第13話 『私の使命②』

  


  しばらく家を留守にする準備が整い。僕たちは朝七時に家を出る。

 山の中は静かで、僕たちの足音のみ響く。


 家を出て一時間ほどだろうか? 崖を飛び降り川を飛び越え、ようやく標高千メートル付近にまで下山してきた。ここまで来るとあと一時間程度で街が見え始めるので、少し休憩を取るために僕たちは湖で、大きな岩に腰を下ろしていた。


「どう? 結構険しいでしょ?」


「……うん、魔法少女じゃなければ死んでたかも!」


 僕が質問すると、引きつった笑みを浮かべていたクロネさん。……うん、僕もそう思うよ。


 ちなみにぷよよと魔女だが、二人で秘密の話があるからとその辺を歩き回っている。


「……みんながこんな風に笑い合いながら、平和に過ごしていけるような……そんな、そんな世界は……本当に今でも実現できると思っている?」


「……」


 不安、恐怖、悲しみ、それら全てが合わさったかのような表情でこちらを見つめるクロネさん。

 

「……どうだろう。僕は、今の世界には不必要な存在だからね」


 情けない話だなって、自分でも思う。


「そっかぁ〜。……ふふ! マリアさんもそろそろ世代交代ですか〜!」


 なぜか明るくなるクロネさん。というか僕が原初の魔法少女だと気がついていたのか……。


「……いつから気づいてたの?」


 僕が尋ねるとクロネさん俯きながら、もじもじと手を足を動かしながら答える。


「じ、実は最初の頃から面影があるなって思ってて……確定したのが夜中に電話で何かを話していた時かな?」


「えっ……聞かれてたんだ」


 素直に驚いた。あの時、既にクロネさんは眠りについていると思っていたのに。


「……僕だけ個人情報を知られてたのか……」


 僕、まだクロネさんの本当の名前を聞いたことないのに。


 ジト目でクロネさんを見続けていると、クロネさんは悪戯が成功した子供のように笑いながらゆっくりとこちらに近づいてくる。


「あ、あの? クロネさ〜ん!!」


「ん? なにかな?」


 なぜ向かい合って抱きついてくるのですか?


 僕の逃げ場を失わせるように、クロネさんは僕との距離をお互いの鼻が当たりそうなほどまで詰めてきた。


「あののの! 当たってます!!」


 抱きつかれているということは当然、クロネさんの大きな胸が当たっているのだ。


「違うよ? 当ててるんだよ?」


 そんなこと言われたら僕はどうすればいいのでしょうか?


 僕が困惑の余り思考を停止していると、クロネさんは僕の首を両手で優しく引き寄せ、そのまま――

 

◇◇◇ 


 あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか。数十分? それとも数分数秒?


「ぷはっ……ご馳走様でした!」


 唇を離し小悪魔のような笑みで唇をなぞり、発するその言葉に酸欠の僕は体を震わせて反応することしか出来ない。


 そんな僕の様子を無視して、クロネさんは先ほどの柔らかい目から真剣な眼差しに変えて僕に向けて話しかける。


「私ね、夢を見たんだ。……貴方の彼女さんになって一緒に世界を救おうって約束する夢」


「……」


「でも、そんな淡い希望は叶わなかった」


 酷く冷たい声で放つ言葉は、一つ一つ僕の胸に刺さる。


「私は、みんなを救いたい。……その願いは変わらないけど、あの夢を見て、私の中に存在するもう一つの答えに辿り着いたの」


 彼女は一度、深呼吸をして僕に告げる。


「私は一人魔法少女としてじゃあなくて……貴方に救われたとして、貴方の全てを支えたい」


 だから、と彼女は続ける。


「こんなところで正義の魔女に負けることはできない。……私は精一杯のことをする。……全ての魔女を救って貴方を救い出すために」


 クロネさんは僕にもう一度キスをしてから宣言する。


「私、クロネ・アールの……ううん、白崎 夜空としての願い使命。……必ず、貴方を救ってみせる! ……だから、覚悟しててね!」


◆◆◆


えっ? 前までの続きではないのかって? ……流石にボス戦までに話が脱線し過ぎt……げふんげふん。……ま、まぁ、遅かれ早かれ明かすと思うので、もうしばらくお待ちください。


そんなこんなで毎日投稿頑張る日々が続くと思いますが、多少のズレはご容赦ください。 明日は新作の準備をかねて、こちらの作品を一日お休みするつもりです。


新たな新作を作ろうとした理由もかねて! 次回は『余談2』です! 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る