第2話 幼少期と小説投稿サイト

 さきに小さい時期のことについて書こうと思う。

 僕は算数百点。国語五十点。という感じの子だった。

 自分の意見を書くのも苦手だし、特に漢字を書くのが壊滅的だった。

 漢字が書けないので、意見を書くときに字がわからなくて時間が掛かってしまう。

 そうこうしているうちに時間が切れる。

 現在のPCでは手で漢字を書く必要がなくなったので、違う意味で克服された。別に手で書けなくてもほぼ困らない。自分の名前と住所くらい書ければいい。

 英単語のスペルを覚えるのも同様に苦手としていた。これはプログラミングを通じて多少改善されたものの、いまでも翻訳サイトが欠かせない。

 Hello のスペルもあやふやなほどだ。でもまあなんとか生きている。


 一方で、工業高校出身なのもありPCで文字を入力するのはワープロ検定準2級レベルであり、そこそこの速さでできる。

 だから小説を書くハードルの一つ、文字入力が辛いということはなかった。

 もっとも今ではスマホで書く人もいるし、自分も短編などはスマホでぽちぽちして完成させることも少なくない。


 それで統合失調症で引き籠っていた生活の後のことを話そう。

 相変わらず家に籠っていたが、小説投稿サイトを読むようになった。もともとライトノベルの文庫は以前からそこそこの数、ずっと読んでいた。

 高校生の時にはインターネットがあったので、個人の小説サイトを読むこともあった。王宮ものなどを読んだ記憶がある。

 それが徐々に小説投稿サイトへとシフトしていく。

 読んでいたら、自分も書ける気になる。

 ということで、小説を書いてみることにしたのだ。


 実を言えば、中学生の頃にも原稿用紙三枚分くらい二次創作の小説を書いたことがある。アイディア出しやそれ以前に適切な文章を組み立てるのさえ困難だったので、すぐに頓挫してしまったけれど、源流としては昔から少し小説を書くことにも興味があったのだろう。


 それが大人になってライトノベルと小説投稿サイトを読むという行為でもって、日

本語力は確実に上がっていた。

 もともと日本語が得意な人には関係ないのだろうが、自分には「文化との触れ合いと吸収」は重要な行いだったと思う。

 経験から学ぶのではなく歴史から学ぶという言葉もあるように、他の人の文章を読むことは、大いに自分を成長させたと感じている。


 それから小説投稿サイトで、ファンタジーの資料集を作って公開した。これは十五万字を超えるものにできあがり、今でもそれなりの評価を得ていた。

 実を言えばレポートを書く適性が少しあるらしく、昔、いい評価を貰ったことがある。

 小説よりも資料のほうが得意かもしれない。

 そしてぼちぼち小説も書いていく。

 異世界ファンタジーが流行っているらしいと聞き及んで、それを書いたり、VRMMO小説を書いたりして、結局五年ほど経過していた。

 最初の作品はいわゆる底辺作品であったが、VRMMO小説は千ブクマ程度のプチヒットを飛ばし、自信をつける結果になった。

 ランキングにも少しだけ載った。

 そうしていくつかの小説を書いていく。

 ただし、自分には書く時期と読む時期があって、通年を通して書いていたわけではなかった。

 いつかはヒットを飛ばして、書籍化という夢も見てみたいとはぼんやり思っていたものの、それは宝くじを当てるようなものと考えていたので、自分には無理だろうなという諦めも同時に感じていた。

 このころは本当に呑気だった。


 状況に変化があったのは、父親が癌になったころからだろうか。

 親がいなくなるというのは、引き籠りニート枠の精神障害者には、その後ろ盾を失うことを意味していて、とても重要なことだった。

 まだ母親が健在なので、かろうじて無事でいられるが、そのうち困ることになる、という危機感を募らせることになったのだ。


 さていつかヒットを飛ばしたい。次こそは。

 三万文字くらいでボツにした小説は実はたくさん書いてきた。

 十万文字を超えて完結させられる小説をしっかり書くのには、それなりに根性が必要とされる。

 すでに何作か十万文字小説を書ききり、そこで一度力尽きて、次を考えた。


 主人公の性別はどうしようか。やはり異世界転生だろうか。

 底辺から成り上がるのがいいだろうか。

 スローライフがいい。

 そういうことを考えて、小説を書いていく。


 一度書いても、半年以上眠らせたり、いきなり続きを書いたりしたこともある。

 もう無理だと思って眠らせても、ある日続きが書けそうな気持になることがある。

 そういうときに、ばばばと書いてしまう。

 それで乗り切ってきた。


「自分には何もない」


 と思っている人は多い。

 でもね。そんなことないんだ。

 個人個人にこだわりや好き嫌いはある。

 そういうのを並べて選んで、文字列をつづっていくと、小説というのは書けるものなんだ。

 最初は結構難しい。でもやっているうちにできるようになってくる。

 好きこそものの上手なれ。

 流行りすたりはあるので、ヒットのしやすいジャンルなどは当然ある。

 どこまで流れに乗りつつ、自を出すか。そこが作家に問われている。

 最初は駄文垂れ流しでもいい。

 でも、どこが他の人と違っていて「おかしいか」考えたり、どこが自分の「強みか」考えたり、と少しずつブラッシュアップさせていけばいいんだ。

 そうやって次に書いたものがもっと良くなれば、いつかは自分の番がくるかもしれない。


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