私が好きになった男の子の恋物語

とみっしぇる

第1話 私が好きなのは健気な健太

なんというか、私が惚れた男の子の話をさせてくれ。


私は原田香緒里。色々と恵まれてる。


家の金で情報を集められる巨乳美少女。ふふふ。



やつは木曽健太・きそけんた。


一見して平凡な170センチの高校2年生。


小学4年から知ってて、中学1年から5年連続でクラスメイト。


私好みの、純粋なまんま歪んだやつだと、中学2年まで気付かなかった。


健太と両片想いの女が、健太との恋を実らせれば引く。諦めたら凸する。


そう決めてる。


奪う? いやいや、私が欲しい健太は、そいつがいるから今の健太になった。


健太は依存体質でもある。


旨味成分そのまんまで、依存先を私に上書きしたい。


今から健太の気持ちを99パーセントの精度で代弁。


私が見てない場面も見たかのような語りをするけど許せ。


私には盗聴器、監視カメラという忍法、超能力もある。


語っていく視点は、私の気分で過去形だったり、リアルタイムだったりするからな。


それじゃ脳内録画の再生スタート。


木曽健太は、幼馴染み3人に感謝しながら生きている。


付き合いは小学校入学と同時にスタート。


その3人の高2時点のスペックだ。


私のライバル園田亜梨沙・そのだありさ。158センチ黒髪ストレート。


サッカー部の高岡翼・たかおかつばさ。178センチ。ハーフと間違われるイケメン。


クール系美人の桂木亮子・かつらぎりょうこ。164センチ。こいつは陸上部の短距離選手。


健太は、小学4年の9月の頭に両親が離婚した。

親父が女作って出ていった。


両親で話も終わってたけど、健太からすれば青天の霹靂。


親権の話もすべきなのに、まだ30歳と若く、気も強い母親がごり押し。


名前も飛騨から木曽になった。


家は残り当面の金に困らなくても、母親イライラ、仕事に逃げて帰りが遅せえ。


学校では、同じクラスの馬鹿3人がいじる、またいじる。


ただ好奇心旺盛なだけの小学4年生なんて、そんなもんだ。


幼馴染みは大したもんで、健太をかばってたな。けど不運にも、健太だけクラスが違った。


健太の心が折れそうになった10月末、事故が起こった。


健太は誰ともタイミングが合わず、沈んだ気分で学校を出た。帰り道には、川沿いの整備された遊歩道を選んだ。


運が悪いときは、引きも悪い。絶対に会いたくない男子3人とバッタリだ。


遊歩道の川近くをギリで避けようとしたら、馬鹿1にランドセルを引っ張られた。


「え?」。左腕がロックしたとき、馬鹿2が強く押した。


健太は角度がついたコンクリートの段差を踏み外した。


倒れて肩、頭を打って、ランドセル飛んでく。


そのまま斜面を3回転ゴロゴロのあとに、ぼっちよ~ん。


水は膝くらいでも、頭からイッた。かなりヤバかった。


そんときだ。


健太が心配で追ってきてた亜梨沙が荷物捨てて、斜面を駆け降りた。


「健太、けんた!」


冷たい10月の川で健太の頭抱えて、必死に名前呼んでた。


亜梨沙に少し遅れて、亮子と翼も特攻。3人で乾いたコンクリートの川縁に健太運んで、救急車が来るまで介抱してた。



女と逃げたクズ父、離婚してイライラする母。それに傷心の健太をいじったクラスの奴ら。


ダメになりかけていた心に、3人の顔はどんな映りかたしたんだろう。


救急車の中で、健太は笑ってた。



犯人の馬鹿3人は呆然。救急車呼んだおばさんの証言、動画撮影もあって、大きな問題になったよ。


3人の親が平謝りで謝罪。健太の母親との示談は済んだ。


母親も近況の態度を猛反省して、警察、弁護士に相談。学校と馬鹿3人にもデカイ釘を刺して、健太の環境改善に励んだ。


肝心の健太は無関心。それで母親はさらに反省したね。



事故以降、アイツの中で幼馴染み3人が大きくなりすぎた。


健太は、特に亜梨沙の小さな背中のことばっか考えてた。


入院中の病室。見舞いに行った亜梨沙と健太が2人きりだった。そのとき例の馬鹿3人が入ってきた。


亜梨沙はベッドと3人の間に立った。拳を固めても、足は小刻みに震えてた。


その直後に3人の両親、健太の母親も病室に入ってきて、謝罪の儀式スタート。


健太には謝罪も雑音。ただ、自分を2度も守ってくれた亜梨沙のことばっか考えてた。



健太は亜梨沙を好きになった。そして恩返しを考えた。


だけどアイツは人間と頭がいい。


助けてくれたのは3人。亜梨沙1人のこと考えた自分を反省した。


亜梨沙、翼、亮子に恩返ししようと軌道修正しちまった。


これでのちに、2人の女が泣いたりする。



家、自分のクラスは灰色。逆に幼馴染み3人との時間がキラキラしてた。


3人のために何かしたかった。


悲しいことに、まず恋心の封印からスタートした。



その冬の放課後。廊下で10人くらい集まった。私もいた。誰と誰が仲がいい、誰が誰を好きと言って盛り上がったさ。


家が隣同士の亜梨沙と翼もそこにいた。誕生日が2日違いの2人は、親に冗談で許嫁と告げられてた。


それをみんなに言われ、2人は笑って答えたね。


「だね。一番の仲良しも、生まれたときから一緒にいる翼」

「何でも一番に話せるのは亜梨沙だよ。許嫁だもんな」


優しい亜梨沙と正義感が強い翼。健太には2人が輝いていた。



父親の浮気で家庭崩壊。それから巡って悪いことばっか。最後は川でヤバかった。


愛とか恋とかキレイなものに見えるはずがねえ!


レンアイ。それ考えるだけで傷跡が残った頭が痛んだ。そんで少し吐き気までしてる。


なのに亜梨沙、翼のサポートのために何かやろうと考えた。


そんとき私は、翼達の口調が軽いから、半分冗談だって解った。


亜梨沙と翼はノリがいいな、くらいの記憶だな。


私の真横に健太はいた。


まだ傷跡だらけの小4が、あんな必死に考えてたと思わなんだ。いつも笑顔だった印象しかねえ。


健気だよ、アイツ。


レンアイの相談は無理。そう感じたそうだ。



恩返しは何をしよう。ピンチなんてそうそうない。


翼に相談して怒鳴られた。

「親友助けただけだ。恩返しなんかいらねえ。馬鹿か!」


嬉しいけれど泣きそうなる健太に、翼はアドバイスした。


それが健太の生き方を方向付けることになる。


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