第11話 ルーティーン化成功→安定した成長を遂げる人材へ
まずは【エリアN】のアプリを起動し、ダンジョンへと転移する。
そうすると、第一階層のいつもの白の台座に転送されるので、廃墟を進み、例の地下階段まで駆け抜けていく。
途中には脚魚(正式名称レッグフィン)や蛇足(正式名称レッグコブラ)などのモンスターがいるので通りすがりにキックやパンチで倒しつつ、地下への階段を駆け下り電撃スライム(正式名称ライトニングスライム)がいる暗闇の広間へと到着。
途中他プレイヤーの姿を見かけたけれど、こっちには気付いていなかったようなのでそのままスルーしてレベル上げルーティーンを続行。
たまにプレイヤーの姿を見ることがあるんだよね。
その場合はコース変更して出会わないようにしたりして接触は相変わらず避けている。レベルもクラスレベルが【初期アバターLv38】と結構上がっては来たけど、念のため。
それにレベル上げのルーティーンが中断されるのもいやだしな。こういうのって始めたら最後までやりたいものだよね?
という感じに地下に到着したら、ライトニングスライム達を今度は狩っていく。
今では【暗視スキルLv4】のおかげでスライム他モンスターの位置がはっきりわかるので、それらを倒しながら進み、地下広間にいる他のモンスターも倒しながら、地下空間の一番奥の黒い台座へと向かう。
「一時間半か。悪くないタイムだ」
黒い台座に到着したところで入ってから一時間半が経過。
ちょっと休憩して、モノリスと大理石の台座に乗り、別の場所へと転移する。
転移先の場所は――。
「この場所もいいよなあ。ファンタジー感あって」
石造りの砦の中の一室だった。
窓のない大きな部屋には槍や剣が置かれた武器スタンドがいくつもあり、壁には盾がかざられ、悪魔っぽい山羊の頭の飾りや、怖い顔をした悪魔の像なども置いてある。
悪魔の砦、って感じの場所だ。
重たいドアを開けると廊下に出るが、そこも幅広で天井も高く、『めっちゃ長い部屋』のよう。やはり悪魔の像なんかが置いてあるし、天井からぶら下がってる照明は紫色に怪しく光っている。
そして通路の奥からは、角の生えた小さい翼を持つ悪魔が数匹歩いてきている。
もう間違いなく悪魔の砦でしょうこれは。
悪魔達は俺の姿に気付いた。
彼らの名前は【レッサーデーモン】。
ザ・ファンタジーモンスターって感じで好き。
脚魚よりアガるよな、やっぱりこういうモンスターの方が。
レッサーデーモンは俺の元へ爪をギラつかせながら向かってくる。俺もレッサーデーモンの元へ一気にスピードを上げて駆ける。
俺の速度に対応できなかったレッサーデーモンの背後をとることに成功する。
四匹いたデーモンが振り返っている間に、次々と背中に拳をたたき込む。
吹っ飛んで壁に激しく激突したレッサーデーモンは一撃で消えて光となった。
その中の一匹は消えた跡に角をドロップアイテムとして残したので、拾っておく。それも消えて光となり俺の経験値となる。これも忘れずにやらないとな。
何度かある分かれ道を曲がりつつ通路を進みながら、その通路から入れる食堂、倉庫、ギャラリーなどにも入ってモンスターを倒して行く。
そうやって悪魔の砦を進んで行くと、突き当たりに一際大きな扉がある。
だがそれは開く扉ではなく、開けようとすると扉に仕込まれた魔法陣が発動して別の場所に転移する。
豪華な扉なのに開くんじゃなく転移するのがちょっともったいない感じがするけど、まあそれはともかく、その扉からはグラウンドのような屋外の場所に転移する。
そしてここが最重要ポイントなのだが、そこには【グレーターデーモン】【オーガチャンピオン】【サブナク】など他より高ランクのモンスターが出るので経験値大量獲得チャンスなんだ。
ここで高位のモンスターを大量に倒し、ガッポリ経験値を稼いで俺のレベル上げルーティンは終了となる。
あとは来た道を引き返して、ダンジョンから出れば今日の日課は完了だ。
俺は扉に手をかけ、力を込めて押し開けようとした。
同時に光が溢れ、転移する時特有の景色がモザイク状になることを体感し、次の瞬間には俺の体は別の場所へとワープしていた。
曇り空が見え、土の地面がある場所に。
周りは高い壁の上の観客席みたいなものに囲まれているコロシアム風の場所なんだけど、ここに入るとモンスターが地面からマグマがボコボコ言うみたいに沸いて出てきて……って、
「え? なんでもうすでにモンスターが?」
湧いて出てくるはずなのだが、なぜか俺が来たらもうすでにモンスターがそこら中に出現している。
なんでいつもと違うんだろう?
「ぅあああああああ!」
なんの声!?
聞こえるはずのない人間の悲鳴が聞こえた。
俺は声の方に振り向く。
「人が?」
そこには、満身創痍の女魔法剣士がいた。
鎧には赤い血が模様を作り、肩を上下に揺らす様子は、かろうじて立っている状態に見える。
俺の角度からは顔ははっきりとは見えないが、青みがかった銀色のツインテールが肩で息をするのにあわせて揺れている。
本当にファンタジーの世界の住人みたいだ、そんなプレイヤーもいるんだなあ。
って、そんな暢気に感心してる場合じゃない、どうしてここに他のプレイヤーが?
いや、それよりこのままだとモンスターにやられそうだ、助けた方がいいんじゃ。
……でもできれば他のプレイヤーとは関わりたくないんだよな。
前に会ったプレイヤーは友好的じゃなかった。むしろ威圧してきた。俺の初期アバターの格好も、見られたら初心者だと思われて鴨にされる恐れがある。
とはいえ――その女魔法剣士は、明らかにモンスターの集団に苦戦、というか一方的にやられている。このままじゃライフが尽きるのはすぐだろう。むしろ、まだライフが残っているのが不思議なくらいだ。
今はまだ残っているライフが、ダンジョン内でライフが、もし0になったら――。
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