第572話 332『浮島に造られるもの』
浮島には事前に結界の張られた地区が複数ある。
そこには建屋が作られる予定であり、すでに工事に入っている場所もあった。
「コロ、どう?」
「主人様!!」
アンナリーナの声を聞いたコーロナヴァルが目をキラキラさせて振り返った。立派な尻尾が飼い犬宜しく、激しく振られている。
「ご覧の通り、主人様のお住みになる、この領地の領主館を作らせております。いやあ、石積み建築に明るいものたちがおって、よろしゅうございました」
そこには無数のコボルトたちが群れて作業していた。
見る見るうちに石積みの壁が構築されていく。
「コロが連れてきてくれたコボルトたち、すごく活躍してくれているね。
ガムリの方も進んでる?」
「はい、あちらには特に技術の高い者らが行っております」
このコボルトたち、実は種族の勢力争いに敗れ行き場をなくしていたところ、偶然コーロナヴァルに見出されて一族全員が彼の庇護を受け、将来のため準備していたのだ。
「そう、やっとガムリとの約束を果たせる事が出来るわ。
今回の、この件はコロのお手柄ね。
どうもありがとう」
ガムリの鍛治工房は、アンナリーナが約束してなかなか実現出来なかった事項だった。
だが今は隅々まで拘り切った工房が完成に向けて、建設されていた。
アンナリーナの契約獣の中には、今回のコーロナヴァルのように独自に動いている者たちがいた。
例えば、瑠璃竜ヴェルーリヤ。
彼女はメコンナントのダンジョンに向かい、順調に配下を増やしている。
これにはアンナリーナがことの外喜び、早速従魔契約をして浮島に連れてきた。
ここにドラゴンたちの楽園を作りたいと思っているアンナリーナは嬉しい悲鳴をあげてしまった。
従魔たちはアンナリーナと離れていても、各自がそれぞれ主人のプラスになるように動いている。
今回、中規模だが浮島を丸ごとひとつ与えられたネロは、せっせと眷属を増やしている。
ツァーリは高位ミノタウロスの軍団を作り上げた。
アラーニェはアラクネ絹の量産に向けて、アラクネの繁殖に力を入れていた。
浮島が思い描いた姿に近づいていくのを、目を細めていたところ、その報せが入ってきた。
「スタンピードで弱った国に攻め込んで、王都を落した国がある。
そこは小国群の北にある国だが、スタンピードに沿うようにして、まだ進軍している」
人間とは、何と愚かな生き物なのだろう。
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