第3話:再生
「そうそう、これこれ。姉ちゃんの友達の庭で見たやつと全く同じ。」
「この布‥‥‥‥‥」
「取り敢えず、近くのゴミ箱に捨てて帰ろか。道に置かれてても、ゴミにしか見えんし。どしたん?」
「この布‥‥‥‥‥ううたろうのと全く同じ‥‥‥」
私は塊のそばまで歩き寄り、それを拾い上げた。色といいさわり心地といい、ううたろうそっくりだ。月日は経っても、ううたろうのことは忘れない。
「持って帰る。」
私は麻衣をおいて一目散に家まで走って帰った。
ううたろう、ううたろう、ううたろう‥‥‥
「ただいまーお母さん、、、、、はぁ、疲れた」
「お帰り〜。ってあんたどうしたの?息切れしてるじゃない。走ったの?」
「うん。」
リビングにはシチューの香りが充満していた。私は、下校中に拾った例の塊を母に差し出した。それでいて何も言わない私を見た母は、首を傾げた。
「それは何?学校の家庭科の余り物?」
「えぇと、そう!先生が自由に持って帰って良いって言ったから。なんだかこの布、小3のとき無くした、ううたろうのに似てるなーって思って、持って帰って来ちゃった。」
「ううたろう、アンタ覚えてたのねぇ。懐かしい。アンタずっと大事にしてたもんねぇ」
お母さんは小さい頃の私とううたろうを思い出しているようだった。お母さんは、麻衣が言ってた噂を知らないのだろうか。
手洗い、うがいを済ませ、私はお母さんに尋ねる。
「あのー?ううたろうってまた作れないでしょうか?」
「復元したいの?無くしたきり、アッサリ忘れてたと思ってたけど、案外思い入れがあるのね。一週間位あれば、作れるけど。私も久しぶりに作りたくなったわ。」
快く受入れてくれる母。感謝。
翌日、学校で一連の出来事を麻衣に話した。
「急に走り出してビックリしたで。よく道端に落ちてたモン持って帰って、縫いぐるみにしようと思ったな‥‥‥‥どんだけその縫いぐるみ好きなん?」
仰るとおりです。
「そういえば、あの後、あんたが居らんようになってから一人で帰ってたんやけど、家についた時、また例の塊見かけたねん。ウチの家の向かいに御夫婦がおって、その2人の家の玄関前に落ちとった。うちはアンタみたいな縫いヲタ(縫いぐるみヲタク)ちゃうから、持って帰ったりせんかったけど。今朝は無くなってたから、多分あの夫婦が掃除したんやろな。てかなてかな、1組の飯原(イイハラ)ちゃんも、昨日下校中に見かけたらしくてな、全体的に発生頻度増えてる気がすんねん。いつか新聞に載ってもおかしく無いと思う。」
麻衣は一人で盛り上がっている。だが、確かに新聞になっても違和感はない。実際にこの目で見たんだから。
私たちは、次の授業が行われる音楽室へと足を運んだ。
うさぎの中身 @leftright
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。うさぎの中身の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます