鬼嫁ランチ

タヌキング

鬼嫁の昼下がり

私の名前は明石 香織(あかし かおり)。しがない主婦をしています。

今日はママ友の大西 夜目子(おおにし よめこ)さんとオシャレな喫茶店のテーブル席に向かい合うように座ってランチです。

夜目子さんは私には優しい人なんですが、旦那さんには厳しいらしく、周りの人は彼女をこう呼びます、【鬼嫁】と。

夜目子さんは元ヤンらしく、金髪の髪色はその名残とか。美人なのでよくナンパされるらしいですが、その時は相手の・・・こ、股間を蹴り上げるらしいです


「旦那なんて尻に敷いてなんぼよねぇ。」


そうしみじみ言いながら、ナポリタンをフォークでクルクルと巻き付けて行く夜目子さん。


「そ、そうですかねぇ。」


私はピラフをスプーンですくいながら、尻に敷くことに関しては同意しかねるなぁと考えていました。私は夫婦は互いのことを尊重し合って対等な関係を築くことが一番だと考えているから。


「そうよ。尻に敷いてないとアイツ等男はバカだからDVとかに走ったりするのよ。」


「夜目子さんだって、よく旦那さんにプロレス技掛けてるじゃないですか。この間のコブラツイスト完全に決まってましたよ。」


「あれは愛だから、それにうちの旦那ドМだから大丈夫。ブヒィ‼って言って興奮してるから。」


それは違った方で心配になる。旦那さんドМなんだ。


「この間もさ、資源ゴミ出し忘れた罰で、次の日の朝、縄で縛りあげた状態でゴミ捨て場にアイツのこと放置したの。あれは傑作だったわ♪」


「や、やりすぎ、流石にそれはやり過ぎですよ。」


「確かに少しやり過ぎたかもしれないけどさ。アイツ警察に職質された時なんて言ったと思う?『これはむしろ御褒美なんで邪魔しないでもらって良いですか?』だってさ♪馬鹿よねぇ♪あっはははははは♪」


ドン引きです。やる方にもやられる方にも。でもこの大西さん夫妻の仲は良好の様で子供が五人も居る子だくさん家族らしいです。

夜な夜なビシッ‼という鞭の音が近所に響き渡るとか聞きましたが、これは噂話として私の胸にしまっておきます。


「香織ちゃんのところは、どうやって旦那を躾けてるの?」


「し、躾けて無いですよ。私達は喧嘩したりもしませんから。」


自分で言うのもなんですが、おしどり夫婦だと自負しています。


「ふぅーん、でもさ、もしも、もしもの話だよ。そんな仲の良い旦那が浮気したらどうするの?」


「ぷっ♪あはは♪面白いこと言いますねぇ♪」


突然の夜目子さんの突拍子も無い話に思わず笑ってしまった。そんなことは万に一つも無いのに。だけどそうだなぁ。


「その時はあの人を頭からバリバリと食べちゃいますかね。」


「・・・こ、怖い、怖いから香織ちゃん。アンタがそう言うと冗談に聞こえないから。あと夢に出てきそうだから、その病んでる顔をやめて。」


あっ、冗談のつもりだったのに、夜目子さん引いてる。そんなに変なこと言ったかな?

何だか恥ずかしいや、まぁ顔が赤くなっても、私の顔は元から赤いので気付かれることは無いのだけど。

不意に私の普段は隠している二本の角が頭からニョキッと出てきてしまったけど、夜目子さんは、それには引かずに「久しぶりに見たわ♪」とケタケタと笑っています。

意味は違えど、二人の鬼嫁は今日も仲良しです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鬼嫁ランチ タヌキング @kibamusi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ