作家志望のアルバイト書店員のハナシ。

工藤 流優空

私が、書店員になった日。

 小学生くらいの頃、周りの将来の夢が「ケーキ屋さん」「お花屋さん」「ペットショップ」の店員さんだった頃。

 私の将来の夢は、「歌手か、作家か、書店員」でした。

 社会人になってもやはり、書店員への憧れは多少なりともありました。

 けれども、一度も書店系のお仕事を探すことなく、教育業界に入りました。


 ある日のこと。作家を目指しながら、ふと思ったこと。


「作家になりたいのなら、書店員として、どんな本が売れているのか、実際にその目で確かめたらよいのでは?」


 そんなよこしまな気持ち半分持った私の目に、幸運にも飛び込んできた求人。

 それは、某ショッピングモール内にある大型の書店の書店員募集でした。

 今思うとこの書店、なかなか求人は出ません。

 住んでいる地域ではおそらく最大級の品ぞろえを誇る書店。

 私も小さい頃から何度もお世話になった場所でした。

 そこで、働ける。そう思ったらわくわくしました。

 すぐに電話をかけ、面接をしてもらう日取りを決めました。

 何度も何度も書き直し、清書した履歴書を持って私は書店へとやってきました。

 面接をしてくれたのは、副店長でした。

 副店長は、開口一番にこう言いました。


「うち、給料安いけど、いいの?」

 ウチ、キュウリョウ、ヤスイケド、イイノ……?


「車通勤だったら、駐車場代も取られるけど、いいの?」

 チュウシャジョウダイモ、カカルケド、イイノ……?


 ……そこ!? 最初に確認するところ、そこ!?

 割と、衝撃でした。

 まぁ事実、他の書店は分かりませんが、私の働く書店は、地域の時給の最低賃金を貫いています。

 だから最低賃金が上がると、自分たちの給料も上がる、という形。


 記憶にあるのは、給料安くてもいいし、駐車場代とられてもいい、自分は作家志望で、売れている本のこと、本について色々知りたい、だから働かせてほしい、と伝えたことだけです。

 結果的に、私は面接に受かり、晴れて書店員になることができましたのでした。

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