俺は神剣を求めダンジョンに潜る
XX
1章:2人きりの迷宮探索
第1話 俺と相棒
この国には300年前に魔王が召喚された。
その影響で出来た魔界の穴という名のダンジョン。
当時は恐怖の象徴だったそうだが……
今は……
俺は、相手の骨剣の上段真っ向斬り下ろしを、手に持った愛刀「阿修羅」で受け流しながら踏み込んだ。
受け流す構えはそのまま振りかぶる姿勢になる。
そして
刃が風を切り、袈裟斬りの斬撃を浴びせる。
ザバッと相手の身体を構成している骨の一部を斬り飛ばす。
……俺の相手……ボーンデビルはそれでは怯まない。
こいつ、恐怖が無いもんな。
ボーンデビル……魔法生物だ。
複数の生物の骨を素材に作り出した魔法生物。
全体的なフォルムは大きな人骨だけど。
腕が4本ある。
そしてその4本の腕に、骨で出来た剣が備えられている。
……こいつ。
実質四刀流なんだよな。
攻めづらいったらありゃしない。
仕方ない。
俺はバックステップで距離を開け
刀を持たない左手で印を結び
「ハリ ムドーラ マハル ジーオ!」
火球爆裂の魔法語を唱えた。
詠唱が完成すると同時に、俺の眼前に火炎の球が発生し、真っ直ぐに突っ込んでいく。
火球爆裂……第4位階の魔力魔法で、破裂し広範囲を焼き払う火球を生み出す魔法。
……俺は本職の魔術師じゃないから、第4位階の魔法は1日5回までしか使えない。
で、今説明した通り、本来は広範囲を焼く魔法なんだ。
ボーンデビル1体に使うのは……正直もったいねぇ。
だけど、これくらいしか怯ませる方法思いつかなかったんだよ。
俺の眼前で火球が破裂。
轟音を立てて、ボーンデビルを焼く。
同時に俺は動き出した。愛刀は下段に構えて。
ボーンデビルは衝撃に耐えるために、4本の腕をクロスして身構えている。
それを爆炎が晴れた瞬間確認し、俺は更に地を蹴り真横に回り込んで切り込む。
ヤツの対応が一瞬遅れた。
俺の火球爆裂の威力、悪くは無いはずだ。
本職じゃないけど……俺は……侍の職業に就く者は、精神修養の一環で魔力魔法の勉強はしてるからな。
素人の真似事では無いんだよ。
俺の斬撃。
胴薙ぎ。
俺の刀はそのままボーンデビルの背骨を切断する。
それが致命打になった。
ボーンデビルを構成していた生物の骨が、バラバラに分解し、崩れ落ちた。
……ふう。
いっちょ上がり。
昔は恐怖の象徴だったダンジョン……
今はこの通り。
俺のような冒険者が一山当てるための場所になってる。
俺の名前はタケミ。
世界で一番繁栄している種族・ヒュームの男。
年齢は28才。職業は侍だ。
俺は今日も魔界の穴の最下層で、相棒と一緒に宝探しをしている。
ここで得られる素材や宝物を売り払うだけで、食べていくのだけは余裕なんだよな。
俺は面倒な相手、ボーンデビルを受け持ったんだが。
相棒の方はどうだろうか……
骨の山になったボーンデビルを見届けたので、俺は相棒の戦いの方に目を向けると
「タケミ! 手が空いたなら手を貸して! こっち手が足りなくなった!」
相棒……エルフの女忍者リンに助けを求められた。
かなり必死だ。切羽詰まっている。
彼女は分裂能力を持つ魔物……グレーターデーモンを相手にしてたんだけど。
何やってんだよ。
養殖し過ぎたのか……?
欲張り過ぎだろ。
手が足りなくなったってことは、10体以上に増やしたのか?
グレーターデーモン……青白い鱗の身体と捩じくれた角を持つ有翼の悪魔。
第5位階までの魔力魔法を使い、その爪に麻痺毒を持つ化け物。
それだけでも大変なのに、こいつは戦闘がはじまると分裂して手数を増やす習性があるんだ。
俺たちはそれを逆手にとって、素材稼ぎを目指していたんだが……
さては……調子こいたな。
慣れって怖いよな。
本来はメチャクチャ危険な魔物なんだよ。グレーターデーモン。
……まあ、助けよう。
相棒だもの。
俺は、グレーターデーモンの大群に向き合っている金髪の黒装束の後姿に駆け寄り、愛刀を構えて斬り込んでいった。
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