第9話 メインヒーローとの遭遇

「素足に無手で迷宮に入ろうとするな、馬鹿……!!」


私の右腕を引っ張った人が怒鳴る。痛覚設定が0パーセントだから掴まれた腕は痛くない。

私の右腕を掴んでいるのは赤い髪に赤い目をしたイケメンだった。この顔、見たことある……!!


「まさかのメインヒーローとの遭遇とか……っ」


VRMMO『ディメリア迷宮を踏破せよ』のゲーム紹介サイトに大きく描かれていたメインキャラの一人。

会えたらいいなと思っていたキャラの顔が目の前にある。

今の私のステータス値、運も魅力も0なんだけど、会えちゃったよ!! イケメンキャラに!!

二次元のイケメンキャラが三次元で構築されるとこんな感じになるんだなあ……。


「ひとりか? なんでこんな場所にいるんだ」


メインヒーローは私の呟きをスルーして言葉を続ける。

プレイヤーのメタ発言はスルーしてイベントを進める設定なのかもしれない。

それはそれでありがたい。私、プレイヤー視点でいろいろ考えちゃう派だし。一応、乙女ゲーム的なロールプレイはしたいと思ってるけど。


「迷宮に武器、落としちゃって。だから拾いに行きたかったんだけど……」


「その装備で迷宮に入ったのか!? 命知らずな……っ」


チュートリアルで迷宮内に入ったんだから、私は悪くないと思うけど。

まあ、初期装備武器無しで迷宮に入ったプレイヤーがいたら、私も無謀だなって言うだろう。


「武器は諦めろ。生きて迷宮を出られただけで運が良かったと思えよ」


イケメンは簡単に武器を諦めろと言うけれど。

でも武器無しだと迷宮攻略ができないのよー!!


「家はどこだ? 裸足のまま歩くと怪我をするかもしれないから、背負って送ってやる」


私が心の中で反発しつつ、表面的には黙っていると、イケメンが私の前にしゃがみ込み、広い背中を向ける。

これっておんぶしてくれるってこと!?

うわー。おんぶなんてめちゃくちゃ久しぶりなんですけど。私、幼児の時もたぶん、数えるほどしかおんぶされてないと思う。


「私、重いから……」


フィクションな登場人物だとわかっていても、イケメンに『重い』って言われたらショックだから予防線を張る。

重いって言われても実際の私じゃなくて架空のマイキャラなんだけど、心が受けるダメージは計り知れない。


「それに、帰る家も無いし」


ゲーム開始時にいた空間は帰る家というわけじゃない。


「お前、年はいくつだ?」


「15歳」


イケメンに尋ねられて答えると、彼はため息を吐いて立ち上がった。そして私に向き直る。

長身の男性キャラに見下ろされると、怯む。

彼は赤い髪を掻き毟り、またため息を吐く。

ため息を吐くとストレスが軽減するっていうけど、年齢聞かれて普通に答えただけでそんなにストレス与えちゃった……?


□□□


ナギ 女 15歳 レベル1


HP 12/12 MP 1/2 力 2 技 0 速さ 3 運 0 魅力 0


経験値 25 (次レベル必要経験値75) 成長ポイント 19


装備


木のこん棒 ロスト ※チュートリアル中に投げ捨てた。ディメリア迷宮内のどこかにあるかも……?


白布の半袖シャツ


白布のハーフパンツ


【スキル】


・脱出 1/100 (アクティブ)



【ストック 100/1】


・VRMMO『ディメリア迷宮を踏破せよ』説明書 1冊/99


【モンスター図鑑】


1 土ねずみ ???(撃破していないので内容未記載)



【実績一覧】


【銅】はじめてストック収納からアイテムを出す 経験値+5

【銅】ストック収納から出したアイテムをはじめて落とす 経験値+5

【銅】対応する鍵を持たずに宝箱を開けようとする 経験値+5

【銅】はじめて鍵付き宝箱を開ける 経験値+5

【銅】はじめてスキルを使う 経験値+5


【称号一覧】


・チュートリアルを中断した者 成長ポイント10取得

・武器も金も無い者 成長ポイント10取得

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