能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。
暇野無学
第1話 巻き込まれたのかよ!
ちょいと読み直して見れば、大小のチョンボがチラホラ見えて手直し中。
簡単な手直しですが、手直し済みには(*)の印を付けておきます。
* * * * * * *
やれやれ、見渡す限りの大草原で、本当に日本じゃない様だ。
ティナと呼ばれた女性が教えてくれた言葉が思い出される。
創造神アマデウスの世界、ティナ自身もアマデウスを補佐する存在として造られ彼に仕えているのだと。
何か胡散臭い名前で、今一信憑性に欠けるが夢とは思えない。
話の流れからすれば、あの馬鹿共の召喚に巻き込まれたと思われるが、ラノベやアニメじゃ在るまいし大迷惑極まりない。
* * * * * * *
キャンプブームも終わり、のんびりとソロキャンを楽しんでいるのに、馬鹿は何処にでも湧いて出る。
真っ昼間から酒を呑んで馬鹿騒ぎ、陽が落ちて暗くなると花火を始める糞共で、あろう事か俺のテントに向けてロケット花火を射ち込みやがった。
流石に俺もぶち切れて、俺を指差して馬鹿笑いする奴等の所へ行くと、酒臭い息を吐きながら俺の前に立ち塞がった餓鬼の横っ面を張り倒した。
「糞ガキ共が、人に花火を射ち込んでそんなに面白いか!」
「やりやがったな」
「おっ、やろうってのか!」
「やっちゃいな、ひろ君」
「キャハハハ、いっけー」
「俺達が何をしたってんだ!」
掴み掛かってきた餓鬼の腕を捻った所までは覚えているが、此処って何処だ?
ガキ共も居るが、奴等も此処が何処か何故こんな所にと言うか、訳わかめって顔だ。
足は地面?を踏みしめているのに何も無いし上下左右の感覚が無い。
「ねぇ~、ここ何処なの?」
「お酒飲みすぎたかな」
「知らねぇよ。てか、夜だったはずなのに何で明るいんだ?」
「おっ、オッサンお前何かしただろう!」
《あ~、静かにしなさい》
「ん・・・誰よおめぇは」
「あ~ら、良い男ねぇ~」
《召喚者を間違えたかな。しかし、荒ぶる気を含んだ六名を・・・何故七名居る?》
ん、何か嫌な予感がする。
「貴方はこの状況の説明が出来そうですね」
《おお、冷静な者が一人居るが・・・何故七人なのだ?》
「私はその馬鹿共とは関係ありませんよ。今六名と言いましたが? それとこの状況は何ですか?」
「よう、おっさんよう。さっきから偉そうに何だぁ~」
「ひろ君、おっさんなんてどうでも良いから、ここは何処なの」
《静かにしなさい。貴方達を召喚したのは、闘気が溢れていたからです》
「このおっさんも訳の判らん事を言ってやがる」
「こらっ! おっさん、ここって何処だよ?」
「これからパーティーをするんだからね」
「そうよ。良い男だから招待しちゃおうかな~ぁ」
「あぁ~、エリったらひろ君が居るのにナンパなの」
《喧しい!》
頭上から落ちた怒声に身体がビリビリ震える。
ヘラヘラしていた六人も驚いて固まっている。
《一度しか言わないから良く聞け! お前達を召喚したのは、闘気を溢れさせていたからだ。これからこの世界で生きて行くのに必要な知識と魔法を与えるが・・・お前はこの者達とは関係ないと言ったな。まっ、召喚したものは仕方がない。この世界で生きる基本的な事は授けてやるが、魔法は六名分しか用意が無い》
「あのう、話が良く判らないのですが」
《ティナ!》
《お呼びでしょうか》
《その者をお前に任せる。地上に降ろしてやれ》
なに~ぃ、その投げやりな言葉。
ティナと呼ばれて現れた女性は、何処に居たんだ?
困った様に微笑む女性をみて振り返ると、あの六人と男の姿がない。
あの男は召喚と言ったな。
まさかラノベでお馴染みの異世界転移じゃ在るまいなと思うが、見知らぬ場所に立っているのは間違いない。
そして現れたり消えたりと忙しい男と目の前の女性。
「これって、異世界転移ってやつですか?」
《異世界転移? アマデウス様が貴方達を召喚なされたのです》
「何の為に?」
《野獣が増えすぎて、人族達では討伐が間に合わないのです。その為に闘争心溢れる者をこの世界に召喚して、野獣討伐の使命を与えているのです》
「与えているのですって他人事の様に言いますが、貴方も彼のお仲間か配下なのでしょう」
* * * * * * *
「おい! あの野郎と、呼ばれた女が消えたぞ」
「ほえ~ぇ。ねぇねぇおじさん、どうなってんの?」
「そうよ、あたいたちはキャンプ中でさ、花火の邪魔をしないでよ!」
「んな事より、ここは何処だ?」
《ふむ~、動じないのかはたまた人選を誤ったのか。しかし度胸は有りそうだな。お前達には野獣討伐をして貰う。その為に必要な知識や魔法を授けるので、住民の手に負えない野獣を討伐せよ》
「おっさん、何を訳わかんない寝言を言ってるんだ?」
「そうそう、未だビールも飲み足りないし帰りたいんだけどぅ」
《お前は一人でも闘えそうだな。雷撃と火魔法に結界魔法を授ける》
「はぁ~。おっさん頭だいじょ・・・」
「えっ・・・よし坊が消えたよ」
「てめえぇぇ、よし坊に何をした!」
《お前には、水魔法と氷結魔法に転移魔法を授ける》
「おいおい、俺も消えるの・・・」
「今度はテツが消えたぞ!」
「おっさん誰だよ?」
《初めて真剣に問いかけて来たな。お前には》
「ちょっと待ってくれ!」
《なんじゃな?》
「本当に魔法を授けてくれるのか? 野獣って居るのか?」
《その為に召喚したのだが》
「へっへへへ。まさかアニメの世界があるなんてなぁ~」
「出たよ。アニオタひろ君の性癖が」
「エリ、一緒に行こうぜ。お前一人だと野獣に食われて死ぬぞ」
「マジで?」
「あんた・・・ひょっとして創造神様かい?」
《そうだが、それが何かな》
「では魔法は結界魔法に転移魔法と土魔法を頼む。出来れば氷結魔法もな」
《良かろう》
「もう一つ。エリには治癒魔法と結界魔法に・・・何が良いかなぁ~」
《では火魔法を授けてやろう》
「おう、ありがとな。エリ手を繋いで離すなよ。アニメでは、手を離すと離ればなれになって苦労・・・」
「嫌だぁ~、皆消えていくよ」
「由美、一緒に行こうぜ」
「本当にあたい達も消えちゃうの?」
「面白そうじゃん。行き先の判らない旅ってよう。おっさん俺も攻撃出来る魔法が良いな」
《良かろう。火魔法・雷撃魔法・氷結魔法・土魔法を授けるぞ。娘には治癒魔法と水魔法に風魔法が良かろう》
「えっ、私にも選ばせ・・・」
* * * * * * *
「で、ティナさんとやらは説明してくれるのかな?」
《説明と申されましても、私は生き物を従えるテイマー神で、貴方にテイマーのスキルと基本情報を与える事しか出来ません》
「いや、それじゃなくて召喚って意味が判らないんだけど。帰して貰えないの?」
《私にそんな力はありません。アマデウス様がなされた事なので無理です。貴方を地上に降ろす様に命じられましたので、それに従うのみです》
「そんな無茶な・・・てっ言いますか、ここって何処ですか?」
《アマデウス様の造られた世界ですよ》
「いや、名前ですよ。世界の呼び名もないのですか?」
《知りません。人族に聞けば判ると思いますよ。・・・あれっ》
俺を見て首を捻るティナさんは、眉をしかめて溜め息を吐く。
嫌~な予感がするので、聞かずにいられないと口を開き掛けたが。
《私が呼ばれたと言う事は、貴方にテイマーとしてのスキルを授けろって事なんですが・・・》
嫌な予感はよく当たるって、婆ちゃんが言ってたぞ。
《貴方は能力値が1しか有りません。テイマーのスキルを授けても・・・でも、まぁ~アマデウス様と私の加護があるので何とかなるでしょう》
「ちょっと待て! これが夢じゃなく現実だろう! と思うが、少しは説明しろよ!」
《私に言えるのは、貴方の能力値が1である事で、テイマーのスキルを授けても役に立たないと言う事です》
「さっき『野獣討伐の使命』って言ったよな、なのに何の能力も無いの? それって死ねと言っているのと変わらないぞ!」
《テイマー・スキルとは、人族以外の生き物を支配し使役する能力です。掌を見てスキルと思えば、自分の能力が把握出来ます。そして生き物を見て(テイム)と思えば対象生物の能力が理解出来ます。テイム出来る生き物は、自分より能力が下の場合のみです。貴方の場合はアマデウス様が不要と判断されたので、基本情報のみで魔法を与えなかったのでしょう。だから能力は最低の1になっています》
「その基本情報とやらを教えてくれないか」
《この世界で困らない生活全般の知識と用具です》
「加護が二つ有るって言ったよな」
《能力1とは言え、アマデウス様が基本情報を与えられたのでアマデウス様の加護と、私が与えたテイマースキルの加護です。加護とは、与えられた能力が通常より有利に働くことです。ではお元気で》
「待て! 待てまてよ! 説明って其れだけか?」
《私はテイマースキルを与えて、地上に降ろす役目のみです。テイマーとしての能力説明は終わりましたので、後は地上に降ろすだけです》
「でもテイマー神なら、テイムする時の手順くらい教えろよ」
「無駄な知識ですが、テイム対象に向かってテイムを二回呟けば使役出来ます」
* * * * * * *
この野郎って思った時には、何も無い場所から風の吹く草原に立っていた。
と言うか、丈高い草に囲まれた場所で背伸びをしても、見渡す限り風に揺れるひょろい木と草しか見えなかった。
肩が重いと思ったら荷物を括り付けた背負子に、手には長い棒の先に・・・先に刃物が付いている。
これって槍だよな
夢か現か何ともまぁ~、ほっぺを抓ったら痛いので現実らしいが、俺の身にもなれよ。
まるで出来の悪いラノベかアニメの様で、しかも巻き込まれ召喚ってやつじゃないの。
暫く呆けていたが、野獣がいると言ってた事を思い出して身の回りのものから確認だ。
背負子に括り付けられた荷物は、着替えに小さなフライパンとシェラカップに似た食器にフォークとスプーンに革袋が一つ。
革袋には鉄色銅色銀色の硬貨が各20枚入っていて、これが全財産の様だ。
膨らんだ布袋を開けてみると、焦げ茶色・・・黒に近いカチカチのパンが10個に干し肉と思しき黒い棒きれ。
小さな壺が二つに布袋が10ヶ程、それに不思議な文様が刻まれた板に石がはめ込まれている。
(これは?)《野営用結界魔法板、魔力を1込めれば24時間程度安心安全》
(何か頭の中に聞こえたが、安心安全ってどの程度なのかな)《オークやバッファロー程度の攻撃に耐えられます》
さっきまで居たティナの声が頭に響く。
そう言えば、さっきもこんな感じだったと思いだした。
疑問に思った事を考えれば答えてくれる様なので、今のうちに聞いておく事にした。
(魔力を込めるって?)《野営用結界魔法板の魔石に指を乗せて、展開と望めば良い。必要無くなれば消去と思えば消える》
(人の住まう場所は何処?)《南へ一日の距離》
(周辺に野獣って居るの?)《居ます》
早く教えてよ!
野営用結界魔法板を置き、石に指を当てて「展開」と呟いてみる。
ん・・・(なーんにも変わった様に見えないんだけど?)《外部から見れば自然石に見えます。操作した者は出入り自由です。因みに24時間程で消滅しますので、その前に再度展開すれば24時間追加されます》
へっ、と思ったが取り敢えず外に出てみると、確かに大きな石に見える物が背後に有った。
恐る恐る石に手を触れると、手首から先が石に沈み込んでいる。
荷物に比べて凄いハイテクと感心してしまった。
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