第60話 武芸者

「先ほどの斧……相当な魔法の業物と見た……どうだ?」


 ジュピターは語り掛けながら、俺たちの傍に竜巻を発生させる。

 これは魔法ではなく、ストームジャイアントの固有能力らしい。

 厄介だな。全く。


「なかなか鋭いな。この国の神宝レベルの業物だよ」


 竜巻を回避しながら、俺はジュピターとの距離を詰める。


「ほほう、それは光栄。そんな貴重な武具を味わうことが出来たとは」


 言いつつ、雷を吐き出す。

 そしてそれを回避する俺。


「……私も、生前は伝説級の武具を保有していた。ジュピターブレードと名付けていたが」


 懐かしそうに語りながら、凄まじい突風を吹き付ける。

 吹き飛ばされないように踏ん張りながら


「いや、自分の名前を自分の愛剣に付けるのはダサいだろ!」


 そう、突っ込むと


「家臣の男にもそう言われたよ!」


 ジュピターは笑顔で前蹴りを繰り出してきた。


 ……巨人の前蹴りはダメージが洒落にならないから、踏ん張るのをやめて俺は後ろに跳んだ。


「せめて邪神スルトを斬り殺した剣なんだから、スルトキラーにしろってね!」


「なるほど!」


 ……遊んでる場合じゃないんだが。

 俺はこの巨人との戦いが楽しくてしょうがなかった。


 ……俺はそんなに武芸者の自覚は無かったけど。

 そういう要素をどうも、持ち合わせていたみたいだ。


 まともに生きるには……厄介な性癖。


「ワシが置いてけぼりじゃのう!」


 ジュピターの死角から、おやっさんの斬撃。

 武器の性格上、力まかせになりがちで


「これは失礼したドワーフの男よ!」


 おやっさんの斬撃を躱して、躱しざまに電撃を置いていく。

 おやっさんはその直撃を受けた。


 電撃の衝撃で、おやっさんは動けなくなる。


 そこに


「貰ったぞ。人間よ!」


 言って、力任せの鉄槌打ちをおやっさんに振り下ろした。

 そこに俺は踏み込んで。


 大上段からの斬撃。


 鉄斬を繰り出す。

 ジュピターの右腕に。


 ……俺は、阿修羅の相を斬撃強化にし、上段からの斬撃のとき。

 鉄斬を出すことが出来る。


「セッ!」


 俺の剣は、ジュピターの右腕を小手ごと綺麗に切断していた。




「おおお……見事だ」


 ジュピターは、血液の噴き出す右腕を押さえながら、俺を賞賛する。


「……その刀も、業物なのだな?」


「ちょっと違うな」


 鉄斬は、俺の技だ。

 武具の力が無いと成立しないが、誰でもできるわけじゃない。


「業物には違いないが、それだけでこの芸当はできないよ」


 そこはハッキリさせておきたいから。

 すると


「失礼した」


 ジュピターは失言を侘び。

 そして


「介錯を頼む」


 ……利き腕を失って、武具も無く。

 よくは分からないが、多分雷のブレスや風の操作なども、出血で支障をきたすんだろう。

 そうじゃなきゃ、多分こいつは仕合を投げないな。


 だからまあ、俺は


 しゃがみ込んだストームジャイアントの首を、阿修羅で刎ねた。


「あばよ。嫌いじゃなかったぜ」


 そう言いつつ。

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