労働環境劣悪な世界に来てしまった
kazanagi byo
最悪な世界
俺は週休二日のごく普通の会社に勤めている。パソコンをカタカタいじるタイプの仕事で別に仕事が長いとか上司が怖いとかはなく満足している。俺は機械が好きだし強いて文句を言うなら給料が多くないくらいか。
そんな生活をしている俺は家で夕飯を食べていた。一人で暮らしているため、通販でのものが届く以外はほとんど人は来ない。が、
「ピンポーン」
何も頼んだ記憶はないがとりあえずドアを開ける。すると目の前には見たこともない男が立っていた。
・・・
無言の時間が通った。『俺が話し出そう』そう思い、口を開くと同時に男が動き出した。動いたおかげで男の後ろには車が止まっていることに気づけた。何も考えてないが俺は勝手に後退りした。男が腕をつかんできた。振り払おうとするが全く動かない。引っ張られて車に乗せられる。
『誘拐か?どうしようか』
考えているとさっきの男が話し出した。そういえばこの男は運転しないようだ。
「おい。お前名前は何だ?」
『まずい、本名じゃないほうがいいよな』
何も思いつかない俺はとっさに言ってしまった。
「俺は名乗らない!まずお前が名乗れよ!」
怒りのトリガーを引いてしまった。
「おぉ。いい度胸してんじゃねぇか。しっかり叩き込む必要がありそうだな」
『叩き込む?何をだ?』
不思議に思っていると男が続けた。
「俺はお前の救世主だ。感謝しろ。俺も名前は言わない」
それだけ言って運転手に小さな声で何か話している。
頑張って聞いてみる。
「お前にも仲間ができたな。あいつは有望だから期待してるからな。頼んだぞ」
運転している人はくまができている。その運転手は思考がないようにも見える。
『仲間って?どこに連れていかれるの?救世主って?』
頭の中がハテナでいっぱいになる。そのせいかはわからないが眠ってしまった。
次に気が付いたのは車が揺れた時だった。電車の中のような落ち着いた眠りができた。俺は今なにも所持品がない為、助けも呼べない。俺を誘拐した男も眠っている。運転手は相変わらずぼーっと運転している。運転手にしか聞こえない程度の声で丁寧に訊いた。
「これ、どこに向かっているんですか?どのくらいで着きますか?」
すると運転手も小声でゆっくりと話し出した。
「これは最悪な世界に向かっています。目的地にはもうすぐで着きますよ。驚かないでください、いわゆる異世界ってやつです。ここにいると僕みたいに壊れてしまうので気を付けてください」
「わかりました」
『なんだよ、最悪な世界って。こいつみたいにはなりたくない。気を付けよう。でも、異世界ってすごくね?』
九割の不安と一割の喜びに浸っている。
それにしても誘拐した犯人が寝ているなんてありえない話だ。この男は見た目は太り気味で自由な生活をしている感じだ。ただ、力の強さは只者ではない。運転手はその真逆のように細く、夢も希望もないような生活を送っている感じがする。
「ガタン!!」
大きな音とともに男が目を覚ます。
「着いたか」
男が一言いうと何を指示されたのか運転手は俺を外に投げ出す。まるで手慣れた仕事のように。顔を上げて景色を見ると一見普通だ。安心していると男が話し出す。
「今日からお前はNo.1139だ。で、No.375に指導してもらえ」
そう言って運転手を顎でしゃくる。またもや沈黙の間が流れる。それが嫌なのか男が再び話す。
「まずは監督に会いに行け」
そう男が言うと運転手もといNo.375が腕をつかんで走り出す。
『1139だって。いちいちサンキュー!(笑)覚えやすくていいな。それより番号で呼ばれるのかよ。別に嫌ではないけど。監督って誰だよ』
色々思っていると監督らしき人がいて、さっきの男とNo.375が頭を地につけている。慌てて俺もつけてみる。監督が話し出す
「こいつが新入りか。順応性はありそうだな。よく見つけたぞ、総長よ」
「ありがとうございます!監督のおかげです」
どうやら俺を誘拐した犯人は総長らしい。総長と監督があってすごくわかりずらいが監督のほうが上のようだ。その場を離れると総長が言った。
「ここからは頼んだぞNo.375」
「はい....」
細い声で返事をしていた。
急いで総長から離れてNo.375が話す。
「この世界はいたるところに監視カメラがあります。幸い音声は抜き取られません。まぁ聞こうと思えば聞けてしまいますが。さっきはいい判断でした。頭をつけなかったらどうなったことか。考えるだけでも恐ろしいです。まず、この世界で何をするか僭越ながらお話しさせていただきます」
堅苦しい話し方だ。我ながらいい判断をできたようで少しうれしかった。
「この世界では常に労働を強いられます。さぼるとすぐに総長がやってきてものを言われます。これはパワハラです。気を付けてください。何の労働をするかは教えてくれます」
『労働?パワハラ?』
元の世界では俺には縁のない言葉だ。ただそんなことより一抹の不安がある。それはこの世界から脱出できるかどうかだが...
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