに美那さんの姿はない。
お風呂が空いたと部屋まで伝えに向かったが、室内から話し声が聞こえたので、声をかけずにリビングに戻る。
使った食器を洗いながら、美織に声をかける。
「美織、そろそろ寝る時間だぞ」
「きょうは……にぃにとねる」
「もう少しで終わるから少し待っててくれ。歯磨き行こうな」
「はみがき……やっ!!」
見慣れた日常の1ページではあるが、1日の中で一番大変なのは歯磨きをさせる事だったりする。
食器を洗い終わり、無事ミッションもクリアしてベッドに潜り込んだ。
「美織、おやすみなさい」
「おやしゅみ」
ものの5分程で美織は眠りについたが、美那さんからの質問が頭の中でリフレインしていた俺はなかなか寝付くことが出来なかった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます