第40話
暫く眺めていると下劣た視線を感じた。その方向を向くと、チャラい大学生のような男達が舌舐りしながらこっちに来た。さすがナンパ橋だな。やっぱりこい層もいるんだな。カップルにとっては最高の地なのに。こんなチャラいやつがいたなら楽しめるもんも楽しめないな。
「へ、綺麗な女の子じゃねーか。俺と一緒に楽しまないか?そんな地味な男といるより俺と一緒にいる方が楽しいぜ」
そう言って近づいて奏の手を握った。奏は嫌そうにしている。俺は霊圧を加えて威嚇したが、その男はなんともないような下劣な笑みを浮かべていた。
「陰陽師か?残念ながら俺も陰陽師だからその程度の霊圧じゃ無理だぜ」
「ちっ奏を離せ。今なら怪我をしないですむぞ」
本気の霊圧を加えても恐らくこの男は怯まない。それなら縛りにいくしかないな。不動金縛りならさすがに動けないだろう。俺は呪文を唱えた。
「何事もどんなものも絡み縛りとれ急急如律令!」
「ちっ不動金縛りか。今日のところは見逃してやる。だがお前の顔は覚えた。いつかお前の大事なものを汚してやる」
俺はそれを聞いてさらに呪術を当てようと思ったが、奏に手を握られて、この場を離れさせられた。
「お兄様あのまんまだと呪術を使おうとしたわね。陰陽法にひっかかるわよ」
「だが呪術を使わなかったら次何をしてくるか分からなかったんだぞ。あそこで奏に手を出したらどうなるか知らしめないと」
例え法律を破ってもあいつには恐怖を与えなきゃいけなかったはずだ。それに相手は陰陽師ならそこまで厳密に罰せられることはない。理由を言えばな。だからあそこで呪術を使っても問題ない。なんなら呪いをかけるのもありだっただろう。呪詛返しは防ぐことはできるしな。
「お兄様の手は汚してほしくないから、あんなことはやめてほしいわ」
懇願するように奏は言ってきた。俺は息をはぁーと吐く。奏は俺の手を汚してもらいたくないことが分かった。だから俺はその意見を汲み取ろう。
「分かったよ。だが次俺の大切なものを奪おうとするなら容赦しないからな」
例え相手が強いやつでもな。あの不動金縛りは不意打ちではなった呪術式だからあの男の本当の実力は分からない。だが負けるつもりは一切ないがな。どんなに強かろうと俺の大切なものに手を出すならぼこぼこにすると決めている。誰にも俺の大切なものは汚させない。
「ええその時は止めないわ。それじゃコスプレを返しにいきましょう」
「そうだな。返したらどっか夜ごはん食べて帰るか」
俺たちは駅まで走っていたのでそのまま電車に乗り、稲毛駅で降りて、店に着くと、俺たちはそれぞれ更衣室で着替えた。そしてコスプレを返して、お金を払い店をでた。改めて奏を見ると足はでてないが、やっぱりワンピースは上品に見えていいな。足や胸がでている服装だと周囲に下劣な目を向けられるから奏は着ないんだろうな。モデルしてるときは別だろうが。
「それじゃどこ行く?一旦地元に帰るか、それとも千葉で食べていくか」
「折角だし千葉で食べていきたいわ」
ラーメンは食べたからあまり脂っこいものじゃないものを食べるか。俺は千葉市と検索して調べた。するとイタリアンがでてきた。カフェバープリンセスか、なかなかおしゃれそうでいいな。地元じゃあんまり見ないタイプの部屋だ。ここにするか。サイゼとどれくらい違うか比べようじゃないか。
「こことかどうだ?」
俺は検索した店を携帯ごと渡して見せた。ここならおしゃれだし、奏も気に入ると思うんだが。奏は携帯を見てると、おしゃれねと言った。
「ここにしましょう。サイゼと似たようなところに行こうと言い出すかと思っていたわ」
「千葉まで来てチェーン店には行かねーよ。イタリアンに変わりはないが。フレンチもありかなと思ったんだが」
フレンチは高いがその分美味しいし、コース料理だからわざわざ頼まなくてもいい。だが今日はイタリアンの気分だったからイタリアンにしたのだ。
「お兄様なら言いかねないわよ。よくこんなおしゃれなところを見つけ出せたわね」
「千葉市おすすめってやったらでてきた」
まさかこんなにおしゃれで手頃な料金の店があるとは思わなかったが。おしゃれな店ってカフェを除き高いところが多いからな。だからでてきたときはまず値段を見た。奏から携帯を返してもらいマップで調べた。千葉駅らしいな。ここからならそこまで遠くない。
俺たちは駅に着くと、電車に乗り千葉駅で降りて、そこに向かった。行く途中に何件かラーメン屋を見つけて、いつか行こうと思っていると目的地に着いた。
「へぇー外観からおしゃれね」
「さすが千葉市の個人店だな。東京にも負けていない。まぁ東京とは個人店の数が違うがな」
俺たちはそういった感想を抱くと、中に入った。中には入ると、歴史のあるイタリアンって感じだった。店員さんに案内された席に座るとメニュー表を見た。ふわふわクリームカルボナーラと季節のミルフィーユパイにするか。奏はまだ真剣な表情で選んでいる。どれも美味しそうだからな。
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