高校デビューのギャルと高校生にして一児の父の俺が織りなす物語
大崎 円
第1話高校デビューの一目惚れ
高校入学という人生において一大イベントとなるであろうこの日。
ありがたいお言葉を頂戴する退屈な入学式を終え、教室へ戻ってきた。
周りを見回せば、誰もが新しい出会いに胸を躍らせている。
地元から離れた高校を受験した甲斐もあり、クラスには同じ中学出身者は居ない。
とある事情から、友人らしい友人も出来なかった中学時代。
高校で求めるのは、平穏は日々であり友達ではない。
教室内は、近くの人に声をかけ自己紹介を始める生徒や中学時代の同級生と親しく話している生徒達で騒がしい。
俺は周りの喧騒を無視し、机に突っ伏す。
退屈な時間が過ぎるのを待とうとした直後、腕を突かれた。
そのまま無視を続けるが、一向に収まる気配はない。
仕方なく顔を上げ、突かれた方角を見やると隣の席の少女がシャーペンをひっくり返して今まさに突こうとしていた。
無言のまま睨むと、彼女はさっと手を引っ込め何もなかった様に平然と話しかけてきた。
「やっほー、イケメン君」
「…………」
悪びれもせず、第一声がこれだ。
非常識な態度からして関わり合いにならない方がいいだろう。
再度机に突っ伏そうとして更に声がかけられる。
「ちょ、ちょっと!?無視はなくない!?無視は!!」
無視して机に突っ伏すと、間髪入れずに再度腕に違和感。
この女は一体何をしたいんだ?流石に腹立たしくなり文句を言おうと顔を上げる。
「おい「初めまして、イケメン君!!私の名前は
文句を言う前に、聞いてもいない自己紹介に上書きされてしまった。
呆気に取られつつもその声の主を凝視する。
肩で切り揃えられた明るめの茶髪、薄っすらと化粧もしており、いかにも陽キャといった感じの少女だった。
「ねねっ、イケメン君も自己紹介してよ!!」
「あいにく、いきなり人を突っつく様な非常識な女に自己紹介する気はない」
話は終わりとばかりに、再度机に突っ伏そうとして肩を掴まれ妨害にあう。
「ちょっと!?私が悪かったから許してよ。君カッコいいから仲良くなりたいな〜って思っての行動なんだから大目に見てよ」
「…………」
「ご、ごめんなさい……」
「はぁ〜」
これ見よがしに大きなため息を吐く。
「ごめんなさい、反省してるので許してください」
「名前は教えてもいいけど、こういうウザ絡みしてくるの辞めてもらえるか?約束してくれるなら教えてもいい」
「ほんと!?うん、もうしません!!約束します!!」
どのみちこの後のホームルームで自己紹介あるだろうから遅かれ早かれ名前は知る事ができると思うが、一応約束を取り付けた。
「
「優希君ね!!私の事は亜依って呼んでね!!」
「断る」
「えっ!?」
心底驚いているが、初対面の異性をいきなり名前で呼ぶとか……そっちの方が頭おかしいだろう。
関わり合いになりたくないと思っていると教室の扉が開いた。
「ホームルームを始める、一旦席につけ〜」
ようやく担任のお目見えである。
40代ぐらいの見た感じからして厳しそうな男性教員でホッとした。
とある事情で、年上の女性が苦手になった俺にとっては、本当にありがたい。
「そっちの前から順に自己紹介をしていってくれ。そうだな……名前と趣味とか好きな事とか……なんか言いたいことあったらいい感じに付け足してくれ」
早速始まった自己紹介を、右から左に聞き流し自分の出番を待つ。
誰かと仲良くなりたいとかそんな気はさらさらないから、正直クラスメイトの名前とか覚えるつもりもない。
自己紹介はつつがなく進み、とうとう隣に座る彼女の番を迎えた。
「志岐亜依です。どうせバレると思うので先に言っておきますが高校デビューです!!中学時代までは地味な感じでしたが、高校では恋愛して楽しく過ごしたいです。好きな事というか趣味は自分磨きで、隣の席の優希君みたいなイケメンと恋がしたいです。こんな私ですが、皆様これから1年間仲良くしてください」
そう言ってぺこりと頭を下げる彼女だが、突然の告白じみた自己紹介に教室内は一気に騒がしくなった。
彼女を睨みつけてはみるものの、意に返した様子はない。
何のつもりだ?揶揄うにしても時と場合は考えるべきではないだろうかと思う。
恋愛なんてくだらない、俺は心の中でひとりごちた。
「嶺田優希です。嫌いなものは非常識な人間、波風のない平穏な高校生活を送りたいと思います」
意趣返しのつもりの自己紹介をしたが、彼女を見てもどこ吹く風といった感じなのが、鼻についた。
全員の自己紹介も終わり、これからの予定や今後の授業についての簡単な説明の後、今日のところはこれで終了の運びとなった。
クラスでは、早速放課後にクラス会を行い親睦を深めようと盛り上がっている。
俺にも声がかかったが、この後は予定があるので断った。
馴れ合うつもりはないし、俺には遊んでいる時間はない。
何故なら娘を迎えに行く日課があるのだから……。
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