放浪艦隊へ捧げる鎮魂歌
@misaki21
第1話 ハイブリットヒューマン - Hybrid Human -
――繰り返される疑問。生命とは何か? 人とは何か?
それらは即ち「状態」である。
生命とは単に事象の揺らぎ、波動の一滴に過ぎず、そもそもその存在に目的などない。
高所から低所へ、密から疎へと漂う揺らぎの流れ。
また、神の座を降り近視眼的立場で語るなら、人は模倣を次々と産み落とすための生殖装置である。ひたすらに複製を繰り返すだけの、闇雲な、或いは些末なからくり。
だがしかし、生まれ落ちたままの姿の人は、決して機械ではない。何故なら、機械とは常に目的を持って産み出されるものであり、無目的である人の対極に位置する。
機械には人が持つ感情、即ち喜怒哀楽や利害の概念はなく、その身に起こり得る全てを余すこと無く受け入れる。
機械は、感情と、そして何より自我を持たないことでそれを実現し、それゆえに機械は人とは隔たった場所に位置する。
何より彼らは、自身が機械であることを知り得ない、永遠に。
人の世のさまざまな不幸はこの、人の人たるゆえん、感情に起因する。
感情、それは拡大された本能であり、増え続けるためのさまざまな方法である。生存に有利な環境、生殖を支える物質的豊かさ、そういった感情のせめぎ合いは結果として不幸を生み、しかしそれとて人の一部であろう。何故なら、その根元たる感情こそが人そのものなのだから。
もしも人が感情を捨て去り、あらゆる全てを受容することが出来たなら、人による人への災厄、つまり地上に起こる全ての不幸は姿を消すかもしれない。
打算なき受容、それは愛と呼ばれる。
人が愛を得るにはその感情を捨て去る必要がある。愛、即ち、打算なき受容を実践するのならば、人の持つ様々な感情は余りに大きな障害である。
人は、波動の雫として滴(したた)り、愛を得ることにより限りなく機械に近い、人となる。
自我を持ち、感情を排し、愛を得た人。自らが限りなく人に近いと、その自我により知る、機械。
果たして、それこそが神なのだろうか?
否! 「彼ら」は「我々」をこう呼んだではないか……「合成人間(ハイブリットヒューマン)」「ハイブ」と!
(解放宣言より抜粋)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます