第11話 スケルトン、亡命する。
もう、入国申請して1ヶ月経過して、半面諦めていた矢先、門番の隊長から呼び出しがあった。
ようやく入国か? それとも不可か?
心臓が無いがドキドキするぜ・・・。
守衛室に案内された・・・なんか取調べ室みたいだな。
そこには、
隊長の正面の椅子に座るように指示されたので、素直に座った。
隊長が語り出す・・・。
「ナッシュ君、わざわざ来てもらって申し訳ない・・・実は、大変な問題が発生した! 残念ながら、君を拘束する事が決定した・・・」
「な、な、なにぃー! ちょっと待て! おい!入国も出来ずに身柄拘束か? 酷くないか、それ!」
「正確には、入国審査は・・・制限が有るが通った」
「ん? 言っている意味が分からん」
「戦闘が出来る技術者がアドニカに亡命したという形での入国審査は通過だ・・・その為、行動制限が発生する、ここまではいいか?」
「いや、何で亡命申請に切り替わっているのだよ・・・俺は普通に入国したいだけだぜ?」
副隊長が語る・・・
「隊長は頑張ったのですよ・・・なにせ、通常の入国審査は速攻で不許可、その上、貴方の故郷から指名手配されているのはご存知ですか? 引き渡せと圧力をかけられているのですよ・・・あと、各種教団やギルドのからの苦情が毎日きています・・・業務に支障が出るぐらいに」
「マジか!あいつらロクな事しないなぁ・・・」
隊長も「それは俺も肯定する」と同意する。
副隊長は更に語る・・・
「そこで隊長は、アドニカ騎士団や貴方の故郷から来た兵に逮捕拘束される前に、アドニカに亡命するという形で方を付けようとしました・・・が、これも失敗ました」
「まて、俺の故郷は分かるが、アドニカ騎士団が何故動く? 別に敵対してないだろ、俺? ・・・しかも亡命の許可が下りんかったのに、許可下りたって言うところも辻褄が合わないぞ!」
隊長が語り始めた・・・
「教団や各種ギルドと敵対しただろ・・・目障りだから色々な手を使い領主に抗議した・・・そして、危険なモンスターとして領主から認識された・・・結果は分かるだろう、『討伐せよ』となる訳だ・・・そこで、我々は、くだらない陰謀から君を守る為、我が防衛団に半強制的に所属させた上で活動を制限させる事にした・・・今までやっていた活動は、我が防衛団の活動範囲のみで行うと言う奇策で対応したのだ・・・他に流れていく方が脅威と言ったら、周りの者たちは渋々賛同した」
「なるほど・・・経緯は理解した」
「後は、この書類にサインしたら全て解決だ。 一応、拒否権は有るぞ、全員敵に回るがな・・・」
「ロクな選択肢が無い時点で強制じゃねぇかよ!」
「その通りだ、諦めろ。 まぁ、一応、雇用条件も確認してくれ・・・不満があると思うが、出来る範囲で変更はする」
「まぁ、一応確認はする・・・おい!結構安いぞ給料、しかも作業で得た収益は全て防衛団が徴収するってぇ! いくら何でもボリ過ぎだろう!」
「なら、周りに迷惑をかけずに、手っ取り早く奴らを黙らせる良い方法は有るのか? 無いだろ?」
「・・・悔しいが、無いな」
「なにせ我々は左遷された部隊だ、金も無ければ人材も足りん、しかも辺境だしな・・・人材が足りずブラックな環境だ! 改善するには、優秀な人材確保は急務だ!」
「・・・そっちが本音か?」
「否定はしない。 日頃から常にストレスにさらされている身にもなってみろ・・・お前の件は特大級だ!」
「ストレスって目に見えないから立ち悪いんだよねぇ・・・」
「職務権限をフルに使い、他の奴を黙らした努力の結果を見てみろ! お前の件で、天辺に薄く残っていた髪もついに無くなり、私が娘の前を通り過ぎた際、後ろから『カッパ』と言われたんだぞ!」
「おぉ髪よ、どうしてあなたは抜けるのですか?」
「やかましいわ!!!」
・・・
・・・色々な確認事項と手続きを済ませ、ようやく入国する。
おぉ、この一歩から俺の第二の人生が始まるのかと思いながら踏みだそうとした・・・
・・・が、近くにいた兵士が向きを変えた際、持っていた長物がナッシュの後頭部に直撃!
・・・そして転ぶ。
「あっ!悪い、大丈夫か?」と声をかける兵士・・・。
わなわなと怒りで震えるナッシュ・・・。
歴史的な一歩がこの様な形になるとは!!! 理不尽だ!!! ダンジョン出てから必ずスタートでつまずく・・・俺のLuckは、どうなっているのだ!!!
「次からは気を付けろ・・・」と言って許した・・・そんな俺は偉いと思いたい。
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