第15話 日本と魔界と
「先生おはようございます」
「せんせ、おはよー」
三人は先生に挨拶をする。
「先生も朝ご飯食べますか?」
「いや、食べてきたので大丈夫です。
寮長のご飯が食べられるんだったら、
食べてこなければよかったかな」
「じゃあ今度は食べてください」
「楽しみにしてます」
二人の大人の挨拶が終わると、
先生は二人の生徒に向けて話しかけてきた。
「そろそろいいかな?」
「はい、お願いします」
「大丈夫やで!」
二人の生徒はごちそうさまと声を揃えると、
お皿を片付けて、
ありがとうございましたと感謝を告げて食堂を後にした。
「じゃあトレーニングルームに行こうか。
場所は……」
「大丈夫やで!昨日二人で探検したから!」
「そうか、それはよかった。
じゃあ行こうか」
先生は二人で行動をともにしていたことを知って、
とても嬉しく思っているようだ。
「緑箋君、制服とっても似合ってるね。
入学式も楽しみだ」
「ありがとうございます」
やはり緑箋は褒められるのには慣れていない。
むず痒い気持ちを感じている。
三人はトレーニングルームに入る。
「一応二人に簡単に説明しておこう」
先生はトレーニングルームのことについて説明を始める。
トレーニングルームに入ると、
擬似体になり本体はダメージを受けなくなる。
トレーニングルーム内では場所や気候などの設定ができる。
敵との対戦も可能。
トレーニングする人の魔力の設定なども可能。
そのほかにも各種設定が可能のようだが、
簡単にいうと、
バーチャルリアリティのリアリティ版という感じだろう。
前の世界の技術を簡単に超えている。
魔法の凄さでもある。
簡単な説明が終わると、
教室のような机と椅子と現れる。
三人は椅子に座る。
「さて、緑箋君は初めてということで、
まずは簡単にこの世界の話と、
魔法について話しておこうと思う。
咲耶ちゃんには簡単すぎる内容だけれども……」
「大丈夫やでせんせ。
邪魔せんからちゃんと緑箋君に説明してあげて。
うちもせんせの話大好きやしな!」
「そうか、じゃあ時間ももったいないから進めよう」
先生は端末から地球儀のようなものを3Dで出現させる。
「これがこの世界の今の状況だ。
我が日本はここになる」
見慣れた地球の地図が広がっている。
ほぼほぼ前の世界の地球と同じようだ。
ただひとつ違うのは、
太平洋にかなり大きな大陸が広がっているのだ。
先生はそこを指差す。
「日本の東にあるこの大きな大陸。
これが魔界だ。
魔界には魔族が生息している。
人間はこの長い歴史上、
魔族との闘いが続いている。
その魔族はこの大陸からやってくるわけだが、
この立地条件なので、
我が日本は人類の最初の防衛拠点の一つになっているわけだ。
詳しくいうと、
南極や北極などにも魔族はすでに進行しているので、
日本だけが狙われているわけでもないのだが、
本体は太平洋の魔界から来ると思ってもらっていいだろう。
つまりこの魔法学校は君たちの教育機関であることはもちろんだが、
日本を護る魔法使いの育成機関でもある。
もちろん闘いに向いていない人間も多数いるので、
全てが戦闘部隊に配属されるわけではないし、
それぞれの生き方ももちろんある。
ただ、日本はそういう場所にあり、
今もなお魔族の脅威に晒されているということを覚えてもらいたい」
緑箋は自分のような立場がすんなり受け入れられていたことを、
少し不思議に思っていたのだが、
その理由がよくわかった。
緑箋とは違った意味でだが、
子供が一人生きているということが珍しくない世界であるということだ。
厳しい現実を知った緑箋は暗澹たる気持ちになった、
はずだった。
以前の緑箋ならば全て諦めて、
運命を受け入れているだけだったかも知れないが、
なぜか今の緑箋はこの話を聞いて、
何かできないだろうかと思い始めていた。
それがこの新しい体がもたらしているものなのか、
それとも緑箋が変わり始めているからなのか、
それはわからなかった。
どちらにせよ、
緑箋の気持ちが少しだけ前向きになっている、
その感情の変化はとても素晴らしいものに間違いはない。
先生は話を続けた。
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