第4話 龍の記憶

ヒカリは夢を見ていた。

幼いころ、両親が研究していた次元を越える技術の実験を見学していた時の記憶。

ゆがんだ景色の先、そびえ立つ塔の頂上に君臨する生態系の王。

      "ドラゴン"だ。

空気を震わせ轟く咆哮、あまねくすべてを焼き尽くす炎、その一挙手一投足を目に焼き付けた。

「ああ、どうしたらあの生物を再現できるんだろう」

ぽつりと言葉をこぼして自分が起きたことが分かった。

なにやら頭とお尻に違和感を感じる。喉も何か変。

「ヒカリちゃん起きて―、朝だよー!」

つきみが起こしてくれたのでようやくベッドから出ることにしたのだが,,,,,,


鏡をみると、頭にはツノが、お尻からはパジャマを突き破って尻尾が生えていて、腕と足は鱗で覆われていた。

「え!?どういうこと!?ちょ、ちょっとみんな起きて!」

ポベートールのみんなをたたき起こして緊急会議が行われた。

「ヒカリちゃん、何か心当たりある?」

ヒカリは心当たりがあった。

「えっとそのー,,,,」

昨日のことだ。

ドラゴンになる薬を完成させて、試薬のために自分を実験台にしたのだが、飲んですぐには効果が出なかったため失敗作だと思っていた。

しかしゆっくりと薬は効き始め、寝ている間にこうなったというわけだ。

「そうだったんだ。で、尻尾とかは動かせるの?」

由香里ちゃんは興味津々のようだ。

「動かすって、どうすればいいのかなぁ」

感覚を探って何とか動かすことに成功したが思うように動かせず、そのばにあったつきみのゲーム機の液晶をバキバキに割ってしまった。

「あぁー!す、スカイバスターズ2が!」

「ご、ごめん!液晶は直せるよ。落ち着いて」

諭すように話すと、月見は涙をひっこめた。

「よかったぁー。でもその体どうしようね」

「うーん,,,,」

一時間が経過して授業が始まってしまった。

先生は事情を分かってくれたがどうも感覚が普段とは違う。

(なんだかいつもより力が溢れてくるような、体も熱いしやっぱりおかしい)

そう考えてこんでいるとバキッと音がした。

自分の手を見ると先ほどまで握っていたシャーペンが木っ端みじんになっていた。

音に驚いてつきみちゃんが心配そうに見つめていた。

(嘘!?私こんなに力強くないよね!?」

30分後

ようやく1時間目が終わって休憩時間となったがいかんせん体の変化が気になって仕方がない。

ちらりと目を移した先には1日の予定が書かれたボードがあった。どうやら2時間目は体育のようだ。

(体育!?やばい、いつもみたいに倒れるかも,,,,,,)

しかしその予想は少し外れることとなった。

「今日の授業は陸上競技だ!がんばれよ!」

先生はそういうと生徒たちと一緒にグラウンドを走り始めた。

いつもはこの外周だけでもぶっ倒れるほどなのに、体は軽やかに動き、ついには先生すら追い抜いてしまった。

「はー!つかれたー!けほけほ」

どうせならここで体力を使い切っておこうと全力で走ったのでちょっとせき込んでいる。

「けほけほ、ん?なんか熱い?」

喉が燃えるように熱い。

暑さに耐えきれず口を開けると、炎がブワッと出てきた。

「ーーーーーーーっ!!!」

(あ、やばい。喉が焼けて声が出ない!誰か助け、て、)

あまりの痛みにヒカリは気絶してしまった。

「ヒカリちゃん!?大丈夫!?おーい!」

(誰かが呼んでる、だれ?)

続く。


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