私が好きになった男の子の恋物語
とみっしぇる
第1話 私が好きなのは健気な健太
なんというか、私が惚れた男の子の話をさせてくれ。
私は原田香緒里。色々と恵まれてる。
家の金で情報を集められる巨乳美少女。ふふふ。
やつは木曽健太・きそけんた。
一見して平凡な170センチの高校2年生。
小学4年から知ってて、中学1年から5年連続でクラスメイト。
私好みの、純粋なまんま歪んだやつだと、中学2年まで気付かなかった。
健太と両片想いの女が、健太との恋を実らせれば引く。諦めたら凸する。
そう決めてる。
奪う? いやいや、私が欲しい健太は、そいつがいるから今の健太になった。
健太は依存体質でもある。
旨味成分そのまんまで、依存先を私に上書きしたい。
今から健太の気持ちを99パーセントの精度で代弁。
私が見てない場面も見たかのような語りをするけど許せ。
私には盗聴器、監視カメラという忍法、超能力もある。
語っていく視点は、私の気分で過去形だったり、リアルタイムだったりするからな。
それじゃ脳内録画の再生スタート。
◆
木曽健太は、幼馴染み3人に感謝しながら生きている。
付き合いは小学校入学と同時にスタート。
その3人の高2時点のスペックだ。
私のライバル園田亜梨沙・そのだありさ。158センチ黒髪ストレート。
サッカー部の高岡翼・たかおかつばさ。178センチ。ハーフと間違われるイケメン。
クール系美人の桂木亮子・かつらぎりょうこ。164センチ。こいつは陸上部の短距離選手。
健太は、小学4年の9月の頭に両親が離婚した。
親父が女作って出ていった。
両親で話も終わってたけど、健太からすれば青天の霹靂。
親権の話もすべきなのに、まだ30歳と若く、気も強い母親がごり押し。
名前も飛騨から木曽になった。
家は残り当面の金に困らなくても、母親イライラ、仕事に逃げて帰りが遅せえ。
学校では、同じクラスの馬鹿3人がいじる、またいじる。
ただ好奇心旺盛なだけの小学4年生なんて、そんなもんだ。
幼馴染みは大したもんで、健太をかばってたな。けど不運にも、健太だけクラスが違った。
健太の心が折れそうになった10月末、事故が起こった。
健太は誰ともタイミングが合わず、沈んだ気分で学校を出た。帰り道には、川沿いの整備された遊歩道を選んだ。
運が悪いときは、引きも悪い。絶対に会いたくない男子3人とバッタリだ。
遊歩道の川近くをギリで避けようとしたら、馬鹿1にランドセルを引っ張られた。
「え?」。左腕がロックしたとき、馬鹿2が強く押した。
健太は角度がついたコンクリートの段差を踏み外した。
倒れて肩、頭を打って、ランドセル飛んでく。
そのまま斜面を3回転ゴロゴロのあとに、ぼっちよ~ん。
水は膝くらいでも、頭からイッた。かなりヤバかった。
そんときだ。
健太が心配で追ってきてた亜梨沙が荷物捨てて、斜面を駆け降りた。
「健太、けんた!」
冷たい10月の川で健太の頭抱えて、必死に名前呼んでた。
亜梨沙に少し遅れて、亮子と翼も特攻。3人で乾いたコンクリートの川縁に健太運んで、救急車が来るまで介抱してた。
女と逃げたクズ父、離婚してイライラする母。それに傷心の健太をいじったクラスの奴ら。
ダメになりかけていた心に、3人の顔はどんな映りかたしたんだろう。
救急車の中で、健太は笑ってた。
犯人の馬鹿3人は呆然。救急車呼んだおばさんの証言、動画撮影もあって、大きな問題になったよ。
3人の親が平謝りで謝罪。健太の母親との示談は済んだ。
母親も近況の態度を猛反省して、警察、弁護士に相談。学校と馬鹿3人にもデカイ釘を刺して、健太の環境改善に励んだ。
肝心の健太は無関心。それで母親はさらに反省したね。
事故以降、アイツの中で幼馴染み3人が大きくなりすぎた。
健太は、特に亜梨沙の小さな背中のことばっか考えてた。
入院中の病室。見舞いに行った亜梨沙と健太が2人きりだった。そのとき例の馬鹿3人が入ってきた。
亜梨沙はベッドと3人の間に立った。拳を固めても、足は小刻みに震えてた。
その直後に3人の両親、健太の母親も病室に入ってきて、謝罪の儀式スタート。
健太には謝罪も雑音。ただ、自分を2度も守ってくれた亜梨沙のことばっか考えてた。
健太は亜梨沙を好きになった。そして恩返しを考えた。
だけどアイツは人間と頭がいい。
助けてくれたのは3人。亜梨沙1人のこと考えた自分を反省した。
亜梨沙、翼、亮子に恩返ししようと軌道修正しちまった。
これでのちに、2人の女が泣いたりする。
家、自分のクラスは灰色。逆に幼馴染み3人との時間がキラキラしてた。
3人のために何かしたかった。
悲しいことに、まず恋心の封印からスタートした。
その冬の放課後。廊下で10人くらい集まった。私もいた。誰と誰が仲がいい、誰が誰を好きと言って盛り上がったさ。
家が隣同士の亜梨沙と翼もそこにいた。誕生日が2日違いの2人は、親に冗談で許嫁と告げられてた。
それをみんなに言われ、2人は笑って答えたね。
「だね。一番の仲良しも、生まれたときから一緒にいる翼」
「何でも一番に話せるのは亜梨沙だよ。許嫁だもんな」
優しい亜梨沙と正義感が強い翼。健太には2人が輝いていた。
父親の浮気で家庭崩壊。それから巡って悪いことばっか。最後は川でヤバかった。
愛とか恋とかキレイなものに見えるはずがねえ!
レンアイ。それ考えるだけで傷跡が残った頭が痛んだ。そんで少し吐き気までしてる。
なのに亜梨沙、翼のサポートのために何かやろうと考えた。
そんとき私は、翼達の口調が軽いから、半分冗談だって解った。
亜梨沙と翼はノリがいいな、くらいの記憶だな。
私の真横に健太はいた。
まだ傷跡だらけの小4が、あんな必死に考えてたと思わなんだ。いつも笑顔だった印象しかねえ。
健気だよ、アイツ。
レンアイの相談は無理。そう感じたそうだ。
恩返しは何をしよう。ピンチなんてそうそうない。
翼に相談して怒鳴られた。
「親友助けただけだ。恩返しなんかいらねえ。馬鹿か!」
嬉しいけれど泣きそうなる健太に、翼はアドバイスした。
それが健太の生き方を方向付けることになる。
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