第62話 乱入者
危なかった。
後で回復できるといっても、限度あるしな。
特に火傷は。
いくら負傷は冒険者の宿命と言ったって。
あまり女が炎に巻かれるような。
そういう光景は見たいとは思わないから。
助けない選択肢は無かった。
そんな俺に
「タケミ、ありがとう」
礼を言い忘れた的な後付けだったけど。
リンからの感謝の言葉。
まあ、悪い気はしない。
戦意が高揚する。
その勢いで俺は印を結び、詠唱する。
「ダートルド ギバール オンローバー!」
そして氷嵐の魔法を、アジ・ダハーカの炎の首に叩き込む。
炎の首をすっぽり覆うような範囲に、吹き荒れる氷の嵐。
冷気の風と、氷の渦。それが炎を吐き出す竜の首を攻撃する。
ギオオオオオッ!
首が、暴れる。
そこに
「これ、暴れるな」
アジ・ダハーカの足に、全力で魔神の戦斧を叩き込むおやっさん。
その一撃でアジ・ダハーカの太い足が吹っ飛んだ。
足を失い、バランスを崩す三つ首竜。
その流れで。
氷嵐で傷つき、床に横たわる竜の首。
今なら首に上段斬りを叩き込める。
そのチャンス。
俺はそれを見逃さない。
阿修羅の相を、斬撃強化に切り替え、俺は八相で踏み込み。
炎の首を鉄斬で斬り落とした。
ギュアアアッ!
残り2つの首が暴れる。
「吹雪の首はッ!?」
「中央!」
リンの言葉に俺は
「ありがとう!」
礼を言って、突っ込む。
中央の首……吹雪の首は俺のそんな様子に反応し、迎え撃つべく地面スレスレに移動し、その口腔を開いた。
舌の無いその口腔を。
そんな口腔を開いたんだ。
吹雪を……吐くために。
苦痛があるに違いない。
その覚悟は見上げたもんだ。
……けれど。
ブオオオッ!
吐き出される吹雪。
だがそれは……俺には一切通じない。
戦鬼陣羽織を身に付けている俺には、冷気は一切通じない。
実に申し訳ない……!
そのまま、竜の首の口腔内部に突っ込み、その上顎から突きで脳みそを貫く。
その瞬間、この首の命は「絶えた」
これで、残り1。
酸の首。
……勝機が見えてきている。
ほぼ勝ち確。
そう思った瞬間だった。
……この部屋の壁の部分の空間に、歪みを見た。
そして
そこから、燃え盛る人影が、この宝物部屋に侵入してきたんだ。
身長4メートル程度の、燃える巨人。
手には同じように燃え続けている大剣を持っていた。
「……これは……!」
ミナが驚きの声をあげる。
それにエンジュが応じた。
「……これは。ミナの話とこれまでの流れで予想ついとったけど……」
ここで一旦言葉を切り。
こう、続けた。
「火の邪神・スルトやな」
……スルト!?
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