5話 VSタイタン
タイタンへとエンリは接近し、目前で立ち止まった。
「…?どこかで見た様な……」
それを見逃さずに、タイタンは小さき体を巨大な足でソユーの町を囲む巨大な壁の方に蹴り飛ばした。
衝撃で少女の体がバラバラになりながら、宙を舞い……エンリは壁のシミになった。
……
…
その頃、ソユーの町は大混乱に陥っていた。
「タイタンが来たぞ!!」
「えっ嘘……」
「っ、何でこんな日に!?」
「とにかく、逃げないと…」
町中でカンカンとやかましい音が響き渡る。
「荷物は持たずに、とにかく家から出て避難して下さい!場所は他の職員が指示します!!」
「…桃色髪の嬢ちゃん。避難誘導、俺らも手伝うぜ。」
「あっ、ありがとうございます!」
「それくらいしか役に立てねえからな。」
冒険者の一人が前方を見る。
「……あれが、タイタンか。」
壁越しでもその恐るべき巨体はよく見えた。
「…ラナド君、駄目だって…いくら何でも勝てないよ!!」
「そうだよ、無謀だよ!!」
「逃げても別に大丈夫だって。誰も責めたりしないよ?」
「……この町で一番強いのは…ぼくだ。だから止めないでくれ。」
パーティメンバーの三人と揉めながらギルドから青年が出てきて少女達をつき離して、誘導をしていたギルド嬢の前で立ち止まった。
「このぼく…『ソードマスター』であるラナドにタイタン討伐の許可を。」
「……。」
「このままだと、被害者が出ます…そんな顔しなくても大丈夫ですよ、今までぼくは数多の魔物を倒してきたじゃないですか。」
ラナドは内心では分かっていた。
——タイタンと戦えば確実に死ぬ事を。
「……ぼくが五歳の頃、タイタン討伐で同じく『ソードマスター』であった父と、『ハイプリースト』の母を亡くしている事はご存知ですよね?」
「…っ、ですがギルドとしては単独よりも、」
「いい機会なんです…復讐を果たす絶好の。ぼく一人にやらせて下さい。」
ギルド嬢は何も言い返せなかった…痛い程その気持ちが分かるからだ。
(私のお父さんも…タイタンに。)
託してもいいのだろうか。青年は覚悟が決まった顔をしていた。なら………答えは得た。
「ラナドさんの単独でのタイタン討伐を許…」
「……っ!?おいギルドの嬢ちゃん、坊主もあれ見ろ!!」
「…?今大事な事を話して…………は?」
「…ぇ?」
冒険者やギルド職員、離れて様子を見ていた少女三人、避難をしていた町の人々。
——ソユーの町にいる全員が一斉にタイタンがいる方向を見つめていた。
……
…
かつてワシは、数多の魔物を産み出した。その過程で色んな失敗作を産み出したが、同時に成功作も13体程産み出す事が出来た…最初はちゃんと面倒を見ていたが、しだいに世話をするのが面倒になり、結局癪ではあったが『大賢者』の手を借りて各異世界に送る事にした。
——のちにそれらは『原初の魔物』と呼ばれ、世界中で恐れられる事になるのだが、今はそんな事はどうでもいい。
「…ん。」
懐かしい記憶を思い出しながら、目を開けて自分の体を見る…とっくに肉体は再生していた。
「…はぁ、存外つまらん結果になったのう。」
エンリの目前には体液を撒き散らしたタイタンだった肉塊が平原のそこら中に撒き散らされていた。
めり込んだ壁から平原へ華麗に着地する。
「ナイフは…まあよいか。あの凡人の所に戻るかの。」
蠢く小さい肉塊を踏みつけながら歩く。
「この姿で戻るとまたワシの事を露出狂呼ばわりするんじゃろうな……はぁ。」
そう言いながら後ろを振り返った。
「…ほう、少しはやるようじゃな。」
肉塊が次第に集まり、人間の形を成していく。
それをただ攻撃せずにエンリは睨む。たったそれだけの筈なのに。
「……!」
肉塊全体が変化する…所々が赤黒く爛れ、溶けて、錆びて、腐って、石化して、砂と化していく…それでも尚、肉塊は呪われた箇所を切り捨てながら再生を続けた。その姿に感心をするようにエンリは呟いた。
「力を解放した今のワシの魔眼を視た時点でたとえその部位を切り捨てようと、呪いが肉体や精神…果ては魂までも伝播する筈なんじゃが…さてはワシの呪いに耐性があるな…?」
「……」
この無機質さといいその性質。そして、タイタンという名前…何かがひっかかる。
「…ふんっ」
エンリは右手で自身の頭を砕き、脳漿を手で外にぶちまけながら地面に倒れた。そしてすぐに再生し起き上がった。
「思い出したぞ…能力といいその名前…お主、さては『巨人王タイント』じゃな。」
「……」
「ふん、相変わらず無口でよく分からん奴じゃの。」
紫髪の少年の形になったタイタン…否、タイントは無機質な黒目でエンリを見つめてくる。
「…どうするかのう……こやつを。」
「……」
「別にここで殺してもいいんじゃが…」
(あ…殺すのはまずいんじゃった。封印が解ける。)
殺意を抑えながら、エンリは薄く微笑んだ。
「…まあ、折角また会えたのも何かの縁…という事にするとしようかのう?」
「……」
「凡人にはどう説明するか…そうじゃ!」
エンリはタイントに耳打ちする。
「…そなたの権能で、あれば可能であろう?」
「……」
こくりと頷いてその姿を『紫色の宝石が埋め込まれた指輪』に変えた。その指輪を手に取り、エンリは言った。
「よいか。貴様に命ずる事がある——」
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その姿を見て、僕はついため息がこぼれた。
「やっぱり、エンリって…露出」
「!?ワシだって、好きでこの姿になってる訳ではないんじゃぞ!さっさと服を見せよ…出来てないなら……分かるな?」
「ほら出来てるよ……はいどうぞ。」
エンリは渡された服を見る。
「…?なんじゃこれ??」
「僕が中学の時の女子が来てた制服だよ…エンリのためにかなり小さめに作ってみたんだ。」
「…よく分からんが着てみるかの。」
エンリは赤白の制服を着ようとする。
「む…着るのがちとむずい……っワシを手助けする事を許す。」
「了解。」
僕も手伝って、エンリに制服を着せた。
「……どうじゃ?」
「んーエンリはさ、髪を切らないのか?」
「髪……切るのが面倒だから切らんようにしとる。」
「僕らの拠点が出来たらさ…切ろうか?」
「…!そんな事が出来るのかの!?」
目をキラキラさせている。これだけ見ると、年相応なんだよなぁ。
「後ずっと聞きたかったんだが……カチューシャはどこやった?」
「あー戦いの途中で壊れてたんじゃろうなぁ。どっかいったの。」
「エンリ……まあ、大体想像はついてたからな。はい、これで髪を結べばマシになるんじゃないか?」
「おお、気が利くのう!!」
髪をずっと引きずってて少しうざかったんじゃと呟きながら、僕が渡したオレンジ色のシュシュで後ろで結んでいた。
「っ、かなりマシになったぞ!これだけは感謝してやろう。」
「…さいですか。ちなみに下着も作って…」
「断固としていらん。」
「いるときがあったら…」
「いらん、何度も言わすなよ…凡人。」
その強固な態度に僕は内心引いていると、エンリが何かを取り出して僕に投げつけた。
「…ほれ」
「っ!うわっと…これ指輪…か?それはそうと、物をぞんざいに扱うのは駄目だって。」
「やかましいのう。殺すぞ凡人…タイント…こほん、これはそう!タイタンから出てきた物じゃ。ワシは使わん故、うぬにくれてやる。」
何故かエンリの言葉に違和感を感じたが、それはそうと僕は指輪を右手の薬指にはめた。まるで僕のために作られた様によく指に馴染む。
「ありがとうエンリ。」
「…ふん、服や髪留めの礼じゃ。もっと励めよ凡人。」
エンリはふと町の方向を見つめた。
「……来る。」
「何が、」
僕が言い切る前に何か僕達の前方に誰かが降ってきた。土砂が舞い、タイタンが蹂躙した平原をさらに破壊する。
「問おう…タマガワヤスリ。これは君の仕業か?」
蒼い大剣を片手に持ち白いマントをたなびかせながら、青年は僕に問いただした。
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