掌編400字・線路

柴田 康美

第1話 

 オレは線路だった。まいにちまいにちガタゴトガタゴトオレさまのうえを重いあいつらが走る。きつい。うるさい。いいかげんにしろ。大声でさけびたてたがやつらはとんときく耳をもたない。そればかりかいつぞやはトイレのフタを開けくさいものをいっぱい落としていきゃぁがった。殺してやるぅ。いきまいたがあいつらは知らぬ顔で通りすぎていったので曲がってふて寝してやった。 


ある日のことおさなごがよちよち入ってきた。おいぃ、あぶないぞぅ。聞えないようだったのでおもいっきりくの字に身体を曲げた。するとその子はよほどびっくりしたらしくママと泣いてすぐに柵をでていった。あくるひ工夫がやってきた。しょうがねぇなこうまがってちゃ。あぶなくってしょうがない。とりかえるか。おいおいまてまて。いったいこのオレがなにをしたというんだ。あっという間にクレーンで持ち上げられきれぎれに解体されて焼却場へ運ばれた。そして熱い炉のなかで溶かされ消えていった。



               (了)

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