第15話

「…へ?」

時間が止まったかと思った。私の口からは吐息とともに間抜けな声が漏れ、それで我に返った。まさか本人にバレているなんて一ミリも考えなかった。なんて馬鹿なんだろう。鈍感なのはどっちだ。

「いや、違うなら俺のうぬぼれなんだけどさ。希望のこと見てたらそうなのかなって思っただけ。」

葵が早口でまくし立てる。普段はあまり顔色が変わらないのに耳まで赤くなっている。どれほど勇気を出して私に聞いてくれたのだろう。私は生唾を飲み込んで、口を開いた。

「そうだよ。」

葵の目が見開かれる。緊張で声が震えそうになったけど言葉を紡ぐ。

「私、葵が好き。きっと、葵が気づくずっと前から。私でよかったら、つ、付き合ってほしいの。」

ずっと、ずっと隠していた本音を口に出したことで目頭が熱くなる。ツンとした鼻をごまかすように笑うと、葵が小さな声で言った。

「俺で、よければ。」

その言葉を聞いた途端、嬉しさが全身を駆け巡る。あんなに焦がれていた相手の恋人になれたんだ!嬉しさのあまり、自然と涙がポロリとこぼれた。

「ありがとう…。」

泣く私の姿に焦る葵に精いっぱいの今の気持ちを伝える。葵はテンパりながらも、優しく笑ってくれた。


「夢じゃないんだ…」

帰宅後、スマホを操作してメッセージアプリを開くと葵の連絡先が新しく追加されている。部活のグループチャットで知ってはいたが、個人でやり取りするのは初めてだ。学校で交換した際に送られてきた、かわいいわんこのよろしく!というスタンプが履歴に残っている。たったそれだけでも嬉しくて仕方がない。いまだに心臓がドキドキしていて興奮している。

手汗をかくほど緊張しながら新しくメッセージを打つ。

『 今日はありがとう。これからよろしくね』

えいっと勇気をだして送ると秒で既読がつき、思わずスマホをぶん投げてしまった。ベッドの上に着地したスマホはブブッと通知音を鳴らす。恐る恐る画面をチェックすると、やはり葵からだ。ロックを解除して、チャット画面に移動する。

『 こちらこそ。あと、明日は面接練習あるから部活休む』

事務連絡も込みだけど、初めて個人チャットができたことに感動していると、続いて返信がさらに送られてきた。

『 だけど、一緒に帰らない?』

文面でも嬉しいお誘いだ。慌てて返信する。何回か打っては添削して納得のいく返信をする。

『 いいよ!明日、面接練習終わったら連絡して〜』

すると、また即既読の後に了解というスタンプが送られてきた。これで会話は終了したけど、ベッドに寝転びつつ、高揚感で足をバタバタさせながら会話履歴を見返しニヤニヤするのがやめられない。

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