第421話 罠の結果

転送された先も真っ暗だった。

しかし明らかに人の気配がする。

それも一人や二人ではない。

何十人かの人に周りを囲まれている。


パッと明かりがつくと、

そこは一年一組の教室だった。


「緑箋君おかえり!」


咲耶がそう叫ぶと、

周りからわーっという歓声が聞こえ、

おかえりおかえりと言いながら、

紙吹雪と光る球のようなものが投げつけられた。

大歓迎と言えば大歓迎だが、

攻撃といえば攻撃である。

緑箋はこんなに嬉しい罠は初めてだし、

こんなに嬉しい攻撃も初めてだった。

そして緑箋の周りに人が駆け寄ってきた。


「緑箋君久しぶりやなあ!

なんや、ちょっと大きなってんちゃうか?」


誰かと同じようなことを咲耶はいう。


「緑箋君元気そうで何よりだよ」


龍人は目に涙を浮かべている。


「龍人君がね今回の魔法を中心に仕掛けたんですよ。

うまくいってよかったわね。

本当に頑張ったんですから。

相変わらず泣き虫なのは変わらないですけどね」


須勢理が珍しく龍人を褒めている。

緑箋がいなくなっても、みんなのいい関係性が深まっているようで、

とても嬉しくなってしまった。


他にも一年一組の生徒は勢揃いしているようで、

みんなが緑箋を囲んで握手したり談笑したりしている。

朱莉と代田と守熊田は天翔彩のところに言って挨拶をしている。

天翔彩も嬉しそうにみんなのことを見守っている。


「おい緑箋、四国で大活躍だったって聞いたんだが、

その話は本当か?」


そう乱暴に話しかけてきたのは紫電である。

狸合戦に関してはすでに報道はされているようだが、

そこに誰が関わっていたかなどという詳しい内容については語られてはいない。

一部カストリ雑誌のようなところは憶測で記事を書いているようだが、

基本的には出鱈目で、それはどの世界でも同じこと。

しかし紫電にはその情報が入っているのは、

おそらく親からの情報なのであろう。


「活躍はしてないけど、

会議には参加してたから、

巻き込まれたっていうのが正しいよ」


「ふん。どうだかな。

お前がいてただ巻き込まれただけなんて話はないだろう。

結構な大騒動だったのに、

怪我人が出た程度で終わったって話じゃないか。

たまたまっていやあ聞こえはいいが、

そんな結果になるわけがないんだから、

その裏で誰かが何かしたってことなんじゃあないか?」


意外と紫電は鋭い話をする。


「でもまあそういうことにしておいてやるよ。

軍関係なんだから、言えない話はあるだろう」


紫電は俺はわかってるんだということをしっかり伝えながら、

これくらいで済ませてやるという大きな器を見せつけているつもりなのだなと、

緑箋はわかっていたが、

それで済ませられるようになった紫電の成長に感心もしていた。


「ってことで、みなさんにはお土産を持って参りました!

四国の松山と徳島と淡路島と三宮のお土産です!

学校のみんなで分けて食べてください」


わーっと生徒たちが喜ぶ。

朱莉は両手にいっぱいのお土産を机においた。


「ほら緑箋君こっち来て」


朱莉の呼びかけに緑箋は天翔彩の元に行く。

もちろん後ろにはぞろぞろと生徒たちがついてきている。


「はい、先生にはこれです」


緑箋は先生に一升瓶を贈った。


「これは見事なお酒だな。

でもこれ、灘のお酒じゃないか?」


「朱莉さんが行きたいって言ったんで、

さっき灘に行って買ってきたんです。

先生にはちょうどいいかなって」


「もーちょっと緑箋君!」


朱莉は恥ずかしそうに照れながら下を向いてしまった。

それを見て元一組のみんなが微笑んだ。

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