パパ活JKコンサルタント株式会社

じん いちろう

第1話 プロローグ

「『パパ活JK株式会社』だと?」


とある高級ホテルのロビー。

カフェコーナーのテーブルで、注文を終えた後に差し出した私の名刺を一瞥した今回の依頼主。

依頼主の指定場所とはいえ、コーヒー一杯千五百円って、ホントに痛いんですけど?

しかも、税サービス料別ですって。

この人、奢ってくれる気はあるのかしら?


最初の雰囲気からして『常連様』のご紹介でなければ、お会いしたくないタイプの人だわね。


「はい、普通の会社名ですと全く依頼が入らないもので奇をてらってみました。」


「ふん、そんな事はどうでもいい。で、一晩いくらなんだ?」


あ〜、ヤッパリコイツは勘違いしてるわね。

声が大きいですよ?みんな、振り返ってますからね。


「コンサルタント料金は、依頼内容によって見積もりさせていただきます。時間制ではありません。」


大きな声で、答える。

態とはぐらかして様子を見るか。

明らかに不機嫌になった今回の依頼主。


「どういうつもりだ!ただの『援助交際』では無いのか?」


だ、か、らっ!声が大きいってばっ!


「違いますよ。コンサルタントです。紹介者の龍山様からどのように伝わっているのですか?」


先程の倍ぐらいの声量で返す。


ポーチから取り出したスマホを操作して龍山さんの画面を呼び出しタップしてスピーカーに切り替える。

呼び出し音一回で繋がって、


『お〜、純チャン、商談どうだっあたあ?』


周りの人達が、興味津々な様子で聞き耳を立てているのがわかってしまう。


「………………………………………龍山さん?酔ってますか?今回の紹介者、何か齟齬が有ったようでして私を『援助交際』に誘うんですけど。」


更に声を高くして画面の向こう側と周囲に緊張感が走ったのが感じられたと思ったら、


『純チャン、今すぐそこに行くから僕を見捨てないでっ!』


一気に酔いが覚めたようね。

真っ昼間っから飲んでるから、変なオヤジを紹介なんかするのよね。


「………………………………………要らないです。サヨウナラ。」


有無を言わせず通話を切って今回の依頼主に向き直り、


「行き違いが有ったようですね。失礼いたします。」


「おいっ、待てっ、コラッ!」


立ち上がろうとしたら手を掴もうとしてきたので、


「キャーッ、やめてくださいっ!」


態と大声で叫んで『オッサン』の手を捻って振りほどいてからソファーに押し倒したら、先程からの不穏な様子に気が付いたのだろう、ウェイターが直ぐに飛んできて間に入ってくれた。


さすが、高級ホテルは一味違うわね。


「今なら行き違いで済ませて差し上げます。では、今度こそ失礼いたします。」


捻られた腕を押さえて蹲りながら睨みつけてくる『オッサン』に、捨て台詞じゃ無いけど冷たく告げた。


ただでさえ制服姿は目立つんだからね?

サッサとおいとましましょうか。

高級ホテルのロビーだけあってスマホカメラを向けてるような人が居なかった事だけは、この場所で良かったと思うけど。

龍山さんからの着信が連続して入るので着信拒否しておいてからウェイターさんに軽くお礼をして、出口付近のソファーまで歩き寄り、


「………………………………………黙って見てないで助けてよ!」


「え〜、自力で切り抜けたじゃないの。」


「もうっ、『時給』払ってるんだから働いてよね?」


「最低時給だけどね。」


「まあ、いいわよ、帰りましょう!」


二人とも免許取り立てだけど、社用車買えるくらいには利益は出してるけど、『借りた車』の鍵を相棒に渡してサッサと出口へと、向かった。


駐車場から相棒に車を出してきてもらい助手席に乗り込み、


「あ〜、ストレス溜まるわ!このままいつものラブホへやって頂戴。」


「今日これから俺に『抱かれても』利益は出ないし、ストレス解消にはならないぞ?」


「なるわよ?別勘定だから大丈夫よ、気にしないで。」


「………………………………………制服のままは、不味いんじゃない?」


「気にしない気にしない、さあ早くっ!」


パパ活JK、今日も元気に活動中!

ストレス解消して『利益を出して』、明日からまた頑張るぞ?


あっ、コーヒー代支払いするの、まだ届いてなかったから忘れてたわ。

まあ、あの『オッサン』に払ってもらえるでしょう。

迷惑料としてなら、安いものだよね!

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