第33話 魔王戦で何があったのか
夕刻。
いやもう、夜に差し掛かってるのかな。
俺たちは冒険者の店に居た。
そこで、テーブルを囲み、話をはじめようとしていた。
ミナの話を。
……正直、周囲の目が気になる。白と黒の同席だし。
だけど。
これは、そんなことを言ってる場合じゃ無いよな。
「……さあ、話して貰おうか」
エリオスが無表情でミナを促した。
親し気ではない。
事務的にって感じだ。
ミナはそんなエリオスの言葉に、小さく頷いて話し始めた……。
―――――――――――
「……あと一息ですわ」
私は目の前の魔王のメイスの攻撃を盾で受け止めながら、仲間を鼓舞しました。
……魔王。
悪魔の最高位。
その姿は下半身を法衣の様な腰巻で身を包んだ、筋肉凄まじい成人男性。
ただし、腕は4つあり、それぞれに剣、斧、メイスを握っています。
肌の色は深紅。そして頭は禿げていて、黒い牛の様な角が2本生えている姿です。
こいつを倒せば、少なくとも2年の平穏がこの国に訪れます……!
「カーテル デンジ ステル アンチェン」
「麻痺の空気が来る! 息を止めろ!」
魔王の魔法詠唱を聞き取り、すばやく魔術師のチャラオウさんが指示を出しました。
魔王は4本の腕のうち、3つは武器を持ち、残り1つで常に印を結んでいるのです。
なので、魔法を使う際の予備動作が極めて少ないです。
……とても、助かります!
私はチャラオウさんに感謝し、息を止めたまま、魔法詠唱の隙に一気に攻め込みます。
……私の剣が、魔王の印を結ぶ腕を切断し、斬り飛ばしました!
「マナ デンジ エノカルフ ベクタ!」
そこに間髪入れず、チャラオウさんが魔力魔法第7位階の念動力の魔法を唱えました。
詠唱が終わると同時。
念動力の風が巻き起こり、麻痺の空気を拭き散らします。
「どりゃああ!」
「やあああ!」
麻痺の空気が晴れたので、私の左右から、ヤリマーンさんとアバズレンさんのツープラトンの大金槌、大戦斧の攻撃。
2人の重い一撃が、魔王の腕を2つ、叩き潰し、そして斬り飛ばします。
……ここで、決めます!
私は腕を3本失って、怯んでいる魔王の首を狙い。
必殺のヴァルキリーソードによる横薙ぎを放ちます。
そして
ザンッ、と首を刎ねました!
魔王の首が胴から離れた瞬間。
グアアアアアアアアアアアッ!!
彼の口から、凄まじい断末魔の叫びが放たれたのです。
やった……!
魔王を倒しました……!
私が斬撃を放った姿勢でその喜びをかみしめていると
「ミナ、ヤリマーン、アバズレン。ご苦労だった」
パーティーリーダーの神官・マオートコさんが私たちを労ってくれます。
彼はとても気遣いできる人です。
パーティメンバーとしてもそうですし。
チャラオウさんとのツープラトン時でも
ここがいいのかな? とか
ここがキミの弱いところか、とか。
私たちのことをすぐ見抜いて、チャラオウさんと息を合わせてくれるんです。
そんな彼が、一番の功労者として私たち前衛を労ってくれるのはごく自然なことでした。
「さあ、その黄金の魔晶石を拾って帰ろうか。……国王陛下からご褒美が待っている」
サングラスの位置を直しながら、そうやさしく呼び掛けてくれました。
私が首を刎ねたので、首の部分が変化したその黄金の魔晶石を拾い……道具袋に仕舞います。
そして
「さあ、帰りましょう」
そう、チャラオウさんに呼びかけると
チャラオウさんは私を拝むポーズをとって、こう言いました。
「あ、ゴメン。転移の魔法は打ち止め。ゴメンねミナちゃん」
……しょうがないですね。
歩いて帰りましょうか。
そう思い、私は魔王の死体に背を向け、ドアに向かって歩き出し……
……?
そこで違和感に気づきました。
……頭がすでに分解し、魔晶石を残して消えているのに。
何故、身体の方が残ってるの?
困惑し、凝視します。
……そのときでした。
なんと……首を刎ねられ、腕を3本潰された死体が動き出し……
立ち上がったんです。
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