BLIND BARD - DEF trip

晁衡

エピローグ 並行世界

 これは現在の歴史とは違う並行世界パラレルワールドである。



 アメリカ トルーマン大統領は1945年5月28日 原子爆弾投下目標都市選定委員会で

 京都市、広島市、新潟市の三都市に選定した。


 続く6月1日 京都市が古都であることから除外する方針が議論され

 6月14日に京都市が外された。

 その結果、投下目標都市は小倉市、広島市、新潟市となり、

 7月25日に最終的に「広島・小倉・新潟・長崎のいずれかの都市に8月3日ごろ以降の目視爆撃可能な天候の日に「特殊爆弾」を投下する」ことが決定された。


 アメリカ陸軍航空隊は8月6日に広島市に原子爆弾を投下

 8月9日に小倉市に投下を予定していたが、視界不良のため、第二予備目標であった長崎市に原子爆弾を投下した。


 つづく、8月12日に新潟市に三発目の原子爆弾が投下され、

 敗色濃厚とみた日本政府は、

 8月14日にポツダム宣言の受諾を連合国に通知し、

 15日に昭和天皇による終戦の詔勅により全軍に対して停戦の命令

 『終戦の詔勅』が発せられた。


 9月2日に東京湾に浮かぶ戦艦ミズーリ号で重光葵しげみつまもる外相により降伏文書が調印され、第二次大戦はここに終結した……




 ◇◇◇



 昭和20年8月12日 午後12時頃のことである。


 1機で飛来したB29 スーパーフォートレス 爆撃機を多くの市民が、その機体を不安そうに見て、空襲警報の元に物陰に隠れていた時である。


 高射砲が花火の様に何発が花火の様にパンパンと音が鳴り響く中で、

 上空約千メートルを猛スピードで弥彦山の方から接近してきた。


 高射砲はの爆撃機を追い、打ち落とすことは難しく、命中することも、かすめることも無かった。


 その爆撃機から投下された爆弾は、投下されてすぐにパラシュートが開く。

 投下された物体は、スピードを落として、ゆっくりと落下していった。


 空襲警報が鳴り響く中で、通りにいた市民は洋館などの影に急いで隠れようと走った。

 広島、長崎の特殊爆弾の噂が耳に入っていたからである。


 その悪い予感は的中した。

 マグネシウムをくような、もの凄い閃光が走り、視界が失われた。


 爆弾の方向を避けるようにコンクリートの影に隠れるもの、コンクリート建築物に逃げ遅れた子供や老人が走る中で、ドンというもの凄い爆風が辺りを襲った。


 そして遠く新発田や三条からも、凄まじい閃光を見て、モクモクと立ち上るキノコ雲を人々は見ていた。

 「新潟の街もやられたか……」


 ◇◇◇



 爆心地は新潟県庁付近


 萬代橋を走る車、

 県庁前に停車していた路面電車は火に包まれて、火だるまになって崩れ落ちる人達の姿があった。


 焼けただれてた死体、内臓が飛び出している子供

 重傷に焼けただれた人は崩れ落ち掛かった第四銀行本店や鍵三銀行に逃げ込むが、次々と息絶えていった。


 数時間後、駆けつけた赤十字の医師や看護師はなすすべもなく、ただただ亡くなる人達を見ているだけであった。


 軍医も衛生兵も無力感の中にいた。


 そして戦後、新たな街がその上に築かれていった。


 

◇◇◇


 令和2年4月 世の中は新型コロナウイルスの蔓延のさなかにあった


 佐渡金山の坑道跡の中


「ねえ、ほらあの人形、『なじみの女にあいてぇ』だってよ」

「うけるー、さっき売店でTシャツあったから、買う?」

「女の子がそれを着るの?変じゃん」

「ねえ、乃亜のあ、あなたもお小遣いあるでしょ」

香音かのんみたいにお金持ちじゃないわよ」

「西三川の金山でとった砂金ってどのくらいで売れる?」


 私(本間香音ほんま かのん)は同級生の宝剣ほうけん乃亜と、佐渡金山の展示物をみながら、たわいもない話をしていた。


 このコロナ禍がなければ、修学旅行はオーストラリアに行ってたはずだった。それが目的でこの学校にはいったのに、蓋を開ければこのザマだ。


 たしかに、佐渡ではおいしい料理がたくさん食べられたけど、なんか物足りない旅だった。トキも見ることができたけど、たった3日。楽しみにしていた修学旅行も終わりなのか。


 乃亜は家がお金持ちだから、海外には何回も行っているみたいで、佐渡をエンジョイしていたようであるが、私にとっては修学旅行は初めての海外になる予定だった。新型コロナが恨めしい


 ◆◆◆


 私(宝剣乃亜)は、修学旅行でほんの一時でも家から離れられることが、幸いだった。ウチの父は建設会社の重役で、おじいちゃんの代を継ぐ。

 父親は夜の街に出ては帰りが遅い、母との関係も悪く、家は殺伐としていた。


 父にはおそらく浮気相手がいるだろう。


 先日、マッチングアプリで知り合った男は50代の独身で転勤族。

 新潟市で金融関係の会社の支店長をしている。もちろん妻も子もいる。単身赴任である。

 この前は食事だけで、お小遣いを1万円ほどもらったが、また私に合いたいというラインが来ていた。


 あいつ日焼けしてマッチョでチャラい感じで、なんとなく気に食わない。

 だいたいウチは女子校だけど、私にだって彼氏はいる。いや、いた。


 でも彼は私立の学校でスポーツ推薦で県外の大学に行くらしい。


 私も早く家から出たい。

 私の偏差値では、とても国立は無理な話だ。

 親はなんとか私立の工科系の学校で土木工学の学科にねじ込もうとそする魂胆だろう。私は本当は美大に行きたい。だけどこの偏差値じゃねぇ……


 本間は、家がカトリックだからこの学校に入れられたが、本当は頭が良い子だからこの学校の期待の星だ。


 地元の国立大学か上越市の国立の教育大学が第一志望のようだ。

 あと1年で花音ともお別れか。

 折角、軽音楽部で仲が良かったのに。彼女はエレキギターで、わたしはベース

 花音と私はバイオリンを一緒にならっていたから、2人とも純正律の音感はあった。





 




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