第573話 333『四阿にて』
アンナリーナもスタンピードをけしかけた事があったが、侵略しようとは思わなかったし、その後国の成り立ちは変わったが、祖国は今も健在だ。
「これほどの規模のスタンピード、人の手で起こされたものではないと思うの。
でも、何らかの事象であそこのダンジョンがスタンピードを起こす事を予測して、準備していたとしか思えないのよ」
浮島の上に浮かんだ、本当に小さな浮島に作られた四阿で、茶を飲みながらテオドールと話しているアンナリーナはインベントリから地図を取り出した。
「で、どの国が侵略してきているの?」
「ここだな」
テオドールが指し示したのは、小国群の北、海を挟んだ半島の国家だ。
寒さの厳しい北の国家だが、あまり聞かない名だ。
「アルキユルツカ……って読むのかな?」
「そうだな。俺も行ったことはない。
聞くところによると北の、今は滅んだ海洋民族の流れを汲む種族らしい。
そいつらは滅多に国から出てこなくて、見かける事自体珍しいのだが……いったいどうしたんだろう」
「一度見に行ってみようか。
彼らがこの先、どうしようとしているのか知りたい」
「知ってどうするんだ?
手助けするつもりか? それとも滅ぼすのか?」
「今はそこまで考えてないよ。
どうする? 一緒に来る?」
「もちろんだ。
おまえをひとりにしたら、何をしでかすかわかったもんじゃない」
「ひとりじゃないよ。
セトやネロも一緒に行くつもり」
「あいつらはおまえのすることに否は言わんだろうが」
アンナリーナはクスクスと笑う。
カップのお茶を飲み干して立ち上がった。
「じゃあ、早速行って見ましょうか」
アンナリーナが、スタンピードの魔獣を浮島に転移させているにもかかわらず、その列は未だに大蛇のような様相を変えていなかった。
「一体どれだけの魔獣が湧いて出てるんだ」
セトの背に乗っているテオドールが、茫然自失といった様子で呟いた。
「それも、まだオークやオーガが湧いているの?
あっ!所々にジャイアントトロールやサイクロプスが混じってる!」
身長が3メートル近くあるオークやそれを越えるオーガよりもさらに大きな魔獣が、行軍に混じっているゴブリンを踏み潰し、食らっている。
「うわぁ、あんなの攻城兵器みたいなものじゃん。
いつの間に出ていたんだろう。
イジ、浮島に転移してきている?」
「いえ、でもゴブリンは確認されてます」
「そろそろ他の浮島にも転移門を開いて、そっちにも魔獣たちを移したいな。それと! サイクロプスとジャイアントトロールは是非欲しい!」
テオドールたちはやれやれと笑った。
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