移りけらしな紅葉の色は
かたぎりしゅーたろー
第1話「序章」
どこか遠くの方から聞こえてくる聞き覚えのある声の響きに、ふと意識を取り戻した。けれど、自分が今どんな状況にいるのか全く理解できなかった。辺りは一面の暗闇で、まるで水中にいるかのような浮遊感を覚える。どちらが上か下かもわからない。
(…なんだ、どこだ、ここは…)
少し気を抜けばまた気を失ってしまいそうなほど、まだ意識はぼんやりとしていた。
『…っ!』
未だにはっきりとしない思考の中で困惑していると、また聞こえてくる人の声が響く。確かにどこかで聞いたことがある気がする声、だが、それが誰のものであったのか、もう思い出せない。
『…で…』
『…ないで…』
声がだんだんはっきりと聞こえてくるようになった。それが近づいてきているのか、それとも自分の目が覚めてきたのか。その声の主を探そうとしてみるも、どうすることもできずに依然として暗闇の中にいる。
『…っ!!』
その声は水の中から聞いているかのように揺らいでいる。どこから聞こえてきているのか確認しようとするも、うまくいかない。ますます己の現状に疑念が湧いてくる。
(…誰、だ…誰の声だ…)
何もわからないまま視界が狭窄し、再び気が遠退いていく。薄れゆく意識の中あの声の響きが耳に残っているのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます