異世界雑兵物語
袴垂猫千代
第1話 古代文明的戦国時代、但し敵は魔物
気が付いたら、幼児になっていた。
鎧を着た男女が日常的にうろついているので、戦国時代に転生したのかと思ったのだが、鎧が日本のものではない。
素肌に革の板が張り付いている。地球ではないなと、考えを改めた。
男女ともそんな格好だし。
ファンタジー異世界じゃなかったら、女がこんな鎧着てうろついていない。
季節は真夏なのかと思ったが、ずっと真夏だ。
最初に戦国時代だと思ったせいか、言葉が日本語に聞こえる。
文字も漢字とカタカナひらがなに見える。
目に映る通りに見ようと意識すれば違うのだが、表音文字も二種類ある。
人間はちょっと浅黒くて堀が深い。中央アジア辺りか。
黒目黒髪で、髪はウェーブがかかっている。
なんで最初に、戦国時代の日本だと思ったんだか。
生まれた場所は、魔物の棲む森の近くに橋頭保として造られた、乾いた赤土色の煉瓦で出来た砦だった。
日本の戦用の砦のイメージより生活感のある、城塞都市だ。
煉瓦は錬成の技能で作るので、揃った大きさできっちり四角い。
綺麗に再現された、インダス文明かメソポタミア文明みたいだ。
両親は常雇いの傭兵的な、正規兵でもない雑兵で、雑魚の魔物を獲って、それを売って暮らしていた。
正規兵ではないと階級に並が付く。雑兵の兵長並。
兵の階級は兵卒、上兵、兵長、兵頭。
その上の下士官は徒士、上徒士、徒士長、徒士頭。
尉官からは少中上大で、将官まで全部四階級。
一定のノルマをこなして兵扱いの身分を受けている猟師、と言う感じ。
牧畜がなく、肉は狩りで得るしかないので、安定供給出来る者は国が身分保障をしている。
霊気による攻撃や防御があるので、戦士でも男女は平等で、強いか弱いかの価値観しかない。
兎も角強くなるために、ひたすら体を鍛えて育った。
ラノベだと魔力だの霊力だのを特別に増やしたり、筋力強化をしたりするけど、言われたように訓練する以外に強くなる方法がなかった。
人間には生まれてすぐに判る地水火風の基本属性があり、俺は風属性だった。
敏捷性は高いが、攻撃力防御力が低い。一つ高くても二つ低いって、ハズレっぽいが。
風属性は器用度も高いのが多いが、これは絶対ではない。
名前は
平民でも名前くらいは豪勢なのを付けようとする傾向があるようだ。
異世界キラキラネームじゃないかと言う気もする。
この世界では、八歳になると創造神から二つか三つ技能をもらえる。
普通は神殿に行って授かりの儀式をするのだが、神殿に行かないとその日の夜中に貰える。
神殿の授かりの間には、創造神の依り代の直径一腕高さ三腕の柱が立っていた。
一腕が一メートルなら、メートル法がそのまま当てはまる。
跪いて柱の根元に両手を振れ、願いを言う。大体希望は叶うがこれまでの修行と適応次第でもらえない事もある。
技能と同時に一桶(一腕の十分の一が一指、一指立方が一枡、十枡が一桶。十リットル又は十キロ)の空間収納は、誰でも貰える。
収納は時間は経過するが、生物が入らないので完全滅菌されるために、生ものを入れておいても腐らない。
中に生物が入らないけど時間経過はする設定の空間収納で、腐るのはなぜなんだろうね。
寄生虫は生きている細胞扱いなのか一緒に入るが、入った途端に死ぬ。
完全に死んでるけど、寄生虫が中にいることに変わりはない。
今はそれはどうでもいい。
「強撃と行射を下さい」
全ての攻撃が二割増しになる強撃、動きながら闘気弾を撃てる行射。
お
【初期技能 強撃 行射 打撃】
希望したものの他に、おまけが貰えた。武人なので打撃は生え易いが、今日までの修行を神に認めてもらえたと思われて、世間体がいい。
両親にも褒められた。
「さすがは我が息子」
「男だからね、前で戦える者でいいよ」
肉体的に男の方が丈夫なのは、この世界でも変わらない。
女でも人一倍多い霊気量に物を言わせた防御力で、接近戦をするのはいる。
お
お父が細い銅剣をくれる。
「明日からは斬撃と刺突を取れるように頑張れ」
「おう、励む」
鋼鉄より霊気の通りが良いので、子供の練習用は銅剣と決まっている。
基本技能の斬撃、刺突、打撃が揃えば強撃が五割増しになる。
ただ武器を振り回していても生えるが、何かと戦うと生えやすい。
そんな訳で、砦の南側の畑に行って、害虫駆除をする。
まず、畑の持ち主に挨拶する。
「
「おう、励め」
雑兵の子の八歳児の扱いなんてこんなもの。
畑に生えているのは主食の、実の多いジュズダマで、脱穀すると白いので白黍と呼ばれている。
ハト麦みたいなものだけど、味は癖のないトウモロコシ。
これにでかい毛虫がたかる。毛じゃなくて棘虫とか針虫とか呼ぶべき。
細長い栗のイガみたいのを銅剣の切先で突いて落として、斬って止めを刺す。
でかいバッタもいるけど、闘気弾で撃ってはいけない。
ネズミがいてこれを獲る猫がいるので、畑の中では闘気弾使用禁止。
ムクドリサイズのスズメが来て白黍を食べるので、上に向けてなら撃っていい。
ケムシはそのまま放置して畑の肥やしになるが、スズメは持って帰れる。
神殿に持って行くと、生産系の技能を授かった子が解体して、肉をくれる。
そのほかの部分は解体料になる。
貧乏人用の貫頭衣はこのスズメの羽毛から作られている。
薄茶色は貧乏人の色。器用な生産系なら色を薄く出来るので、腕が判る。
ちなみに俺が着ているのも、二枚の布を縫い合わせて真ん中を縫い残した貫頭衣だ。
これに太い紐を帯に巻いて、剣を差している。
それだけ。横はスカスカ。子供だからじゃなくて、貧乏だと大人になってもこんな格好。足は裸足。
お父もお母も家の中じゃ鎧取って同じ格好だし、やりたくなれば見てる前でするし。
これは世界中じゃなくて、最前線の雑兵なのでその辺が雑なのを、他所に行くようになってから知った。雑兵だと我が家だけではない。
ケムシで斬撃と刺突が取れたら、ひたすらスズメを撃って、射撃を伸ばす。
闘気弾は時間で消滅する。射程は初速で決まるが遠射は消滅時間を延ばす。
消滅時間が延びるのが遠射、初速が速くなるのが速射、リキャストタイムが短くなるのが連射。
属性で威力と初速が違い、威力は、地水火風の順、初速は逆。
根性論的にただ数撃ちゃいいと二親は言うが、初速と消滅時間が延びるように意識して撃つ。射撃は射程距離だと思う。
地属性と水属性の子が数人で追い込み漁をやって畑からネズミを出して、荒れ地に向かって撃っているが、これもあり。
スズメをそれなりの数獲れるようになったら、次の子を産むために金を貯めたいと親が言い出し、獲物を全部売ってしまうようになった。
毎日スズメ肉を神殿で調理してもらって持って帰る。調理代も俺持ち。
八歳で両親を養う立場になってしまった。
他の肉を食べたければ自分で獲って来いと言われたが、一人で森側で狩りをするには、授かりと基本の他に三つ技能が必要になる。
その場ダッシュと反復横跳びで敏捷が生えたが、基本なので数に入らない。
打撃を授かっているので、事あるごとに意識して叩いていい物を強く叩いていたら、強打になった。
自分で生やした斬撃と刺突は、魔物を相手にしないと、強が付かない。
授かりの儀式で一つ余分にもらえたのはおまけじゃなく、ちゃんと鍛えれば一生有利になる。
夜に周囲の気配を探り続けて索敵が生えたが、これも基本技能扱い。
あと生えそうな能力って何だろう。
貰ったものなら伸びるから、射撃系を伸ばすか。
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