第22話 ダンジョンの基礎


『デハ、マズハ、ソノスイショウニマリョクヲトオシテクダサイ』(では、まずは、その水晶に魔力を通してください)


「わかった」


 水晶に近寄り、軽く触れ、魔力を通す。


「おぉ」


 すると、このダンジョンの全てが手に取るように分かる。全ての情報が一気に脳内に流れ込んで来たのだ。そして、1階層からここ、1000階層までの構造もイメージ出来る。


 どうやら、ウィンドウとして表示することも可能らしく、ヒュウランとフェンにも見せるべく、ウィンドウとして表示する。


 試しに1階層にフォーカスすると、1階層の地図と出現魔物、が表示され、また、その魔物たちの行動等設定出来るらしい。


「フェン、あなたこれ、1人で1000階層分作ったの?」


『ダンジョンノ、コウゾウジタイハ、アルジガキメタ。ワレハ、カルクイジッタダケ』(ダンジョンの構造自体は、主神あるじが決めた。我は、軽くいじっただけ)


「あ、そうなの。さすが主神あるじね」


 こいつら、あいつを崇拝しすぎだろ。そんな、崇拝されるような性格してないはずなのに。


「俺の方からいじるところは特にないな。ダンジョンの難易度を難しくしたり、簡単にした際のメリットデメリットを教えてくれ」


『シゴクカンタンナハナシダ』(至極簡単な話しだ)


 フェン曰く、まず大前提として、このような上級ダンジョンは外部からの新入者や内部に棲む魔物達が戦闘することによって、生まれたエネルギーを、とある力……ダンジョンポイントという物に変換する。

 その、変換されたダンジョンポイントというものを使い、ダンジョンを成長させる。階層数を増やしたり、魔物の質をあげたり。


 そして、本題のメリットデメリット。難しくしすぎると人が寄り付かなくなり、ポイントが増えない。簡単にしすぎると、簡単に攻略されてしまい、ダンジョンマスターの座を奪われるまでに発展する場合もある。


 と、これは上級ダンジョンの話しだ。上級ダンジョンとは、神が製作し、自分の作った使いに運営を任せる。今回のフェンがいい例だ。


 下級、中級ダンジョンは少し違う。上級ダンジョンは誰かが運営しているのに対し、初級、中級はダンジョンが意志を持って動いている。


 じゃあ、どうやってダンジョンが生まれるのか。周りの魔力が濃いとダンジョンは、自然発生する。この街がダンジョン都市と呼ばれるのは、俺が近くの山に棲みついていて魔力が垂れ流しにされていたために発生したらしい。


 そして、そのダンジョンを狩場にするかのように人々は近くに集落を作った。それが成長し、街になり、ダンジョン都市と呼ばれるようになった。


 これがダンジョンに関する簡単な知識だ。もちろん、他の人間たちはこの情報を知らないらしい。


「なるほどな。じゃあ別にいじる必要は感じないな。じゃあ帰るか」


『チョットマテ。ダンジョンヲコウリャクシタショウメイヲキロクスル。ボウケンシャショウヲダセ』(ちょっと待て。ダンジョンを攻略した証明を記録する。冒険者証をだせ)


 俺とヒュウランがフェンに冒険者証を渡すと、咥えたまま水晶の方へ向かっていった。


 後をつけると、フェンは水晶の中に冒険者証を水晶に触れさせていた。水晶に触れると、冒険者証は飲み込まれ、数秒もすれば出てくる。


「……何をしたんだ?」


『ボウケンシャショウハ、スイショウトレンドウシテイル。コノヨウニスレバコノダンジョンヲコウリャクシタコトヲダレモウタガワナイ』(冒険者証は水晶と連動している。このようにすればこのダンジョンを攻略したことを誰も疑わない)


 なるほど。便利なものだ。ギルドの方で、それを読み込む技術があればの話だが。


「じゃあ別に俺らの強さをわざわざ証明する必要はなかったんじゃなかったか?」


「でも冒険者証は必須よ。どちらにしよ、彼らの絡まれてるし、運命と言うやつね」


「なんか腑に落ちねぇが、まあいいか。帰るぞ」


「そうね。フェン、行くわよ」


『チョ、チョットマテ。ナニヲシテイル?』(ちょ、ちょっと待て。何をしている?)


「何って、来た道を戻るのよ」


「そうだぞ。全力で走れば全然時間はかからないし、うだうだ言ってねぇで行くぞ」


『ソ、ソンナコトハヒツヨウナイ。ダンジョンマスターノ、ケンゲンデ、ソトニデレル』(そ、そんなことは必要ない。ダンジョンマスターの権限で、外に出れる)


 あ、そうなんだ。でもさっき、フェンはそんなこと教えてくれなかったな。


 まぁとりあえず出るか。


「……どうやってやるんだ?」


『………。スイショウニテヲアテレバ、ワカル』(水晶に手を当てれば分かる)


 ……ふむ。なんか、外に出れそうだな。


「ヒュウラン、フェン。俺に触れていてくれ。じゃなきゃ一緒に出れないらしい」


「分かったわ」


『リョウカイシタ』(了解した)


 ヒュウランは俺の右肩に触れ、フェンは俺の頭に乗ってきた。……うーん、頭に乗るのは違くないか?


 ――シュッ


「……外、だな」


「外、ね」


 なんとか、無事に出られたらしい。

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